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新たな価値創造を広島から発信していく ー広島県×イノベーターズセッション2019レポート

新たな価値創造を広島から発信していく ー広島県×イノベーターズセッション2019レポート

2019年7月、広島県が「デジタルトランスフォーメーション推進本部」を立ち上げたことをきっかけに、2019年10月30日都内にて、広島県×イノベーターズセッション2019が開催された。

このイベントではものづくりを始め多様な産業が集まった広島という地で、DXの要素が加わるとどのようなことが起こるのか、未来のアイディアを膨らませていく。

そして「DXで見えてくる新事業のタネ」と題したパネルディスカッションでは、IoTNEWS代表小泉耕二がファシリテーターとなり、広島県 湯崎英彦知事、「100人いれば100通りの働き方」を提唱し、グループウェアや業務改善サービスなどを手掛けるサイボウズの代表取締役社長 青野慶久氏、エネルギーのDXに取り組んでいるユニコーン企業パネイルの代表取締役社長CEO 名越達彦氏、の4名で、行政、民間企業、ベンチャー、地域など、様々な観点で行える取り組みについてディスカッションが行われた。

新しいものを生み出すチャレンジスピリッツ

まずは広島県 情報戦略総括監 DX推進本部 副本部長桑原義幸氏より、「広島県がこれまで取り組んできた取り組みと、これから行なっていく取り組みについて」、また「広島県がなぜ行政でDXに取り組んでいくのか」について語られた。

桑原氏は、「現在少子高齢化、人口減少、環境問題、テクノロジーといった課題から、行政機関もDXを考えていくのは必然である。」と意気込みを語り、

「第4次産業革命という変化の中、新しい働き方、新しい組織のあり方、制度のあり方を、行政機関が先導を切って変えるべきところは見直していく。」と、行政機関がDXに取り組む重要性を話した。

広島県 情報戦略総括監 DX推進本部 副本部長桑原義幸氏

広島県は日本一移民が多い国であり、違う文化を受け入れる県民気質があると語る。また、戦前は流通産業が発達しており製造業が盛んな県であり、日本初のものを多く生み出してきた。

そして観光地としても原爆ドームや厳島神社を始め、牡蠣、お好み焼き、野球などエンタメ要素も有しており、世界的にみても知名度が高い。こうしたことから広島県は、新たな取り組みを行うのに適した地なのだという。

そこで広島県では、オープンな実証実験の場の提供をしている「ひろしまサンドボックス」、起業家やベンチャー支援をするためのイノベーション創出拠点「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」、産官学が連携し製造業の方を中心にスーパーコンピューターを活用できる「ひろしまデジタルイノベーションセンター」という3つのイノベーションプロジェクトを行なっている。

そして今後取り組む具体的なDXは、仕事暮らしのDX、自治体のDX、地域のDXの3つのDXだという。

仕事暮らしのDXでは、昨年の災害での被害から、AIを活用し災害予測を行うといった取り組みを間も無くスタートさせる。

自治体のDXでは、デジタルネイティブな年代が大人になった際に、行政がどのようなサービスを提供していくべきなのかということを、全てがデジタル化した世界を想像して行なっていく。

地域のDXでは、広島県の23の市と町全てがDXに取り組み、23個のスマートシティを目指していくのだという。

桑原氏は、「DXとは常識の大転換、常識にとらわれずどんどんチャレンジをしていく」と締めくくった。

次ページは、「気軽に移住できるシステムの構築

気軽に移住できるシステムの構築

そしてサイボウズ青野氏、パネイル名越氏、広島県湯崎知事、IoTNEWS小泉によるパネルディスカッションが開始された。

桑原氏が話した広島県の行政の取り組みや意気込みを踏まえた上で小泉は、広島でできることや実現してみたいアイディアを3者に聞いていった。

まず青野氏は、「自社のクリエイティブメンバーには発想を広げるためにもどんどん場所を変えて欲しい」という会社のニーズを語り、そうした際広島は魅力的な場所であるが、住むとなると3つの課題があるとした。

