人口減少と高齢化に伴う医療・介護費の増大が社会課題となる中、持続可能な保健・医療施策の構築が急務となっている。
しかし、多くの自治体では保有する健康データが国民健康保険など一部の保険加入者に限られており、市民全体の健康状態を正確に把握してエビデンスに基づく政策立案(EBPM)を行うことが困難であった。
こうした中、日立市、株式会社日立製作所、株式会社日立システムズ、沢井製薬株式会社の4者は、2025年度に実施した、日立市における約7万人の健康データの集約・分析と、AIを活用した健康管理アプリケーションによる実証実験の結果を発表した。
同取り組みは、散在する健康データを統合して市民の疾病傾向を可視化し、AIによる発症予測を通じて市民の自発的な健康行動を促すことを目的としている。
実証の最大の特徴は、保険者の枠組みを超えた大規模なデータ統合による全体傾向の把握と、AIを活用した個別のアプローチを組み合わせた点にある。
第一の実証として、日立市民が加入する複数の保険者(国民健康保険や日立健康保険組合など)と連携し、市内の40代から70代人口の約75%に当たる約7万人規模のデータを横断的に集約および分析した。
これにより、従来は把握しきれなかった市全体の疾病傾向として高血圧の発症が比較的多いことが客観的なデータとして明らかになり、効果的な予防施策のターゲットが明確化された。
第二の実証では、沢井製薬が提供する健康管理アプリケーション「SaluDi」を市民約300名に提供した。同アプリは個人の健康データ(PHR)を一元管理するとともに、健診データとビッグデータを基にしたAIによる疾病発症予測を提示する機能を備えている。
アプリの利用を通じた検証の結果、参加した一部市民のヘルスリテラシー向上が確認され、AIを用いた客観的な情報提示が健康意識の醸成に有効であることが実証された。
日立市は今後、今回の実証結果に基づき、市内にアプリと連動する血圧計を設置するなど、データに基づいた高血圧対策を推進する。
そして、2026年度には健康アプリに個人の日々の行動データに応じた個別性の高いAIアドバイス機能を追加し、市民の継続的な健康行動を支援していく計画だ。
また、日立製作所と日立システムズは、同実証で得られた成果を他地域へ展開し、沢井製薬はアプリの社会的な健康インフラとしての活用を広げるとしている。

