一般的に、家庭用電化製品や住宅設備などの量産製品については、消耗や修理による交換など、その製品機能の維持のために補修用部品を在庫として用意し、市場に即時供給することが求められている。
三菱電機株式会社では、これまで部品ごとの先行きの需要を直近12カ月の出荷数量の平均と季節変動要因を基に、各月の需要増減を指数化したパラメータを組み合わせて予測していた。一方、この手法では、過去の出荷数量実績に左右されるため、その過去実績に傾向変動が強い場合については予測精度が落ち、その予測誤差から在庫の過剰や不足といった課題があった。
このほど三菱電機は、同社AI技術「Maisart」を用いて補修用部品などの需要を予測する技術を開発した。
同技術は、家電製品などの補修用部品のPSI管理(※1)において、AIを活用することにより、部品ごとに行っている需要予測精度を従来比で25.6%改善することが可能となった。
また、既存部品の出荷数量実績からAIがX-Means法(※2)をもとにクラスタリング(※3)することで、クラスタ数の最適化および特徴的な傾向を最大で20パターンまでに分類することができる。部品の出荷数量実績からAIが自動で事前分類したクラスタと比較し、相関関係が高いクラスタを認識することで、先々の出荷数量をより高精度に予測する。さらに、AIが他の部品の出荷量実績との関連度も併せて提示することにより、現場の予測担当者の意思決定を支援する。
予め、予測対象部品より販売年月の長い既存部品の出荷実績を教師データとして傾向成分が類似する複数のクラスタに分類し、クラスタごとに傾向成分を集約しておく。そして、対象部品の需要予測を行う際、その部品がどのクラスタの傾向成分と近似しているかをAIが自動選定し、その傾向成分と部品の季節周期成分を結合して先々の需要を予測する手法を開発した。
従来、AIが出した結果はそれに至る根拠の不透明さ(ブラックボックス)から、利用者がどれくらい信頼して良いか分からず、意思決定に繋げることが困難だった。今回開発した手法は、予測結果とともに、どの部品とどの程度、需要傾向が似ていたかという根拠を提示することにより、利用者が納得感をもってAIを活用できるようになる。
同技術を家庭用電化製品・住宅設備における補修用部品の生産計画立案業務に適用することで、在庫過剰・不足を防ぎ、在庫管理の最適化や部品供給の円滑化を実現し、保守サービスの品質向上に貢献する。
※1 PSI管理:生産(Production)販売(Sales)在庫(Inventory)を計画策定し、実行管理する業務。
※2 X-Means法:通常クラスタリングは分析者がクラスタ数を決定する必要があるが、X-Means法は自動的に適切なクラスタ数を決定可能。
※3 クラスタリング:機械学習における教師無し学習の1つのアルゴリズムで、対象データを形や性質などさまざまな傾向を元に分類すること。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。