自然言語処理は、日常の様々な場面で活用されている。例えば、スマートフォンやパソコンなどの予測変換だ。キーボードで打ち込んだ内容の自動変換や変換の提案をしてくれる機能である。
本記事では、自然言語処理の仕組みやメリットを解説し、自然言語処理を活用したソリューションを紹介する。
自然言語処理とは
自然言語処理(Natural Language Processing)は、人間が日常で使う言葉(自然言語)をコンピュータ上にて処理を行う技術のことである。コンピュータ上で使用するプログラミング言語との大きな違いとして、プログラミング言語は、コンピュータプログラムを記述するための言語である。
一方自然言語は、表現には大きな決まりがなく自由度が非常に高いが、解釈する側の柔軟性が必要となる。
自然言語処理の仕組み
自然言語処理では、「形態素解析」、「構文解析」、「意味解析」、「文脈解析」の4つの工程で、文章を処理する。
形態素解析
形態素解析は、文章を最小の単位(形態素)に分割した後、品詞などの情報を振り分ける作業である。例えば、「私は白い猫と犬を飼う」という文章の形態素解析を行う場合は、まず、最小の単位(形態素)に分割し、分割を行なった後に、品詞などの情報を振り分ける。
分割を行い品詞の情報をつけた文が、「私(名詞)は(助詞)白い(形容詞)猫(名詞)と(助詞)犬(名詞)を(助詞)飼う(動詞)」である。ここまでが、形態素解析の処理である。
構文解析
構文解析とは、単語同士の関係を推測する処理だ。すでに形態素解析が行われている「私は白い猫と犬を飼う」に対し、構文解析を行うと以下のようになる。
- 私は | 白い | 猫と犬 | を飼う
- 私は | 白い猫 | と | 犬 | を飼う
- 私は白い猫と | 犬を飼う
構文解析を行うことにより、係り受けとなるいくつかのパターンを推測する。人がこの文章を読んだ場合は、正しいものを瞬時に理解できるが、コンピュータは理解できない。なぜなら、人は文章を読む作業と同時に意味解析も行っているからであり、コンピュータは意味解析を現時点では行っていないからである。
意味解析
意味解析とは、文章の意味を解析する処理である。自然言語で使用する単語には、複数の意味がある場合があり、一つ一つの意味と文章中に出てくる他の単語とのつながりから、適切な候補を探し最終的に正しいものに絞り込む処理を行う。
・私は | 白い | 猫と犬 | を飼う
意味は、私は猫と犬を飼う。両方とも白色である。
・私は | 白い猫 | と | 犬 | を飼う
意味は、私は猫と犬を飼う。猫は白色だが犬の毛色は不明である。
・私は白い猫と | 犬を飼う
意味は、私と白い猫が犬を飼っている。猫は白色だが犬の毛色は不明である。
文章の中には、複数の解釈が存在する場合があり、その中から正しい解釈を選ぶのに必要な処理が意味解析である。意味解析では、自然言語の中で出てくる言葉の意味をコンピュータに理解させる。
文脈解析
文脈解析とは、文章に対し「形態素解析」と「意味解析」を行った結果から文と文の関係性を解析する処理である。
自然言語は「形態素解析」、「構文解析」、「意味解析」、「文脈解析」4つの処理を行うことで、機械言語へ変換され、データとして利用することが可能になる。
自然言語処理活用ソリューションを導入するメリット
近年、ネットショッピングなどが盛んになり、顧客とのやりとりをWEB上で行う機会も多くなっている。WEB上で行うメリットとして、より多くの顧客に対し製品のアピールができる。
しかし、顧客とのやり取りをWEB上で行っていても、実際に対応するのは、人であることに変わりない。したがって、人員を教育し配置する必要がある。
例えば、自然言語処理を活用したチャットボットを導入した場合は、顧客からの問い合わせや返品対応などを自動化することができ、人員を配置するために必要であった教育や人件費などのコストを削減できる。
その他、AIによる対応のため問い合わせ内容などを見逃すといったミスもなくなり、企業としての信頼を保つことができる。
自然言語処理活用ソリューションを導入するデメリット
自然言語処理活用ソリューションのデメリットとしては、自然言語処理が全ての自然言語に対応できるわけではないということだ。例えば、専門用語や微妙な言い回しの違いなどである。対応できない専門用語を対応させるために、チューニングと呼ばれる調整を行う必要がある。
自然言語処理活用ソリューション比較「チャットボット」
自然言語処理を活用したソリューションの一つとして、チャットボットを紹介していく。
チャットボットを導入することにより、顧客からの問い合わせ数の減少や24時間対応が可能になるため顧客満足度の向上、対応にかかる工数、人員の削減が行える。
