広島を本拠地とする、インターネットサービスを提供するエネルギア・コミュニケーションズ(以下エネコム)と、XRのクリエイティブサービスを提供するビーライズが業務提携し、企業がVR空間を利用するためのサービスを提供することとなった。
そこで、エネコム 経営戦略本部 事業戦略部 事業開発チーム マネージャの武田洋之氏、土江孝昌氏、小田裕弥氏に今回提供するサービスについて伺った。(聞き手:IoTNEWS 小泉耕二)
小泉: 今回提供するVRサービスはどういうサービスなのでしょうか?
エネコム 武田氏: 昨年くらいからVR技術に注目していて、さまざまな案件が出るたびに、VR空間を作ってきました。
地元の高校生のための企業紹介イベントをVRで開催したり、山口県宇部市の文化施設に展示されたアートをVR空間上で再現し、5G対応のデジタルコンテンツとして提供したりしてきました。
今回のサービスでは、こういった経験から、VRを使った取り組みを始めたいという企業のための、VR空間を手軽に生み出すサービスとなります。
VR空間でできる基本的な表現
小泉: 具体的にどういうことができるのでしょうか。
武田: まず、あらかじめ決められたサイズ・デザインでのVR空間をインターネット上に開設することができます。
複数の出展スペースを設けることができ、企業の情報や製品の情報など、さまざまな情報を展示することが可能です。
お客様のロゴを掲載したいとか、ホームページにリンクしたい、動画を空間にはめこみたい、空間を作り込みたい、などといったご要望を聞いた上で、我々がVR空間上に組み込みます。
利用者は、こうやって作られた空間の中を自由に動くことができ、展示物を見ることができます。
また、やりとりをしたい場合は、この仕組みの中に埋め込まれたチャットを使うことができます。
小泉: VR空間なので、リアルタイムのコミュニケーションにこだわったのでしょうか。
武田: これまでメールでのやりとりが多かったと思うのですが、スマートフォンでの閲覧シーンを考えると、チャットの方がスマートなコミュニケーションを行うことができます。
小泉: VR空間には一人だけが入れるのでしょうか。
武田: マルチユーザでの利用も可能です。その場合は、同時に接続しているユーザ通しでのコミュニケーションも可能となります。
あつ森(任天堂のゲーム「あつまれ どうぶつの森」)のような、イメージで実現できています。
小泉: マルチユーザがリッチコンテンツに同時接続してくる環境は、エネコムが提供するのでしょうか。
武田: はい。エネコムはもともとインターネット接続やデータセンターのサービス事業を行なっていて、クラウド基盤を運営しているため、利用状況に応じたスケールアウトも可能な環境を提供しております。
また、「誰が見たのか」「何を見たのか」「いつ見たのか」「どれくらいの時間見たのか」といった、利用状況の解析をするための情報も提供しております。
実際、人気のプロスポーツイベントをVR空間上で、実際に取り組んだことがあるのですが、その際も快適に利用ができたという実績もあります。
小泉: いろんな層の利用者が訪問しそうですね。
武田: 実際にプロスポーツイベントのVR空間で、小学生とチャットをしてもりあがりました。現実世界だとそこにいる人に話しかけたりすることはあまりないので、VRならではの、とても面白い経験ができました。
しかも、このチャットは一定時間が経過すると消えるという設定もできるので、気軽に話ができるということもありました。
小泉: 企業向けのイベントなどで使った際も、このチャット機能で気軽にブース担当者と話したり、商談にする際は、別室を設けて、通常のオンライン会議システムを使い、オンライン商談を行うなど利用シーンがイメージしやすいですね。
観光での利用
武田: ところで、広島は観光地でもあるのですが、私はよく「旅前」「旅中」「旅後」といったカスタマージャーニーを意識した施策が必要だと考えています。
例えば、「旅前」ですが、一般的にはネットで調べたり、パンフレットを見たりして計画を立てると思います。
でも、こういった情報だけだと情報が二次元的で、なかなかイメージを掴みづらいところがあると思います。
VR空間上で観光地のバーチャル体験ができるようになることで、実際に行ってみたくなるという気持ちが盛り上がるのではないかと思うのです。
小泉: なるほど。VR空間だとある程度リアルに作り込めるので、実際どうなんだろう、という気持ちになりそうです。
武田: 実際にお見せできる例として、山口県宇部市「渡辺翁記念会館」の例があります。アート作品を見せるということで、空間もかなり作り込んだ例になっているのが特徴です。
この事例の場合、「なにに焦点を置いて作り込むか」が重要になりました。
建物の環境含め、極限まで綺麗に作り込むとコストが高くなってしまいます。そこで、例えば、アート作品はなるべくリアルにしたほうがよい、など力の入れどころを明確にするわけです。
小泉: VR空間を作った経験が少ない人にはなかなか難しい判断だとも思います。
武田: そこは、エネコムのメンバーがプロデューサーとなって、クライアントと調整を行います。
その空間で表現したい内容を理解した上で、どこに焦点を当てるべきかについて検討を進めるのです。
VR空間の未来
小泉: 今後の展望を教えてください。
武田: インターネットは、昔はホームページを作れば良いという時代もありましたが、SNSが主流となったり、コンテンツがリッチになったりしてきています。そういう中で、次のステップはなにか?ということが話題となっています。
実際にVR空間を作ってみて、思うのですが、3D空間がつながった世界観を企業のホームページに取り込んだり、さまざまな表現の中に取り込んで行っても良いのではないかと思っています。
実際、山口県宇部市の事例でも、建物の正面から、建物の中に入る流れは、別の空間をつなぎ合わせているのですが、利用者から見れば、建物の中に入ったと自然に感じられたはずです。
こういった表現をうまく演出することで、インターネット上に新しい体験が生まれると思います。
小泉: 次世代感がありますね。
武田: 二次元の世界でも、最近はインスタグラムの写真だけみて情報検索をする方も増えています。
より直感的な映像体験が生まれる機運を感じております。
小泉: 本日はありがとうございました。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。