産業用PCや組込ソリューション、ネットワーク機器など多彩な産業用デバイスを提供し、最近では、WISE-PaaSと呼ばれるIoTプラットフォームも提供しているアドバンテック。
様々な産業分野でグローバルシェアも高い同社の、現状と今後について、同社日本法人 社長兼日本地区最高責任者のマイク小池氏に伺った。後編は主に、WISE-PaaSでできることや、パートナー企業との取り組みについて伺った。
(聞き手、IoTNEWS代表 小泉耕二)
アドバンテックのPaaS構想
IoTNEWS 小泉(以下、小泉): アドバンテックが日本で現在描いている構想についてお聞かせください。
アドバンテック マイク 小池(以下、小池): 最終的なIoTのビジネスの要はAIだと思っています。この2〜3年において、AIは具体的なビジネス展開をしていける答えだとも考えています。
AIのパラダイムシフトとしてIDCのデータでは、2021年の産業別AI支出予測は製造業が95億ドル、リテールで93億ドル、ヘルスケアで53億ドル、公的機関で89億ドルの市場規模であるとされています。
特に、エッジAIコンピューティングのユースケースとしては、「音声認識」、「自動運転」、「がんなどの医療系の疾患症検出」、「予知保全」、「データからどういったものを勧めるかという販売プロセスの推奨」などで使われてくると考えられています。
また市場におけるAIの価値は、2025年には56%がサービス、30%がハードウェア、14%がソフトウェアによって創出されると予測されていますが、アドバンテックは従来からのハードウェアだけでなく、ソフトウェアやサービスにおける価値創造にも関与していきたいと考えています。
小泉: それに対しアドバンテックが打ち出しているソリューションはなんなのでしょうか。
小池: まずアドバンテックは、エッジAI向けのチップセットを活用して、エッジAIアクセラレーションモジュールや、それを内蔵したエッジAI向けコンピューター製品を提供していきます。
それと同時にソフトウェアではWISE-PaaS(アドバンテックの提供する産業向けIoTソフトウェアプラットフォーム)上で、オープンソースソフトウェアを活用したAIフレームワークサービスを提供し、さらにソリューションレディーパッケージ(WISE-PaaSとハードウェアの連携であらかじめ作られた業務処理パッケージ)を提供できるマーケットへの参入を考えています。
ちなみに、エッジが重要だと考えている理由は、データはエッジで50%程度は処理されると考えているからです。さらに、通信時の遅延の問題、セキュリティの問題、データを開示できない場合に対しても有効です。
また、インターネットの接続スピード、データのコストなどを含めるとエッジで処理をするということは時代のトレンドにマッチしており、エッジAIのニーズが膨大であると考えています。
そして、今後5Gの推進が、エッジAIをさらに加速させていくのは間違いないでしょう。我々は無線のプロトコルに対してサポートする商品を出していますが、今後5Gにも対応できるようにしていきます。
ハード上でのエッジAI戦略
小池: そしてエッジAIoTを進めていく中で、ハードの戦略についてお話ししたいと思います。
AIのアプリケーション市場動向は、スマートリテール、交通モニタリング、スマート物流、メディカル、AOIといったマーケットがあります。
図で、パフォーマンス要求は、左が一番低く、右が高くなります。
AI処理のパフォーマンスをあまり要求されないところはCPUやビジョンプロセスユニット、インテルのMOVIDIUSなどを中心としたエッジAIアクセラレーション製品を用意しています。
一方で、要求度が高くなってくるところはFPGA、GPUを使ったソリューションを提供しています。
エッジAIアクセラレーション製品は、MIOシングルボードコンピュータやマザーボード製品、ARKやデジタルサイネージ向けのボックス型コンピュータと組み合わせることで我々のハードウェアの製品ラインナップにエッジAI対応のラインナップを増やしていきます。
次ページは、「ソリューション・レディパッケージとは」
ソリューション・レディパッケージとは
小泉: ところで、WISE-PaaSには、「ソリューション・レディパッケージ」と呼ばれる、業界向けソリューションが提供されていますが、その内容について教えてください。
小池: 2019年は、ソリューションレディパッケージを数多く出してきました。
1つは「Device M +」といって、CNC、あるいはモーター、エナジーコントロールのためのソリューションレディパッケージです。
2つ目は「iFactory」です。ファクトリーの中ではOEEやEMS、AI、AOI(オートメイテッド・オプティカル・インスペクション)などで使えるソリューションレディパッケージを提供します。
3つ目は「DeviceOn」です。これまでIoTゲートウェイなどのデバイスをモニターする機能はWISE-PaaS/EdgeSenseで提供してきましたが、どちらかというとSI向けであったEdgeSenseと違い、DeviseOnではユーザー企業でも容易にデバイスを監視したり、遠隔で電源のオン・オフ制御を行ったりすることができるようになりました。
このDeviceOnは、全てのアドバンテックの組み込み型のボード製品とシステム製品をサポートしています。
我々のボードやエッジコンピューターを使ったソリューションを作った場合、DeviceOnを使ってリモートマネージメント、リモートモニタリングがクラウドやオンプレミス環境で簡単にご利用いただけます。
