昨今もスマートシティに関するトレンドとしては、「スマート交通」、「スマート交通インフラや渋滞の解決対策」が注目を集めている。
自動運転車用のインフラ準備の他、シェア自転車サービスは本格化し、世界の各国に広がっている。
世界各国で自転車シェアリングサービスの競争激化
世界の都市は交通渋滞や環境問題の対策として短距離の旅や通勤・通学にシェアリング自転車の利用を促進している。
中国においてシェアバイクが爆発的に増加した理由は、ドックレスバイク(駐輪場が不要の自転車サービス)のおかげだ。GPSトラッカーやデジタルロックが自転車自体に設置されているため、使った後は、町の至るところで乗り捨てることができる。
ドックレスバイクこそが中国の通勤手段を変えていて、中国のシェアバイク大手であるMobike社の場合、サービスを展開している都市において、シェアバイクを使って通勤する人口が2倍になったという。
また、Mobikeの競争者であるOfoは、アリババとDidi社から投資を受けている。
今では、中国において、30社以上が1,500万台のシェアバイクを提供している。中でも、上海市においては、人口の16人当たりに1台の割合で使われていて、150万台のシェアバイクが提供されている。
廈門市はそれより利用率が高く、11人当たりに1台のシェアバイクが利用されているのだという。
しかし、使いやすさと安さによる問題も生じている。
不正駐輪がその一つだが、不正駐輪の問題を防ぐため、一部の企業では、マナーが悪いユーザーがシェアバイクを利用できなくなる手段を採用している。
シェア自転車サービスを提供している企業が問題を起こすユーザーの情報を交換したり、類似サービスも利用できなくなる仕組みである。
また、ユーザーの罰則の以外に、ユーザーの教育にも取り組んでいる。
例えば、Mobike社は良いマナーを報奨し、悪いマナーを懲らしめるクレジットシステムを導入している。Mobikeのサービスを使い始める時に、各ユーザーは100点のクレジットポイントが与えられているのだ。
不正駐輪された自転車の写真を撮って、報告することによってポイントを稼ぐことができる。Mobikeのスタッフが現地確認に向かい、違犯を確認できたら、犯行者のクレジットポイントから20ポイントが減算される。ユーザーのクレジットポイントが80ポイントを下回ると、シェア自転車サービス料金は高くなるのだ。
自治体も不正駐車の問題を放置しておらず150万台のシェア自転車がある上海市ではドックレスシェアバイクを駐輪する専用エリアが開設され、白い四角と自転車のサインで記されてるようになった。
ドックレスシェアバイクを使うユーザーのマナーによって、問題が起こえることから、パリやニューヨーク市などでは「ドック式」シェアバイクサービスを採用している。ドック式シェア自転車サービスの場合、指定された位置以外で自転車を置くことができないため、使い捨てによる混乱を避けることができるのだ。
アメリカのシアトル市ではドックレス自転車を提供している企業にビジネスを許可し、同市では9千台の自転車は配置され、ニューヨーク市に次ぐシェアバイクの台数で全米第二の都市となった。
フォードxクアルコム
米フォード社はクラウド上のスマートシティプラットホームを発表し、都市や交通サービス企業や自動車メーカーにとってオープンスタンダードになることを期待している。
これをグローバル規模で展開するため、フォード社はクアルコム社と提携した。
フォード社はシリコンバレーのスタートアップAutonomic 社と共同でTransportation Mobility Cloudというオープンプラットホームを開発している。
このプラットホームを使うことで、都市はコネクテッド交通信号や駐車場を含めて、コネクテッドインフラストラクチャーを開発することができる。プラットホームの目的はスマート輸送機関や関連コネクテッドサービスを繋ぎ、一つの共通言語によって統合できて、リアルタイムですべてのサービスを調整できるようになる。
つまり、V2X通信機能が搭載された個人の自動車や自転車シェアネットワーク、公共とプライベート交通機関サービスを統合するシステムを作り上げるのだ。
同プラットホームは位置情報サービスに対応し、経路決定や、サービス停止のアラート発信、アイデンティティ管理や支払い処理、またはデータ収集や分析を行う。
プラットホームが導入されると、自動運転車に対して渋滞がある道路を避けるようなルートを作成したり、EV 専用の地区を区切るといったことなどができるようになる。
バイドゥ
中国のBaiduは、河北省政府との提携し、雄安新区に新しい都市交通システムを導入し、スマート公共交通機関や自動運転技術を採用し、モデル都市の設立を目指している。
北京から100キロぐらい離れた雄安新区では中国政府は環境にやさしい、新型の都市を構築し、北京の過密状態の改善を目指している。
現在の100平方キロの面積を最終的に2000平方キロまで拡大し、200-250万人の住民を想定している。
