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【定点観測】スマートグリッドとは何か? ースマートグリッド1月アップデート

スマートグリッド現状レポート

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電力産業は日常生活や経済活動をサポートしていくための、需要な中核産業である。しかし、この産業においては、数十年も「イノベーション」がなく、様々な問題が連発している。

その中には、インフラの老朽化、気候変動や化石資源を使う発電施設や原発の新設に対する社会反対などがある。

「国際電力見込み2016(The International Energy Outlook 2016)」によると、全世界電力消費量は2012年の54,9京Btu (熱量単位)から2040年に81,5京Btuまで増加するとみ込まれ、48%も伸びるということだ。
※京は、107

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、2010年にグローバルCO2ガスの25%は電力と熱生産によるものだったという。

この状況で、電力産業では、効率を向上する、または電力ネットワーク管理を改良することで、新技術のための容量が提供できるソリューションが必須となる。

そこでスマートグリッドが大きく期待されているのだ。

スマートグリッドは自動化・統合された電線、変電設備、変圧器、スイッチなどのネットワークのことであり、デジタル技術を利用することで安定的、効率的で持続可能な手法で発電所から顧客に電力を調達することができる。

ネットワークに接続している機械(パワーメータ、電力センサ、故障検出センサなど)にセンサが設置され、収集されたデータが双方向通信で、ほぼリアルタイムでネットワーク運用センターに送信されているという仕組みになっている。

自動化技術はスマートグリッドのメインの機能で、それによってネットワークに繋がっている何百万のデバイスを中央から調整・管理し、検査や調整に必要な手作業時間を著しく削減することができるのだ。

電力需要の高まりや 、電力供給の安定性、質の向上、エネルギー効率の向上、低炭素エネルギー資源を電力ネットワークに統合することなどの課題は、スマートグリッド導入によって解決・緩和されるという期待がかかっている。

そして、スマートグリッドと電力貯蔵体を合わせて使うことで、ピーク時の需要と供給をバランスさせることができ、その結果ネットワーク負担を軽減し、消費者に安定的に電力供給することができる。

低炭素エネルギーのトレンドによって、ビジネスや家庭で代替エネルギー使用が普及していることで、従来の集中型エネルギーモデルが分散型モデルに変換されつつある。

スマートグリッド技術によって、各家庭や企業が電力消費のリアルタイムな管理機能を手に入れ、消費コントロールと電力節約が実現できる。

また、太陽光パネルなどで発電された電力の余剰を売電あるいは貯蔵することが可能になったことは、近い将来に電気自動車の大規模な受け入れにも関する試金石にもなる。

スマートグリッド技術を開発あるいは提供している企業が技術の大手企業を始め、通信会社あるいはスタートアップ企業でもある。

大手技術企業が通信機械やソフトウェア開発を狙っているが、他にも電力、再生可能なエネルギー、機械、自動車産業の企業がスマートグリッドを使い、顧客と交流することができる。通信技術を扱うスマートグリッドの革新的な用途は増えつつある。

2011年、IEEEはスマートグリッドの相互運用性基準開発を目指し、「Guide for Smart Grid Interoperability of Energy Technology and Information Technology Operation with the Electric Power System (EPS), and End-Use Applications and Loads(スマートグリッドの電力技術・情報技術運用と電力システムとの相互運用性、またはエンドユーズ用途と電力負荷)」というIEEE2030基準を発行した。

送電網は重要なインフラであるため、投資、または実施されるソリューションはだいたい政府によって選ばれる。

アメリカでのスマートグリッドに関するポリシー

アメリカ政府が初めて導入したスマートグリッドに関する法律は、2007年12月の送電網の現代化基本方針§17381立法であり、「将来の電力需要に応じられる安定的かつ安全なインフラを維持するため、国家の送電・配電システムの現代化へのサポート」という目的で作成された。

2009年アメリカ復興・再投資法(ARRA)の資金調達によって、アメリカのエネルギー省が310億ドルを様々な国内クリーンエネルギープロジェクトに投資した。そのプロジェクトの中で、代替燃料車やスマートグリッドへの投資を始め、ビジネスや移住者のエネルギーコスト削減、エネルギー効率性ためのアップグレード、二酸化炭素捕捉やストーレジ設備を設置するプロジェクトなどが実施された。

ARRAプログラムによって新エネルギー資源の創造、資源の節約、大規模の太陽発電所やプラグインEV市場などの新ビジネスの速やかスタートが実現された。同産業が研究者や標準化機構と力を合わせて、サイバーセキュリティや相互運用性の課題解決を探った。

電力研究所(EPRI)の2011年のデータによると、アメリカでのフールスケールのスマートグリッド実施には20年間で総合金額で3380億ドルから4760億ドルまでの投資が必要だと想定される(Estimating the Costs and Benefits of the Smart Grid – A Preliminary Estimate of the Investment Requirements and the Resultant Benefits of a Fully Functioning Smart Grid, EPRI)。