「チャットボット」の比較ポイント
「チャットボット」には、各社様々な機能や仕様があるため、導入を検討する際には以下の事に注目する必要がある。
- 使用目的
- チャットボットと有人チャットとの切り替えが行えるか
- チューニングのしやすさ
- 無料トライアルの有無
- 費用
OfficeBot(ネオス)
「オフィスのムダをなくす」というコンセプトのOfficeBotは、特にバックオフィスに特化したAIチャットボットで社内問合せ対応負担軽減などに活用できる。日立ハイテク、TEIJIN、NTT data、第一三共ヘルスケア、稲葉製作所、島村楽器などに導入されている。
特徴
従来のチャットボットであれば、FAQ登録後フローチャートなど様々な設定をする必要があるため、立ち上げに数週間〜数ヶ月かかっていた。しかし、「OfficeBot」の独自AIなら登録されたQAをもとに大量のシナリオを自動生成・拡張できるので、管理者の作業負担を約90%削減できる。
そのため、スモールスタートですぐに始めることができ、運用しながら実践的FAQを順次拡張していくため、ユーザーが自己解決でき、問い合わせの大幅削減に繋がる。
用途
社内向け・社外向け
対応言語
日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語
対応環境
- LINE
- Microsoft Teams/365
- Slack
- Google Workspace
- WowTalk
- SMART Message
- Webブラウザ
導入期間
最短1ヶ月
無料トライアル
あり
費用(税込)
- 初期費用:50,000円〜
- 月額費用:100,000円〜
「COTOHA Chat & FAQ」(NTTコミュニケーションズ株式会社)
さらに「COTOHA Chat & FAQ」では、複数種類のUIを用意しており、チャットボット意外にもFAQ検索ボックスや問い合わせフォームにFAQをレコメンドすることができる。
「COTOHA Chat & FAQ」は、同社が作成した膨大なデータで学習済みのため、事前学習やチューニングの必要がなく、導入にかかる時間や手間を削減できる。
特長
「COTOHA Chat & FAQ」の特長は、以下の通りである。
- LINEなどにチャットボットを設置できる。
- 既存のWEBサイトにJavaScriptを追記するだけで利用できる。
- 約25ヶ国語に対応している。
- チャットボットの回答に画像や動画を利用できる。
導入事例
「COTOHA Chat & FAQ」をNTTコミュニケーションズに導入した事例として、同社では、WEBサイトのトップページにチャットボットを追加したところ、有人チャットによるチャット応対件数が約1/3に減少した。一方、問い合わせ件数は日曜祝日夜間の対応が可能になったことで、約4倍に増加した。
費用
利用料は月額195,000円~である。
「CLOVA Chatbot」(LINE株式会社)
「CLOVA Chatbot」は、無料で利用開始できるサービスである。チャットボットの構築を自社で行う必要があるが、学習やチューニングの作業では、サポートを受けることができる。
特長
「CLOVA Chatbot」の特長は、以下の通りである。
- 専門用語を必要としない管理画面
- チャットボットと有人チャットを切り替えることができる。
- 英語、韓国語、中国語など5ヶ国語に対応している。
- LINEなどにチャットボットを設置できる。
導入事例
「CLOVA Chatbot」をLINEサービスに導入した事例として、同社ではLINEヘルプデスクと呼ばれるカスタマーサポートのアカウントを用意し、LINE利用者の課題や問題を解決する支援をしてきた。
LINEヘルプデスクに「CLOVA Chatbot」を導入したことにより、24時間自動応対ができるようになり、顧客満足度の向上につながった。
費用
トライアルとして、月額0円〜利用できる。
Trial | Commercial | Enterprise | |
---|---|---|---|
月額基本料 | 無料 | ¥55,000- | 要問い合わせ |
期限 | 3ヶ月まで | 制限なし | 制限なし |
チャット回数 | 1,000 | 上限なし(従量課金) | 制限なし |
Q&A登録数 | 1,00 | 上限あり | 制限なし |
「KARAKURI chatbot」(カラクリ株式会社)
「KARAKURI chatbot」は、顧客対応を行う現場の担当者が操作することを前提として開発されているため、プログラミングなどの知識がなくても操作、運用できるように設計されている。