BaiduはAI研究所の設立を計画しており、すでに自動運転車のテストを実施しているということだ。
アリババ
中国のアリババ社はマレーシアの首都クアラルンプール市を始め、全国で「City Brain」というビッグデータやAI を扱うクラウドサービスを展開する予定だ。
「City Brain」はアリババの本社が位置している杭州市で最初に導入され、ビデオ記録や、ソーシャルメディア、交通情報などのデータを収集し、処理し、日常運用に利用されている。
アリババ社はクアラルンプール市政府と契約を結び、都市の効率性を向上するため、「City Brain」の導入に取り組む。
初めの段階で、このソリューションを交通システムに導入し、インシデント対応計画や緊急サービス用の経路決定などに使う。
シンガポール
ASEANの諸国ではシンガポールとマレーシアはスマートシティプロジェクトのリーダーである。
中でもシンガポールはSmart nationイニシアティブを展開しており、デジタル・スマート技術の採用によって経済的な競争力の向上や住み心地の改善を目指している。
また、このイニシアティブのプロジェクトは、e-payment(電子支払い)ゲートウェイやスマート都市モビリティ、国民デジタルIDシステムなどが実現できる。
また、シンガポールは政府サービスについても統合し、デジタルプラットホーム上で提供している。
インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム
その他のASEAN諸国もスマートシティに力を注いでいる。
インドネシアはジャカルタ市のスマートシティプロジェクトを進め、Jakarta One Card、ごみ回収車の追跡プロジェクトやスマート街灯プロジェクトを実施している。
タイはDell社とインテル社と協力し、高齢者のスマート保護を中心にSaensukスマートシティプロジェクトを進めている。
フィリピンのダバオ市はIBMのIntelligent Operations Centre (IOC)を導入し、リアルタイム監視によって緊急対応の効率性を向上し、治安とセキュリティ改善を図っている。
ベトナムのダナン市は2025年までにスマートシティになることを目指している。
現在ダナン市はIBM Smarter Citiesイニシアティブを利用したいため、IBM社と交渉中だ。IBM 社の協力でスマートシティインフラストラクチャーの開発、廃棄物の効率的な管理や大気質の管理などに取り組む予定だ。
ASEANは世界の急成長を遂げている地域の一つであり、都市化が進んでいる中、都市で快適な生活を実現するスマートシティソリューションは重要である。
シスコのスマートシティソリューション
シスコはオーストラリアのアデレード市でスマートシティのプロジェクトに100万ドルの投資を行うことを発表した。
このパイロット・プロジェクトの主な目的は渋滞問題を解決し、自動運転車を導入可能な道路状態を達成することだ。
南オーストラリア州政府やアデレード市政府の協力で実施されているこのプロジェクトでは、車両の滞在時間や交差点での車列の長さなどを測る。ダッシュボードを使い、一日中の平均値も測り、決まった交差点で信号機順番の効率性を確認する。
プロジェクトは、シスコの「Cisco Kinetic for Cities」プラットホーム上で稼働し、2つの段階に分かれて実施される。初期段階では渋滞が起こりやすい交差点で6個のセンサーを設置し、交通データを収集する。そのデータに基づき、専用アルゴリズムは最適な信号パターンや横断する歩行者の流れを計算し、提案する。
次の段階では自動運転車の正確な位置や移動確定に使えるかどうかについての評価を行う。
パナソニックのスマートシティソリューション
パナソニックのアメリカ子会社は、活発にアメリカでのスマートシティプロジェクトに取り組んでいる。
コロラド州、コロラドスプリングズ市で、パナソニックはスマートシティ・ソリューション展開のためコロラドスプリングズ市政府やコロラドスプリングズ市のユティリティ業者と提携した。エネルギー、モビリティ、都市サービスやスマートビルという分野に関して優先分野として選ばれている。
同じコロラド州、デンバー市の空港で、パナソニックはもう一つのスマートシティプロジェクトを実施中だ。パナソニック社は世界中で展開している「CityNow」イニシアティブの一部であり、同プロジェクトは2026年まで同地域をスマートシティに発展させる目的だ。
空港近くの更地でパナソニック社は無料のWiFiやLED街灯、汚染センサーや太陽エネルギーを利用するマイクログリッドやセキュリティカメラを設置した。
また、パナソニック社とデンバー市は去年コロラド州の交通局と提携し、7,200万ドルの予算を使い、ハイテックな高速道路や自動運転車への対応準備を進めるRoad Xというシステムを開発していく。
