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シェアメディカル、聴診器デジタル化ユニット「ネクステート」を発表

シェアメディカルは、都内で聴診器デジタル化ユニット「ネクステート」の発表を行った。同時に、会見では「聴診データ研究会」の発足と、「電子情報医学会構想」についても発表された。

医師の「聴診すると耳が痛くなる」悩みを解消

会見に登壇したシェアメディカル代表取締役CEO・峯啓真氏によれば、「大人数を聴診すると耳が痛くなる、という医師の悩みを解決したい」と思ったのが「ネクステート」開発のきっかけだったという。

医師にとって、聴診器はイヤーピース(医師の耳に当てる部分)が樹脂製などの堅い素材が多く、特に学校検診のような大人数を長時間、診察する場合に、耳が痛くなるという悩みがあるということだ。

聴きやすい聴診音の共有・デジタル化を実現

上記のような医師の悩みをきっかけに、シェアメディカルは聴診器のデジタル化に着手したという。今回発表された「ネクステート」は、第二世代のモデルだという。

「ネクステート」のコンセプトは「今使っている聴診器を活用」すること。医師が持っているチェストピース(音を収集する部分の器具)と「ネクステート」本体をつなげることによって聴診音をデジタル化する。さらに、有線オーディオ入力対応のヘッドフォンやイヤホン、Bluetooth通信によるワイヤレスヘッドフォン、さらにはUSB接続によってスマートフォンでも聴診ができるという。

シェアメディカルとSUNDRED、聴診器デジタル化ユニット「ネクステート」を発表
「ネクステート」の構成図

また、「ネクステート」本体にはDSP(デジタルシグナルプロセッサ。マイクロプロセッサの一種でデジタル信号処理に特化したもの)が内蔵されており、心音や肺音を聞きやすく調整するチューニングすることができる。

医師側のメリットとしては、使い慣れた聴診器に取り付けるだけで他のオーディオ機器を介して聴診することができるようになり、連続しての診察にも負担がかからないようになることだ。

また、高齢の医師にとっては音量の調整によって聴き取りづらい音を、聴こえ易くすることができる、というメリットもある。シェアメディカル・峯氏が「他社との差別化要素だ」という、ネット接続することで、遠隔医療における利用の活用が見込まれることもポイントだ。

製品としては、これから多くの医師による試験利用を行い、改善をしていくということだ。

次ページは、「遠隔医療への活用を検討

遠隔医療への活用を検討

シェアメディカル・峯氏は想定される活用方法として特に遠隔医療に関して2つの可能性を示した。

1つはオンライン診療において、聴診するポイントを図示した検査着を患者に着てもらい、患者自らに「ネクステート」を当ててもらうという方法だ。医師は映像モニターを出して患者に指示を出し、「ネクステート」を当ててもらうことで遠隔での聴診ができるようになる。

もう1つは訪問看護における心音データの転送だ。訪問看護師が心音を医師に転送することで、離れた場所でも診察行為が可能な医師が直接患者の状態を判断し、看護師に指示を送ることができるということだ。

こうした遠隔医療への活用以外にも、医療現場でのリアルな聴診体験による人材育成や、電子カルテへの音声データ添付といった活用方法も進めていきたいとした。

「聴診データ研究会」発足と「電子情報医学会」構想の立ち上げ

また、会見の場で、「聴診データ研究会」の発足と「電子情報医学会」の構想について説明があった。説明を行ったのは、シェアメディカルの取締役で、SUNDREDの代表取締役・留目真伸氏と、シェアメディカルの医療顧問である小児科医師の道海秀則氏だ。

留目氏・道海氏によれば「聴診データ研究会」は、聴診データの収集を行い、そのデータを元にして診察の集合知を形成していくのを目的とした団体であるという。集積したデータはマスデータ化し、実際の診断結果・症例との紐づけを行い、AIによる学習を推進していくとのことだ。

また、「聴診データ研究会」における取り組みを拡大する中で、医療現場の電子化による効率化、デジタルネットワークによる専門多科・地域国際・災害連携網の構築などを目指す組織として「電子情報医学会」の設立を想定しているということだ。

「聴診データ研究会」の発足は2019年10月を予定し、「電子情報医学会」ついては2020年1月を目途の発足を検討しているということだ。

パネルディスカッションの参加者。左からSUNDRED・留目氏、経済産業省・江崎氏、Japan Innovation Network・紺野氏、シェアメディカル・峯氏、メドピア・上田氏

なお会見において、SUNDRED・留目氏がモデレーターとなり、経済産業省商務・サービスグループ政策統括調整官の江崎禎英氏、多摩大学大学院教授で一般社団法人Japan Innovation Network代表理事の紺野登氏、シェアメディカル・峯氏、メドピア株式会社HIMSS&Health2.0 Japan country Directorの上田悠理氏を交えた、医療におけるデジタル技術活用推進に関するパネルディスカッションも開かれた。

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