特長
「KARAKURI chatbot」の特徴は以下の通りである。
- 独自のUIで、直感的に操作できる。
- LINEやSlackなどにもチャットボットを設置できる。
- 質問内容の分析ができ、数値を可視化できる。
- 顧客との会話がログに残るため、そのデータを活用し追加学習できる。
- 共通の管理画面で使用できるFAQを自動生成する。
- チャットボットのUI上で、顧客が手続きを行える。
導入事例
「KARAKURI chatbot」を採用支援ツールを提供している企業に導入した事例として、同企業では、これまで顧客対応を主に電話で行っており、当初4名で対応を行っていたが、次第に対応に追われるようになり、8名にまで増員した。
「KARAKURI chatbot」を導入することにより、採用支援ツールの有料オプション問い合わせ数が7.5倍に、発注率は約3倍に増加し、8名に増えていた入電対応メンバーが4名に収束した。
費用
企業毎に見積もりを行うため、要お問い合わせ。
「AI Messenger Chatbot」(株式会社AI Shift)
株式会社AI Shiftでは、チャットボットの回答精度を向上させるために、独自技術の「AI Compass」を活用することで、改善効果の高い箇所をAIが判定しチューニングを行える。
「AI Compass」は、手動での対応が必要な問い合わせ内容の分析や回答の紐付けなどのチューニング作業をサポートする独自機能である。
特長
「AI Messenger Chatbot」の特徴は以下の通りである。
- 導入前にチャットボットの効果を無償で確認できる。
- チャットボットの回答に画像や動画を利用できる。
- シナリオ型、FAQ型のハイブリットである。
- LINEなどにチャットボットを設置できる。
導入事例
「AI Messenger Chatbot」を人材紹介を行っている企業に導入した事例として、同企業では、サービスの急拡大により問い合わせ数が急増し、応答率低下の懸念があった。有人対応のため、営業時間外の対応が難いという課題を抱えていた。
同企業が「AI Messenger Chatbot」を選んだ理由として、メンテナンス性が高く、自社で運用が可能であることを挙げた。
「AI Messenger Chatbot」を導入した結果、定型的な質問対応を行い、ユーザーの自己解決率の向上、問い合わせ数を削減でき、24時間対応が可能になったことにより利便性が向上した。
費用
要お問い合わせ。
「sAI Chat」(株式会社サイシード)
その他「sAI Chat」では、チャットボットを設置するWEBページのイメージに合わせて色やアイコンなどUIをカスタマイズできる。
特長
「sAI Chat」の特長は以下の通りである。
- チャットボットと有人チャットを柔軟に切り替えられる。
- デザインをサイトのテイストに合わせて変更できる。
- 顧客の問い合わせ入力時に、質問候補を表示できる。
- LINEなどにチャットボットを設置できる。
導入事例
「sAI Chat」を飲料メーカーに導入した事例として、同企業のWEBサイトの商品ページにチャットボットを追加した。追加したチャットボットは、企業のサイトイメージに合うようにカスタマイズされている。また、検索ボックスでの自由記述とシナリオ形式の質問の両方で問い合わせを行えるようになっているため、顧客が問い合わせたいと感じた内容をスムーズに質問できる。
費用
株式会社サイシードでは、「Starterプラン」、「Standardプラン」、「DXプラン」が用意されている。費用については要お問い合わせ。
自然言語処理活用ソリューション比較「テキストマイニング」
「テキストマイニング」とは、大量のテキストデータから企業にとって有益な情報を抽出することだ。具体的には、文章を単語や文節で区切り、出現頻度や相関、傾向、時系列などを解析する。
「テキストマイニング」の利用イメージは、以下の通りである。
- アンケート調査を行ったデータの分析
- 顧客からの問い合わせデータの分析
- 社内の日報や議事録などの分析
- SNSの書き込み情報の分析
「テキストマイニング」の比較ポイント
「テキストマイニング」の導入には、以下の事に注目する必要がある。
- SNSへの対応
- 注目すべきデータの自動抽出
- 費用
「Knowledge Probe 20」(株式会社FRONTEO)
「Knowledge Probe 20」は、営業の日報や顧客からの問い合わせ、口コミ、SNSなどのコミュケーションにおけるテキストデータを分析し、顕在化していない予兆を検知する。導入時に、課題・目的に応じた教師データを設定することで、チャンスやリスクを仕分け・検出することができる。
