医療現場においても、深刻なIT専門人材の不足やランサムウェアなどのサイバー攻撃被害の急増は例外ではなく、医療DXの推進とセキュリティ対策の両立が喫緊の課題となっている。
しかし、高度なIT経営判断を行えるCIO(最高情報責任者)やCISO(最高情報セキュリティ責任者)を配置できる病院は一部の大規模病院などに限られており、外部委託には高額な費用と数ヶ月の期間を要する。
また、担当者の退職に伴うノウハウの喪失といった属人化が現場の大きな負担とされてきた。
こうした中、BAIOX株式会社は、群馬大学医学部附属病院と共同開発した医療機関向けAIエージェント「MedPlato(メド・プラトン)」の提供を開始すると発表した。
同システムは、患者のデータを院外に送信することなく高度なAI機能を利用できる、オンプレミス型(院内設置型)のシステムだ。医療機関のCIO・CISO業務を包括的に支援し、病院経営におけるIT人材不足の解消を目的としている。
最大の特徴は、院内のIT・経営情報を蓄積・学習し、各病院固有の状況を踏まえた最適な助言を提供する点だ。
具体的には、AIが医療現場の課題に対する改善アプローチを提案し、従来は2〜3ヶ月を要していたDX計画の策定を1時間以内で完結させることが可能になるという。
また、院内のノウハウをAIエージェント内に継続的に蓄積することで、人事異動や退職による組織の知識喪失を防ぎ、属人化という構造的な弱点を解消する。
さらに、サイバーインシデントへの対応訓練やシミュレーションを支援する機能も備えており、専任のセキュリティ責任者が不在の病院であっても、一定水準の対応体制を維持できる。
これら3つの主要機能に加え、DX戦略ロードマップの可視化や法令コンプライアンス管理、災害対応支援など、合計13の機能を搭載している。
こうした包括的な支援により、情報システム管理者を新規採用する場合と比較して、年間コストを約50%削減できる見込みが示されている。
BAIOXの代表取締役である栗原哲也氏は、「医療DXの停滞は技術ではなく知識と人材の不足が根本的な原因である。AIを活用して医療現場の構造的な課題を解決していく」という意向を示している。
同社は今後、2026年後半にCIO・CISO機能の本格実装を進め、2027年以降にはCFO(最高財務責任者)やCHRO(最高人事責任者)機能を順次追加していく予定だ。

