2019年8月21日〜23日ジャパンインターナショナルシーフードショーが東京ビッグサイトにて行われた。
その中で同時開催されていた国際水産養殖技術展、フィッシュネクスト技術展に展示されていた、IoTやAIを取り入れた水産業界の課題を解決するソリューションを紹介したい。
今回紹介する企業・ソリューションは本展示会で初めて展示するものや、設立して間もない企業であり、試行錯誤や特許申請などを超え、実際に社会に実装されだしていることを感じた。
自動給餌器で労働力カットとデータの蓄積を行う
ウミトロンでは生産養殖向けのIoTとAIを活用した自動給餌機の展示を行っていた。
太陽光パネル付きの自動給餌機の中にはソラコムのSimが入っており、生産者はスマートフォンやタブレット端末から専用のアプリで量と頻度をタイマー設定することができる。
自動給餌機の下部にはカメラが設置されており、リアルタイムでいけすの様子を確認することができるため、魚があまり食べていなければ餌やりを止め、まだ必要そうであれば追加で餌やりをするといったことが遠隔で行える。
また、動画やデータはクラウドに保存されているため、過去の同じくらいの気温の際どのくらい餌をあげたのかといったことを振り返ることができ、効率的な餌やりをデータに基づいて考えることができる。
こうしたことで無駄がなくなり餌代のコストカットができ、適切な量の餌で魚を早く成長させることができる。
各いけすにウミトロンを設置し、同時に遠隔操作が行えるため、漁業者の労働削減、人件費カットにも役立つ。
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独自技術で水産業の課題を解決する
炎重工では魚の群れの行動を電気触覚を利用し、生体群制御するといった装置の展示を行っていた。
電気を用いて触れたような感覚を魚に擬似的に流し、一箇所に魚を集めたり、大小違う魚を選り分けてとどめさせることができる特許技術だ。
魚の群れを行動制御することで得られるメリットは、餌やりの際一箇所に集めて効率的に行えることや、大小分離によって小さい魚にだけ餌を与える機会を作り、成長を均一に保つといったことだ。
展示会場では誘導デモを行っており、岩手にあるいけすの魚の誘導を東京ビックサイト会場から行っていた。
また、炎重工は自動走行の船の展示もしており、これは餌やりの自動化や、密漁の監視、水質や環境調査などに使われるという。
付属品やオプションは導入者のニーズに合わせてつけられるということで、様々な用途に使えるという。
回路設計はオープンソースは使っておらず、オリジナルでプログラミングを行っていることから、保守ができなくなるというリスクを回避している。
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長年の研究が民間利用される
オーシャンアイズでは、京都大学と海洋開発研究機構(JAMSTEC)が中心となって開発した海水温をリアルタイム配信する「漁場ナビ」と、海況予測システム 「SEAoME」の展示を行っていた。
「漁場ナビ」は気象衛星ひまわりの映像から独自のAI技術を用い、より詳細な海水温情報をリアルタイム配信している。
通常のひまわりの画像では雲があって見えない部分もAI技術を使って予測することにより保管することができる。
さらに通常では10キロメッシュと荒い画像だが、2キロメッシュまで精度をあげている。
また、漁業者が位置情報と何がどのくらい取れたかといったデータをオーシャンアイズに提供すれば、次はどこで取れるか漁場を推測する「漁場推定支援」を個別に提供している。
効率的に漁場を推測することで漁場探索の手間、燃料代の削減、人材の育成などに役立つという。
「SEAoME」は、コンピューターシミュレーションで地球の環境を再現したもので、湾内などの特定海域での水温、塩分、流速、海面高度の変化について通常5日、最大14日先まで予測することができるものだ。
メリットとしては、養殖設備や定置網に大きな被害をもたらす急潮・赤潮や急激な海水温変化の予測による被害防止に活用することができるといった点だ。
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船団間の情報共有を分かりやすく容易に行う
ライトハウスでは、複数の船が共に漁に行くときにソナーと魚探を見ながら声だけでのやり取りをしていたものを、電波の送受信デバイスと、カメラ、タブレットを使って、映像として確認しながら漁を行えるというソリューションを展示していた。
こうすることにより、感覚だけで行っていた網を落とす作業などを、確実なタイミングで離れた船同士で行うことができるようになるという。
また、可視化できることにより、経験の浅い船長でも自分の目で見て判断できるようになる。
GPS機能もついており、それぞれの船の船跡も画面上に記録することができるため、他の船が通った地点をもう一度探索してしまうという無駄が省ける。
また、以前であれば運搬船や探索船と落ち合う際目視で探していたが、GPS機能により無駄なく探すことができ、時間と燃料の削減が図れる。
そして船上に取り付けたカメラで漁獲の内容や漁の進歩、網の状況なども映像で共有することができる。
こうしたデータは全て自動で蓄積され、過去のデータから新しい漁のやり方を模索したり、新人教育に活かすといったことができる。
今後はデータの蓄積を行い、資源量の推測や漁業予測を行うことを考えているという。
このように実際に水産業にデジタルが導入され始めており、今後データが蓄積されていけばさらに新たなソリューションへの発展や他の一次産業への応用が予想され、今後の動向にも注目していきたい。

