昨今、AIを用いて面談時の回答内容から被面談者の性格特性の評価を支援する技術の開発が進んでいるが、従来の技術では、言語情報を分析するために質問内容と回答内容を紐づけた学習が必須であり、学術的な性格特性の理論に基づく知見と関連付けた評価が困難だった。
そこで株式会社日立製作所(以下、日立)は、国立大学法人東京大学との共同研究により、面談時の表情や身振り、発話のトーンなどの非言語情報を用いて性格特性を推定するAI技術を開発した。
この技術は、AIの説明性や透明性など、AI活用における倫理的な側面を考慮しつつ、心理学理論に基づくビッグファイブと呼ばれる5つの性格特性を推定するもので、人財と組織や業務のマッチングを支援する目的で開発された。
具体的には、東京大学の唐沢かおり教授の心理学的知見と日立の対話行動分析技術を組み合わせ、心理学的に確立された性格特性の5因子モデルに基づき、非言語情報で性格特性を推定する。
さらに、AIの推定過程の説明性・透明性を確保するため、機械学習を使用せず、ルールベースで行動の特徴量を抽出・合成し、性格特性を推定するモデルを構築した。
なお、この技術を用いて、評価に同意した98名の面談時の動画・音声データをもとに推定したビッグファイブの各性格特性が、アンケート方式で取得した各性格特性と0.3以上の相関の強さを示し、心理学的尺度において統計的に有意な推定が可能であることが確認された。
これにより、言語情報を使用せず、面談時の非言語情報を用いて、心理学的に確立されたモデルに基づいた性格特性を推定できる可能性を示したとしている。
今後日立は、さまざまな領域の顧客やパートナーと連携し、同技術の適用範囲の拡大と推定精度向上を進める計画だ。
また、日立のAI倫理原則に従いプライバシー保護、公平性、説明性や透明性の確保などに努め、面談者・被面談者双方の理解と同意を得た上で使用できるように検討するとのことだ。
なお、この成果の一部は、2024年9月4日~9月6日に広島で開催された「第23回情報科学技術フォーラム」で発表された。
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