サイボウズ代表取締役社長 青野 慶久氏

1つ目は住む場所だ。空き家がデータベース化されており、どんな場所があるかネット上で確認して気軽にいけるシステムが必要であると話す。

これに対し湯崎知事は、「空き家マップというものがあったが、様々なフォーマットであったため現在フォーマットを統一している段階」だとした上で、「現状では、空き家の状態を把握できてもいきなり住めるという状況ではない。」と課題を語った。

そして2つ目は教育の問題だ。例えば3ヶ月など長期で住むとなった場合、もし子供がいる世帯であれば教育を広島で受けられるのかという課題がある。

「広島に限ったことではなく、日本の教育というのは古い。」と青野氏は語る。

ITを使えば個々のレベルに合わせた教育が受けられる。そしてデータを蓄積していけば個人の実績を持って転校することができる。つまり場所を制約されずに自分に合った教育を受けられるということだ。

こうした仕組みを広島県が先陣を切って構築できれば、それが強みとなり移住したい人が増えるのではないかと提案した。

これに対し名越氏は、「島はIT系の人間にとって非日常であり、脳が刺激されるとても良い環境であるが、ITインフラが整っていないと仕事ができない。だから島にこそ5Gなど最先端のITインフラを強化すべきではないか。」と、島という資源を生かしたアイディアを呈した。

左からサイボウズ青野氏、パネイル名越氏、広島県湯崎知事、IoTNEWS小泉

そして3つ目の課題として青野氏は、島の人との関係性をあげた。地方独特のヒエラルキーやしきたりのようなものがあると、外からの人間は入りづらい。

生きてきたバックグラウンドが違う人間同士でも、フラットに付き合えるようなコミュニティの構築ができなくては移住は難しいと話す。

「ITがないことだけが障壁になっているのではなく、「受け入れてもらえないのでは」と感じることから人が来ないという側面があるのではないか。」と啓蒙した。

次ページは、「データオープン化の重要性

データオープン化の重要性

次に話はデータの取り扱いについて展開された。

湯崎知事は、サンドボックスやDXで取り組みたいことはデータのオープン化だという。

広島県 湯崎英彦知事

行政の持っているデータだけではなく、民間の持っているデータもオープンにしたいが、現状では各企業がそれぞれにデータを保有している。

お互いにオープンになればもっとクリエイティブなことができるが、ルールづくりが必要になるという。どのようにルールづくりを行なっていくかということにチャレンジしていきたいとした。

また、データのオープン化は数年前からの課題だが、一個一個のデータを見て、開示していいのかいけないのか、どこまでなら使っていいのか、ということを精査するのは莫大な労力と時間がかかる。そこで今後は、AIを活用することで実現可能になるかもしれないと展望を語った。

青野氏はデータのオープン化、統合化をするべき具体例として駐車場をあげ、「現在各企業が持っている駐車場のデータを統合して見ることができれば、駐車場の空きを把握することができる。そうすれば出かける際のハードルがぐっと下がる。」とデータ活用のメリットを語った。

それに対し湯崎知事は、「広島でも宮島口まで車で来たはいいが、駐車場がなく数時間周辺を運転し続ければいけないという課題がある。」と、観光地として有名な宮島での駐車場の課題を挙げた。

一方快適な観光を行うためにサンドボックスのプロジェクトで行なっていることもあるという。宮島のロープウェイの整理券をスマホで取得できるというものだ。

名越氏は、「ロープウェイの監視や防犯などには画像が情報量が多く有用なのではないか。」と、画像データの有用性を呈した。

「画像を使用する際にもそこに移った人や建物などの情報の取り扱いには注意が必要だが、個人や建物などが特定されない分析ツールの開発・活用を行っていければいいのではないか。」と話す。

そのため提供する側もあまり目的を持たずに情報を提供することも大事なことではないかと語った。

これに対し小泉は、阿蘇市と阿蘇火山博物館が行っている阿蘇山の噴火監視の例を挙げた。これは火山をフルHDカメラで監視して取得した画像を、防災と観光の両方に活用しているというものだ。

