自治体の土木・建設部門では、将来的な技術職員の減少が見込まれる一方、定期的な部署移動により専門的なノウハウや実務知識の蓄積・継承が難しい構造的課題を抱えている。
特に建設業務においては、膨大な設計基準書や関連法規に基づく厳密な判断が求められるため、ベテラン職員の知識や経験に頼る属人化が顕著であった。
こうした課題に対し、建設局は、東京大学発AIスタートアップの燈(あかり)株式会社が提供する建設業界特化生成AIエージェント「光/Hikari」の導入を決定し、実務への適用を開始した。
この取り組みは、将来的な技術職員不足を見据え、熟練職員の知見やノウハウが活かせる段階からAI活用の定着を進めることを目的としている。
今回導入された「光/Hikari」は、建設領域の高度な実務判断と業務プロセスを支援する業界特化生成AIエージェントだ。800冊を超える専門書籍や関連法規を網羅した専門知識基盤を備え、資料作成や仕様確認などの実務を自律的に支援・実行する。
さらに、組織固有の施工実績や社内ルールをAIへ組み込むことで、ベテラン技術者に属人化していた「暗黙知」を組織の共有資産(形式知)へと変換することが可能だ。
京都市建設局では、日常のデスクワークから緊急対応まで、多角的な実務ユースケースでの活用を進めている。
例えば、若手職員が業務上の疑問点や設計基準の根拠を即座に照会して書類の叩き台を作成する調査支援をはじめ、外部委託会社から提出された設計計算書や比較表をAIに読み込ませて工法の適瞭性を客観的に検証する発注者側の評価体制強化などに活用されている。
さらに同局では、橋梁部門をモデルケースとして、これまで蓄積されてきた膨大な過去資料に検索ルールを設けて「光/Hikari」へ読み込ませることで、必要なナレッジを誰でも瞬時に参照できる全庁的なデータ共有体制の構築を目指しているとのことだ。
また、台風や集中豪雨によって道路冠水や斜面崩落、構造物損壊などの被害が発生する災害時には、被災状況に応じた復旧工法の選定や概算予算の算出をAIが支援する。
京都市建設局土木管理部DX担当の牧氏は、「ベテラン職員の判断力が活かせる現段階で導入し、定着させることが重要だと考え、「光/Hikari」の導入を決定した。日常の事前確認から災害対応まで現場での定着が進んでいる。」と述べている。
今後は、熟練職員の知見を活用しながら実務での定着を進め、若手職員でも自律的に一次判断ができる環境を整えることで、スムーズな技術継承と業務効率化を実現していく方針だ。

