コミュニケーションロボット実装においてのハードルのひとつとして、自然な対話を実現するシナリオの構築が挙げられる。
ヴイストン株式会社では、同社のコミュニケーションロボット「Sota(ソータ)」での実証実験や開発事例などにおいて、多くの対話シナリオを構築してきたが、数万を超える対話パターンを用意してもなお、「自然な対話」「雑談の実現」などを十分なレベルに到達させることは困難であった。
そこでヴイストンは、コミュニケーションロボット用の統合開発環境「VstoneMagic」に対して、LLM(大規模言語モデル)を活用したチャットツールへの接続が容易となる機能ブロック「GPT対話ブロック」を追加したアップデートを配信開始した。
「VstoneMagic」は、ヴイストン製のコミュニケーションロボット等に対応する統合開発環境だ。ロボットのモーションを作成をGUIでできるほか、複雑な演算を含む動作の作成などが可能だ。
今回、「VstoneMagic」に対して無償のアップデートを実施し、ChatGPTへの接続が容易になる「GPT対話ブロック」を追加した。
「GPT対話ブロック」は、従来の対話シナリオに代わってChatGPTを用いるもので、これまでのような膨大なシナリオを事前に準備する必要がなくなる。
従来より、適切な開発・実装を行えばChatGPTへの接続は可能であったが、この機能をブロック化し公開したものだ。
これにより、コミュニケーションロボットの対話エンジンとしてChatGPTを活用することがより容易になる。なお、ChatGPTのアカウント取得(契約)は、ユーザ自身において別途実施する必要がある。
「GPT対話ブロック」を追加したアップデートは、「VstoneMagic」のアップデートメニューから無償で行うことが可能だ。
ヴイストンが公開しているWeb資料「Sota取扱説明書」内、「VstoneMagic」の項目における「命令ブロック」のページにて、ブロックの使用方法と導入方法が説明されている。
また、ヴイストンが直営するWebショップ「ヴイストン ロボットショップ」の公式ブログでも、関連記事が掲載されているとのことだ。
現在、「GPT対話ブロック」は、ヴイストンでの社内テストにて検証を続けているほか、先日の「2023国際ロボット展」のブースにて、体験用ロボットとして実動展示された。
ChatGPTはOpenAIが提供するサービスであるため、今後のサービス提供形態や性能の推移などが見通せないという懸念が存在するほか、対話内容の生成方法や教師データの実態など、利用者側には不明な点も多く存在する。
同時に、ChatGPTにより得られる対話は、これまでにない自然なものである一方、コミュニケーションロボットが実装される特定のサービスに紐付いた固有の返答内容を盛り込みにくいという点も指摘できる。
ヴイストンは、GPT対話ブロックの機能テストを続ける中で上記のような課題を認識した上で、既存のChatGPTを容易に実装できるコミュニケーションロボットの存在が必要であるとし、今回のリリースに至ったとしている。
なお、ヴイストンにて実機の動作を確認したのは「Sota Intel Edison版(トップ画左)」および「着ぐるみロボット『くるみちゃん』(トップ画右)」のみとなっている。
GPT対話ブロックについて、他のモデルでも理論上は実装可能だが、それぞれのロボットの構造や既存アプリケーションとの兼ね合いから、導入のための調整や追加開発が必要となる可能性があるとしている。
また、ヴイストンでは、個別のユーザによる独自実装を含むプログラムについて、サポートやアドバイスを行うサービスは実施されていない。
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