このDeviceOnが、今年のWISE-PaaSの最新のアップグレード戦略です。
4つ目が「Command Center for Service site」で、これはシチュエーションルーム(危機管理室)ソリューションを工場や病院など様々な場所で展開できるアプリケーションです。
5つ目が「WISE-Stack, Private Cloud」といって、パブリッククラウド上のWISE-PaaSでは扱うことのできないアプリケーションやデータを、プライベートクラウド上に展開するWISE-PaaSで利用できるようにするソリューションです。
6つ目が「Partners’ SRPs」といって、ソリューション・レディパッケージを作るディベロッパーの皆さんとアドバンテックが一緒になって、ソリューション・レディパッケージを投入していくものです。
こういったものを広げていくことで、アドバンテックのプラットフォームWISE-PaaSを使って我々はエネーブラとして、AIoTの実際の戦略の実行を進めていきたいと考えています。
小泉: ソリューション・レディパッケージというのは、例えばCNCならCNCのコントローラーがインテリジェントになるというソリューションがWISE-PaaSベースでできている、ということなのですね。
小池: はいそうです。
次ページは、「WISE-PaaS 3.0の提供する新たなサービス」
WISE-PaaS 3.0の提供する新たなサービス
小池: そして次に紹介するのがWISE-PaaS3.0です。従来はエッジデバイスのインテリジェンス化にフォーカスしていたのですが、今回の特徴はデータ活用のための様々な機能をクラウド上のPaaSとして提供します。
特徴は3つあります。
1つ目は「ビジュアリゼーション・ダッシュボード」の改善です。従来は二次元だったのですが、今回三次元で見られるようになりました。SaaSコンポーザーを使うことで、三次元で施設の状態などを可視化することが可能になりました。(下図)
2つ目が「アセット・パフォーマンス・マネージメント」です。クラウドからエッジまで全てのパフォーマンスに関する管理ができます。
3つ目が「AIフレームワーク・サービス」です。AIモデルのトレーニング、デプロイ、再トレーニング、再デプロイのための統合プラットフォームになります。
様々なソフトウエアを使って収集したデータは、マシーンラーニングやディープラーニングなどを活用した学習を行います。
これらを使って、「インダストリアルAIoTソリューション」という形で、パートナーの皆さんと一緒にAIの具体的なソリューションを作り上ることができるプラットフォームになっています。
小泉: WISE-PaaSの中で使える「AIエンジン」は、御社製品に限らず様々なベンダーのものが使え、それを使った学習モデルをデプロイする仕組みとなっていて、エッジ側のAIフレームワークが実現されていく、ということですね。
WISE-PaaS上に載せられるアプリケーションをマーケットプレースから取得する
小池: そういった中で、エッジインテリジェンスと共創のためのパートナーシップというカンファレンスを6月14日に行いました。
インテリジェントIoTエコシステム・バリューチェーンは、WISE-PasSの提供する様々な機能と、我々が持っている多様なIoT向けハードウェアを組み合わせて、ソリューション・レディパッケージを共創していただけるパートナーと、バーティカルアプリケーション別に業務知識を有していて、ソリューションレディパッケージをエンドユーザーに提供、設置、保守まで行ってもらえるパートナー、DFSI(ドメインフォーカスSI)とで、共に作り上げていくシステムです。
全ての産業におけるDXを、アドバンテックはエッジAIを使いながら、WISE-PaaSとともに具体的に推進していきます。
小泉: パートナーとの協業をイメージされているということですが、WISE-PaaSにはパートナーが作ったアプリケーションを再利用する仕組みはありますか。
小池: はい。WISE-PaaS VIPプログラムというプログラムがあります。
各パートナーは、このプログラムに参加してもらうことにより、WISE-PaaSの様々な機能を活用したソリューションを作っていただくことや、ソリューションレディパッケージとして再配布を行っていただくことができます。
我々もテクニカルサポートをさせていただきます。さらに、ソフトウェアを流通させる仕組みとしては、マーケットプレイスを用意しております。
WISE-PaaS VIPメンバーは、ワールドワイドでは3年間で1000パートナーの獲得を目標としておりまして、我々も国内で100以上を越すという目標でやっております。
ナレッジを共有する仕組み
小池: また、WISE-PaaSのメンバーに入っていただくと、我々が直接テクニカルサポートを行うことができますが、他にもWISE-PaaSナレッジシェアリングという仕組みもございます。
ここでは、「ナレッジポータル」「テクニカルポータル」「開発者コミュニティ」を作り、活性化することを狙っております。
小泉: 最後に、これから日本市場を見てどこの分野を伸ばしていきたいとお考えですか。
小池: ファクトリー関係、ロボット、メディカルなどがAIOTを使えるニーズの基盤があると考えています。
また、公共の分野でもデジタルサイネージなど、スマートシティは伸び代があると思います。
小泉: 本日はありがとうございました。

