2019年8月21日〜23日ジャパンインターナショナルシーフードショーが東京ビッグサイトにて行われた。
今回はその中で公立はこだて未来大学システム情報科学部教授 マリンIT・ラボ所長 和田 雅昭氏による「水産業の明日を拓くスマート水産業」というセミナーを紹介したい。
効率的な漁業の例を活用する
まず和田氏は、函館漁港の複数のイカ釣り漁船の一日の航跡を見て、最終的な水揚げの結果と照らし合わせた事例について話した。結果は船を出していた時間が一番短かった漁船が、その日一番多い水揚げ量だった。
一番多い水揚げ量だった船の航跡を見てみると、船着場からそれほど離れていない漁場を見つけ、効率的に漁を行えている。他の船は船着場から遠い漁場で釣りをしているため、移動で時間を取られていたのだ。
また、漁場を見つけられず、数時間漁場を探しているだけの船もあり、まずはこういった無駄をなくすことが重要だと語った。
持続可能な漁業を行うための情報共有
次にナマコを例に水産資源の保守と経営の話がされた。ナマコは中国の市場を開拓したことにより、高値で売れるようになった。それに伴い乱獲されるようになり、水産試験場が調べた結果水産資源の状態は年々悪くなっていた。
隣接する都市ではナマコを取り続けてしまい、資源が枯渇してしまった。こうした事例からこの土地では資源を守ろうということで、16隻の船で成り立つ部会が情報の共有をするという取り決めを行なったという。
そこではこだて未来大学は情報共有できるツールを提供し、漁業者はタブレット端末でお互いの航跡をリアルタイムで見ることができるようになった。また、漁業者に漁獲の情報を入力してもらい、お互いに共有をした。
そうすることで誰がどこでどのくらいのナマコを取ったかが分かり、漁業者達自らが資源の水揚げをコントロールすることができた。
持続可能な漁業を成立するためには、収益をあげながら未来につながる資源の確保も同時に行わなければならない。そのためには情報の共有が必要になってくるということだ。
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スマート水産業の未来
また、もう1つの課題として、地球温暖化により海水温が上昇し、漁業では漁場形成が変化し、環境への順応に迫られているという。
そこではこだて未来大学では、うみのアメダス(海水温観測ネットワーク)という全国の海を対象とした海水温観測ブイを開発した。多点多層観測がリアルタイム配信され、海水温の状態が数値とグラフで可視化されるというものだ。
海の状態を知り、環境が変わっているなら仕事のやり方を変えていくことも今の時代では必要になってくるという。
また、将来のスマート水産業では、うみのアメダスをさらに発展させデータを蓄積し、天気予報のように魚の動きを予測できるようになる未来を話した。
どこでどんな魚が取れたか、ある種類の魚がどのように日本海を上がってきているか、ある種類の魚がどこまできているか、といったことがリアルタイムで分かり、そしてその後どのような動きをするのか予測もできるようになれば、漁業者の経営に大きなメリットをもたらすと語った。
さらにこうした可視化や予測といったことは買う側、仕入先の立場にも大きなメリットをもたらすという。どこに行けばどんな魚がどれくらいあるかということが事前にわかれば、どの車をどの産地に何台向かわせるかということを考えることができるからだ。
水産業など一次産業にデジタルを取り入れる際の課題
しかし予測をしていくには大量のデータが必要となるが、一次産業では時間を早めることができないということが課題だという。
例えば囲碁や将棋などの対戦を人工知能に学習させる場合は、コンピューター同士が24時間対戦をし続けることで、膨大な学習データが短時間で蓄積される。
一方自然を相手にしている一次産業では、一年サイクルの養殖だとすると30年かけても30パターンしかデータを取ることができない。こういったことからある地域、ある組合のデータといった単位ではなく、水産業者全体が協力し、多くのデータの共有をしていくことが不可欠になってくるという。
また、漁業というと、陸揚げをする前の情報をデータ化することに注力が注がれがちだが、加工や販売など、陸揚げした後どのような経路を辿るかといったデータも重要だという。
ナマコの例でもあげられたように、水産物とは有限の資源だからこそ、資源の把握、保守、経営、流通と、生産から流通まで一貫していくことが今後水産業では必要なことだと語った。
現在はこだて未来大学では、漁業者にデジタル技術を提供する際、サーバーの運用費を大学側が負担する代わりに、漁業者からデータを提供してもらい、研究に役立てているという。
しかしデータの扱いとして、どこまでをオープンにしシェアをするかという点はまだ検討課題であると語った。