「手頃な値段で、クリーンかつ安定している電力や電力サービス」を確保するのが目的で、2014年にオバマ大統領が4年ごとのエネルギー見直しを行う覚書に署名したのだ。

複数の省のメンバーが入っている、この見直しのためのタスクフォースで、エネルギーポリシーの全体概要作成が任された。

2017年2月の時点でタスクフォースから2冊の書類が出している。

2015年の4月に、「送電、電力貯蔵、配電インフラ」という第一冊目が発行され、アメリカのインフラ現代化方法が考察されている。

2017年1月にタスクフォースが「国家の電力システム変換」と題した第二冊を発行した。第二冊では、アメリカの電力産業の2040年までのトレンドや課題が分析され、発電所からエンド・ユーザーまで全電力システムが調査対象となった。同レポートは電力システムの現代化や変換に関する76の推奨事項を提供している。

ヨーロッパのポリシー

ヨーロッパの将来電力ネットワーク用の技術プラットホーム(ETP SG)はヨーロッパ電力ネットワークの2020年以降のビジョン開発の目的で2005年にスタートした。

ETP SGは2007年にリサーチの戦略アジェンダを公開し、2012年にそれをHORIZON2035計画に基づいてアップデートした。2015年にそのアジェンダは、第5回国連総会でも発表された。

欧州委員会によると、「再生エネルギー資源のスムーズな統合、以前より効率性と安定性が高い電力の提供、またはEU内のエネルギー市場の創出と消費者の全面的な参加は EUのキー目標である」とした。

国際エネルギー機関は、発電所を始め、送電と配電施設を含み、ヨーロッパの電力システム更新には2007年から2030年にかけて15兆ユーロが必要だと想定している。

2016年12月、欧州の研究投資プログラムHorizon2020は再生可能なエネルギー、新ビジネスモデルや小売り市場ソリューションの開発でヨーロッパのエネルギーグリッドを現代化する目的で9900万ユーロを12スマートグリッドやエネルギープロジェクトに割り当てた。

そのプロジェクトの一つであるInterFlexはエネルギーグリッドをもっと柔軟にすることを目指す。InterFlexは2200万ユーロを使って3年間で実施される予定だ。

当プロジェクトは将来のより柔軟な、ローカルエネルギーシステムに移行するため、配電ネットワークや、革新的なITソリューション、レベルの高いネットワークの自動化のためのテストを行う。さらに、デモの結果分析も行い、それらの再現が可能かどうかを評価するものだ。

このプロジェクトは、特に電力貯蔵、電気自動車、需要反応、アイランディング、グリッドの自動化やあらゆるエネルギーキャリア―(ガス、熱、電力)などの統合に焦点を置いている。

INEA (Innovations and networks executive agency、イノベーションやネットワークの執行機関)は2016年にHorizon2020のエネルギープロジェクトに関する43交付契約を認可した。同プロジェクトの推定総合金額は2.75億ユーロに上る。

スマートグリッドの様々な課題

ここまで見てきたように、政府の活発な対策や標準化への取り組み、またはスマートグリッドの実現に必要なコア技術がほとんど市場で入手可能であるにもかかわらず、現時点でスマートグリッド実施レベルは低いといえる。

サイバーセキュリティーやインフラの現代化に必要な膨大なコストの他、現時点では発電所からエンドユーザまでのすべてのネットワークをカバーしているスマートグリッドソリューションの数は少ないといえる。

スマートグリッド技術に関するすべてのコストや、利益の評価にはまだ時間がかかるので、それまでにスマートグリッドプロジェクトの実施決定を左右する。新技術の普及には、新ビジネスモデル、長期計画や先端システムデザインが必須だ。

スマートグリッド開発や実施レベルを向上するため、政府、自治体、電力供給会社、電力規制当局屋IT企業は協力するべきだと考える。

スマートグリッドプロジェクトを展開している企業の例

スマートグリッドの実施レベルが低いにもかかわらず、世界各国で様々な企業が新しいソリューション開発や導入に努力している。

ČEZ Distribuce (チェコ), Enedis (フランス), E.ON (スウェーデン), Enexis (オランダ) とドイツの Avaconなど、ヨーロッパの発電や配電にかかわるすべての大手企業がスマートグリッドプロジェクトに参加している。

カナダのEmera Inc はニューブランズウィック大学にてスマートグリッド技術の研究センター設立に600万ドルを投資予定だ。

Nokiaはユティリティー、スマートシティや治安確保用の配電ネットワークの現代化を実現する 7705 SAR-Hmという LTE/3G ワイアレスルーターの提供を始めた。

中国のファーウェイは2月にOracleとスマートグリッド開発を目的とする提携を発表した。ファーウェイの記載によると、先端メータリングにおいて協力を続けるため「パワーIoTエコシステムパートナーシップ」にサインしたという。
両社は強固なエンド・ツ・エンドAMIソリューションを目指し、ファーウェイの先端メータリング・インフラストラクチャ(AMI)とOracleユティリティー製品の相互運用性に力を入れている。
両社は事前に自動メータリングやユティリティー分野で協業したことがあって、総合運用性を実現するためオープンアーキテクチャーの上で標準的なIT技術を使うという。

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