スマート水産業の未来
また、もう1つの課題として、地球温暖化により海水温が上昇し、漁業では漁場形成が変化し、環境への順応に迫られているという。
そこではこだて未来大学では、うみのアメダス(海水温観測ネットワーク)という全国の海を対象とした海水温観測ブイを開発した。多点多層観測がリアルタイム配信され、海水温の状態が数値とグラフで可視化されるというものだ。
海の状態を知り、環境が変わっているなら仕事のやり方を変えていくことも今の時代では必要になってくるという。
また、将来のスマート水産業では、うみのアメダスをさらに発展させデータを蓄積し、天気予報のように魚の動きを予測できるようになる未来を話した。
どこでどんな魚が取れたか、ある種類の魚がどのように日本海を上がってきているか、ある種類の魚がどこまできているか、といったことがリアルタイムで分かり、そしてその後どのような動きをするのか予測もできるようになれば、漁業者の経営に大きなメリットをもたらすと語った。
さらにこうした可視化や予測といったことは買う側、仕入先の立場にも大きなメリットをもたらすという。どこに行けばどんな魚がどれくらいあるかということが事前にわかれば、どの車をどの産地に何台向かわせるかということを考えることができるからだ。
水産業など一次産業にデジタルを取り入れる際の課題
しかし予測をしていくには大量のデータが必要となるが、一次産業では時間を早めることができないということが課題だという。
例えば囲碁や将棋などの対戦を人工知能に学習させる場合は、コンピューター同士が24時間対戦をし続けることで、膨大な学習データが短時間で蓄積される。
一方自然を相手にしている一次産業では、一年サイクルの養殖だとすると30年かけても30パターンしかデータを取ることができない。こういったことからある地域、ある組合のデータといった単位ではなく、水産業者全体が協力し、多くのデータの共有をしていくことが不可欠になってくるという。
また、漁業というと、陸揚げをする前の情報をデータ化することに注力が注がれがちだが、加工や販売など、陸揚げした後どのような経路を辿るかといったデータも重要だという。
ナマコの例でもあげられたように、水産物とは有限の資源だからこそ、資源の把握、保守、経営、流通と、生産から流通まで一貫していくことが今後水産業では必要なことだと語った。

現在はこだて未来大学では、漁業者にデジタル技術を提供する際、サーバーの運用費を大学側が負担する代わりに、漁業者からデータを提供してもらい、研究に役立てているという。
しかしデータの扱いとして、どこまでをオープンにしシェアをするかという点はまだ検討課題であると語った。

現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。
