青果物は、鮮度劣化が早く品質保持期間の短いため、スーパーマーケットやドラッグストアでは熟練者による日々のきめ細やかな発注と迅速な納品が不可欠だ。
しかし、ベテラン発注担当者の減少や、青果の発注から納品までのリードタイムが短いことから、配送効率よりも納期が優先されることも多く、その結果積載効率の低いトラック手配が常態化している。
また、鮮度劣化が早いという特性上、仲卸や小売が過剰に発注し、食品ロスが発生しやすいのも青果物の特徴だ。
そこで多くの小売業では、過去の販売実績に基づいた自動発注システムを導入しているものの、青果物は季節や気候により品質・価格が変動しやすく、明確な賞味期限が存在せず、見た目の変化や熟度といった個体差によって売れ行きが変わるため、過去の実績データだけでは正確な需要予測を行うのは困難であることが実情だ。
こうした背景から、株式会社シノプスは、需要予測型自動発注の導入による青果物の発注業務効率化、食品ロスの削減、および需要予測データを活用した物流負荷の軽減を目指す実証実験を、2024年10月から2025年1月まで実施し、その結果「食品ロスの改善」「発注時間の削減」「配送トラックの削減」などの効果を確認したことを発表した。
この実証実験では、西日本に60店舗超、ドラッグストアを展開する企業、および、そのドラッグストアへ青果物を卸す仲卸と協同で、青果の食品ロス削減、業務効率化、物流負荷軽減を目的とした2つの実証実験を行った。
一つ目の実証実験では、毎日店舗に配達される賞味期限の短い日配品や惣菜など向けの需要予測型自動発注システム「sinops-R(シノプス アール)」に、青果用の需要予測ロジックを追加。ドラッグストアが青果仲卸から仕入れる玉ねぎやジャガイモなどをはじめとした青果15商品を対象に、需要予測・自動発注を実施した。
その結果、個数・金額といった販売実績は現状を維持したまま、発注作業50%削減、食品ロス25%削減を実現した。
二つ目の実証実験では、以下の三つのシナリオを実施した場合の、物流、作業効率、食品ロスに与える効果を検証した。
一つ目のシナリオは、「sinops-R」を導入した上で、従来2日だった納品リードタイムを4日に延長することで、青果の物流・業務負荷の軽減を目指すというものだ。
納品LTを延長した場合、競合他社より早く売価を決定する必要があり、相場変動の大きい青果では競合店との価格乖離によって、売れ残りや食品ロス増加の懸念がある。
そこで、近隣競合店の価格乖離による影響度を考慮しながら、「sinops-R」による需要予測データを活用することで、欠品や過剰在庫につながる発注を最小限に抑えつつ、納品リードタイムを延長する効果を検証した。
その結果、食品ロスや配送トラックの増便を増やさず、仲卸で発生する作業計画作成、ピッキングや荷積みなどの作業を46%削減可能という試算が出された。
二つ目のシナリオは、「sinops-R」が需要予測で算出した1週間分の発注総数を事前に仲卸に共有することで、仲卸の物流負荷軽減、作業の効率化を目指すというものだ。
仲卸は一週間分の予測数を参考値とし、作業計画や配車手配を実施することで、効率も考慮した計画をたて店舗からの発注に備えることができる。一方実店舗の発注・納品は、通常通り納品リードタイム二日で実施する。
その結果、食品ロスや配送トラックの増便を増やさず、仲卸で発生する作業計画作成、ピッキングや荷積みなどの作業を40%削減可能であるという試算が出された。
シナリオ3「店舗納品時間の変更」
検証概要
三つ目のシナリオは、「sinops-R」による需要予測データを活用することで、開店前に行っていた青果の配送時間を正午までに延長することで、従来は開店前の納品を重視するあまり、多数手配されていた積載率の低いトラックや非効率な配送を削減し、物流負荷軽減を目指す。
一方、納品時間を変更した場合、開店後に納品・陳列作業が発生するため、店内に消費者がいる状態で陳列等の作業を行うことで作業効率が下がる懸念もある。そのため作業効率への影響も併せて試算した。
その結果、トラックの積載率が35pt上昇したことによるトラック台数の47%削減と、仲卸で発生する作業計画作成、ピッキングや荷積みなどの作業を4%削減可能であるという試算が出された。
一方で、ドラッグストア店舗側では、納品・陳列作業に伴う業務負荷が43%増加するという課題も見られた。
今後は、これらの取組みの成果を踏まえ、3年間で臨時配送トラックを30%削減、発注・仕入れ・加工といった流通過程における所要時間を30%超削減、さらに仲卸・小売段階での食品ロスの30%削減を目標とし、取り組みを継続していくとしている。
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