このプログラムは交通事故を減らすため車両対インフラストラクチャーの通信を促す。また、このシステムはリアルタイム交通状況に基づき、最適なルートの提案や車両が車線を逸脱しそうになったときに警報するなどの機能を検討中だ。
また、今年中にライト・レール線の駅とバス亭を繋ぐ自動運転シャトルも導入する予定だという。
ちなみに、「CityNow」イニシアティブは日本の藤沢スマートシティプロジェクトから始まったものということだ。
Nokiaのスマートシティソリューション
Nokia は2018年の2月にIoT for Smart Cities and Sensing as a Serviceサービスを展開し、20種類のサービスの提供を開始した。
IoT for Smart Cities はスマートシティ・アプリケーションを組み立てることができる、スケーラブルなネットワークであり、新しいサービスの素早い導入を可能にする。スマートシティ稼働に関するアプリケーションはビデオ監視、スマートライト、スマート駐車サービス、廃棄物処理や環境センシングなどを利用できる。
すべてのアプリケーションデータを共有しているNokiaのIntegrated Operations Center (IOC、統合運用センター)は取得したデータの分析し、自動的にすべてのスマートシティ稼働データを統合することによって高い効率性を実現し、意思決定の改善や速い対応にも貢献している。
新しいSensing as a Serviceサービスはモバイル通信を提供している事業者向けであり、既存基地局のソフトウェアをNB-IoTまでアップグレードし導入できる。基地局に様々な種類のセンサーを設置し、リアルタイムで様々なデータを取集と匿名化し、都市政府や企業に提供できる。それによって都市に起きている異常をリアルタイムで検知できるようになる(ゴミ燃焼や大気にある化学物質の検知など)。
このようなデータサービスを提供する際、Nokia のブロックチェーン上でスマート契約を結び、分析したデータの分だけマイクロトランザクションによって請求することができる。
さらに、公共安全性を管理に使える公共メッシュWiFiとセキュアMVNO(S-MVNO)も提供している。S-MVNOはネットワーク可用性、パフォーマンスやセキュリティの厳しい3GPP規準に対応しており、既存の公共安全ネットワークと相互運用が可能だ。
GMOクラウドのスマートシティソリューション
日本で、GMOインターネットグループである、GMOクラウド株式会社と、ハウステンボス株式会社ならびに株式会社hapi-robo st(ハピロボ)の3社は、IoT技術の活用によりリモートでゴミの量を把握できる「スマートゴミ箱(仮称)」を、テーマパーク、ハウステンボス内のアムステルダムシティ(約4万2000平方メートル)全域に設置し、その有用性を検証する実証実験を開始した。
この「スマートゴミ箱」は、GMOクラウドの「IoTの窓口 by GMO」とハピロボが共同開発したものだ。ゴミの量を検知するセンサーをゴミ箱に搭載することで、インターネットを通じて遠方からゴミの溜まり具合を把握することができる。
これにより、ハウステンボス内で働くスタッフのゴミ収集業務の効率化を図る。なお、今後「スマートゴミ箱」は、大型のリゾート施設やショッピングモールなどへの展開も視野に入れているという。
「スマートゴミ箱」は、内蔵センサーがゴミの量を計測して、インターネット上でゴミの滞留を遠隔から把握できるゴミ箱だ。ゴミの量を正確に検知できる「高精度」、多様なゴミ箱の種類に対応できる「汎用性」が特徴となる。
PCやスマートフォンなどからゴミの滞留を確認できるほか、ゴミの量が一定量を超えた際に、スタッフが装着している無線イヤホンへメールを自動送信し、読み上げることで通知を行う仕組みも備えている。
これにより、勤務中でPCやスマートフォンを使用できないスタッフも、ゴミ箱を開けずにゴミの溜まり具合を確認することが可能だ。
そこで「スマートゴミ箱」を導入することで、ゴミ収集における業務の効率化を図るという狙いだ。
東京電力エナジーパートナーのスマートシティソリューション
東京電力エナジーパートナー株式会社(以下、東電EP)とトヨタウッドユーホーム株式会社(以下、TWH)の両社は、TWHが開発する新規分譲地にて「次世代スマートタウンプロジェクト」を共同で進めることに合意した。
プロジェクトの一部として、東電EPは、顧客の太陽光パネルが発電した余った電気をスマートタウン内の蓄電池にお預かりしたとみなし、実際に使用する際に充当することができ、また、他の顧客との間で分け合うこともできる「電気のお預かりサービス(仮称)」の提供を検討している。
また、同プロジェクトでは外出先から家族の帰宅状況や留守中のご自宅の状況を確認することができる、TEPCOスマートホームの「おうちの安心プラン」に必要な機器を対象分譲地のすべての住宅に標準搭載する。
東電EPは、「おうちの安心プラン」を街全体に導入する初のモデルケースとして、顧客の声などを踏まえながら、サービスの向上・拡充に向けた検討を行っていくとした。