IoTNEWS代表 小泉耕二

火山対策をしている県と観光事業者の見たいデータが同じで、活用のされ方が違うという例だ。

「画像はある、という状態の中で防犯や人流解析、サービスを考えるための材料としてなど、様々な用途で使われることが考えられる。」と、1つのデータの汎用性を示した。

曖昧なデータの難しさと価値

また湯崎知事は、行政であるからこそ持っている個人情報についても語った。

「例えば生活保護を受けているかどうかや、どのような医療を受けているか、というデータを持っていたとしても、どこまでをオープンにしていいのか、そもそもオープンにしていい情報なのかという議論がある。しかしオープンにしていいか曖昧なデータこそビジネスにおいては有効である可能性が高い。」と、個人情報の扱い方の難しさと有益性について述べた。

それに対し青野氏は、個人情報の問題の例として、児童虐待は市が情報を提供しないため発見できないという課題があるとした。

児童や児童の家庭の情報は、学校の教師がある程度情報を把握する程度にとどまり、そこから共有は行われていない。

また、病院や児童相談所でも「おかしい」と気づくことがあっても、それぞれが内部だけで情報を持っているために核心に迫れず、虐待に気づけないという問題があるのだ。

この問題に対し、「個人情報を守るのと、子供の命を守るののどちらが大事なのか。」と青野氏は提起した。

関係者が情報をシェアし、極秘情報としてアクセス権をきちんとかけセキュリティを担保する。そして警察や病院など、必要な人がそのアクセス権から見られるようにしていくことが子供へのサービス向上につながるとした。

また情報漏洩という問題に対しては、「電話やFAXの方が漏洩の危険性がある。特にFAXは万が一取られても蹤跡すら残らない。」と、アナログであることでのリスクについても触れた。

次ページは、「民間企業が広島にできること

民間企業が広島にできること

そして小泉は、「まずは民間企業により産業を起こし、その産業に自治体が持っているデータの活用を行うことで、相乗効果が生まれるのではないか。」と、これまでの市や県が中心となっていたテーマから、民間企業が中心となって起こしていくDXに話を展開した。

また広島県では、規制を解除したり特区を作るといったことにオープンであるため、企業が新しいことを始められる可能性があるとし、民間企業が広島で行えるDXについて話を聞いた。

まず名越氏は、「自社では電力とガスの基幹システムを構築しているが、自治体の水道基幹システムに課題があるという話を聞いた。自治体ごとにシステムがあり無駄が多く、共通のシステムにできないかと提案されたことがある。」と、水道基幹システムの共通化というニーズがあることを語った。

パネイルの代表取締役社長CEO 名越達彦氏

しかし水道は自由化がされていないという背景からこれまで取り組めなかったとし、「規制がなくなるなら民間企業が取り組むことが可能になる。」と語った。

一方今まで自由化されていなかったことから、民間企業にノウハウがないという問題点も指摘した。そのためサンドボックスなどで一定の事例を得た上で進められれば実現度が高いと述べた。

それに対し湯崎知事は、「広島県では水道事業を県一体にするという話し合いがなされている。そのためには公益化する必要があると考えており、民間企業の方にも協力していただきたい。」と、前向きな姿勢を示した。

またそのほかの事業についても、「必要なものがあればそのプラットフォームを提供している企業に交渉することもできる。また、地域的な制約を感じているなら市長に相談する、といった調整は可能だ。」とし、民間企業に対してオープンであることを示した。

そして青野氏は、「今後はベンチャー企業と付き合うことで新たな可能性を見いだせるのではないか。」と、ベンチャー企業の可能性について語った。

ベンチャー企業の強みは新しいものが安くできる点だ。

「少しリスクをとることになるとしても発想を変えることで、得られるものはあるのではないか。ある部分はベンチャーに頼むことで、新たなものが生まれる。」と、行政がベンチャーと組むことのメリットを話した。

それに対し小泉は、「デジタル発想でものづくりをするということは、必ずしもものづくりをしていた会社が強いというわけではない。」と、電動キックスクーターを例に、デジタル発想のものづくりについて話した。

電動キックスクーターは、昨今シェアバイクとしてアプリを通して自由に乗降でき、キャッシュレス決済ができるというソリューションとして世界で注目されている。

電動キックスクーターを作る企業というのは、元々バイクを作っていた企業が強いというわけではなく、使いたい人が使いたいときに使えるという利便性に着目した企業がサービスを展開しているということだ。

広島県はものを作れる企業を多く有しており、デジタル発想の企業と融合していくことが重要だとした。

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