「Knowledge Probe 20」に搭載されている「KIBIT G2」は元々、起訴に必要となる証拠発見をサポートするために開発された技術である。起訴における証拠発見では、限られた時間の中で大量の資料の中から証拠となる文章を見つけ出す必要がある。そこで「KIBIT」は、「自然言語処理」と「機械学習」を活用することにより、法律の専門家の経験や勘に基づく「暗黙知」を習得し、大量のテキストデータから証拠の抽出を行えるようになった。
特長
「Knowledge Probe 20」の特長は以下の通りである。
- 同社独自のアルゴリズムを実装しており、少ないテキストデータからでも求めるデータを抽出できる。
- メールや報告書、日報などから、人間の意図する微妙なニュアンスの違いを見分けられる。
- 導入前の課題整理から導入後の運用までのサポートが受けられる。
- 文章中の重要度の高い箇所にハイライトで表示
費用
要お問い合わせ。
「TRAINA テキストマイニング」(株式会社野村総合研究所)
TRAINAシリーズは、「TRAINA テキストマイニング」の他にFAQソリューションの「TRAINA FAQナレッジ」、音声認識の「TRAINA VOICEダイジェスト」のソリューションの総称である。
TRAINAシリーズは組み合わせての使用や各々単独での導入も可能である。
特長
「TRAINA テキストマイニング」の特長は以下の通りである。
- 文の意味を解析し感情解析ができる。
- データの表示画面では、自動で注目すべきデータに色付けが施される。
- ExcelやPowerPointなどへデータを出力できる。
- 設定したキーワードが登場した時に、アラートする機能がある。
- 掲示板サイトやTwitterの分析を行える。
費用
要お問い合わせ。
「Text Voice」(マイボイスコム株式会社)
「Text Voice」は、クラウド上にテキストデータをアップロードするだけでテキストデータの分析を行い、キーワードの出現頻度と共に、どのキーワードが一緒に使われているのかを数値化し表示する。
特長
「Text Voice」の特長は以下の通りである。
- 約3000文字のテキストデータを1分で分析できる。
- 無料でトライアル利用ができる。
- TwitterやInstagramの投稿内容やハッシュタグの分析が可能である。
- 言葉の出現頻度、属性(性別、年代、購買頻度など)を数値化し比較分析できる。
費用
TextVoice | TextVoice+SNSデータ取得オプション | |
---|---|---|
初期費用 | 20万円 | 20万円 |
利用料/月 | 10万円 | 13万円 |
「見える化エンジン」(株式会社プラスアルファ・コンサルティング)
「見える化エンジン」では、データ収集、分析、共有・改善の作業を自動化できるテキスト分析ツールである。別途オプションに加入する必要があるが、プラスアルファ・コンサルティングが保有する約1,602万人のモニターに対して簡易的なアンケートを行うことができる。
特長
「見える化エンジン」の特長は以下の通りである。
- テキストデータから感情を分析できる。
- TwitterやInstagramの投稿内容やハッシュタグの分析が可能である。
- テキストデータのインポートを自動で行う。
- キーワードの発生頻度や件数、定型文を数値化し表示する。
- 導入に伴う支援を受けることができる。
費用
要お問い合わせ。
「Magic Insight for WEX」(株式会社イーネットソリューションズ)
IBM Watson Explorerとは、企業内のメール、文書、画像、動画、音声などの非構造化データを扱う統合プラットフォームである。
特長
「Magic Insight for WEX」の特長は以下の通りである。
- テキストデータの中から相対的な傾向を分析できる。
- 17ヶ国語に対応している。
- 導入に伴う支援を受けることができる。
- キーワードの発生頻度や件数、定型文を数値化し表示する。
- Twitterの投稿内容やハッシュタグの分析が可能である。
費用
サービス名 | 容量 | 初期費用 | 月額費用 |
---|---|---|---|
高機能テキストマイニング ・HDD追加5GBごとに月額費用50,000円/初期費用50,000円 |
5GB | 25万円 | 25万円 |
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にAIの分野に興味あり。