サイトアイコン IoTNEWS AI+

予算会議にAIを持ち込んだらどうなるか?Claudeのカスタムビジュアル機能を検証

予算編成やキャンペーン計画の策定を行う際は、常に不確実性と戦っています。

「市場が好調な場合の楽観シナリオ」
「現状維持の標準シナリオ」
「リスクを織り込んだ悲観シナリオ」

こうした複数のパターンをExcelで作成し、比較・検証する作業は、ビジネスパーソンにとって日常的な光景です。

しかし、従来のExcelベースの作業では、数値を1箇所変えるたびにグラフの体裁を整え直す必要があり、思考が「分析」ではなく「作業」に奪われてしまいます。

また、複雑な表や静止したグラフでは、条件の変化が全体にどう波及するかが一目で分かりにくく、会議の場でのスピーディーな合意形成を妨げる可能性があります。

これまでは、「もしここで予算を10%削ったら、最終的な目標達成にどう響くのか?」といった問いに対し、「一度持ち帰って再計算します」と答え、貴重な意思決定のチャンスを数日後に先送りするしかありませんでした。

この「Excelの壁」を突破する鍵として注目したいのが、Claudeの「カスタムビジュアル(Custom visuals)」機能です。

本記事では、この機能を活用し、チャット上で数値を入力・変更することで、瞬時に視覚的なシナリオ比較や目標の逆算ができるかを実際にテストします。

使用するAIと機能について

まずは、今回の検証で活用するAI環境と、その中核となる機能について説明します。

使用AI・環境:ClaudeとSonnet 4.6モデル

今回の検証には、Anthropic社が提供する対話型AI「Claude」を使用します。

Claudeでは、用途に合わせて様々なモデルが提供されていますが、今回は推論の精度と応答速度のバランスに優れた最新モデル「Claude Sonnet 4.6」を採用しました。

Claude Sonnet 4.6は、これまでで最も高性能なSonnetモデルであり、コーディング、PCの画面操作(コンピューターユース)、長文脈の推論、ナレッジワークといったあらゆるスキルが全面的にアップグレードされています。

最大100万トークンという膨大な情報(数十本の論文や分厚い契約書など)を一度に読み込み、効果的に推論する高度な知能を備えています。

そして、この推論能力はテキストやコードの処理にとどまらず、「視覚的な出力」においても威力を発揮します。

Anthropicが発表している初期ユーザーからのフィードバックによると、以前のモデルと比較して、レイアウトやアニメーション、デザインセンスが向上していると評価されています。

使用機能:カスタムビジュアル(Custom visuals)

そして、今回の検証の核となるのが、Claude上で利用できる「カスタムビジュアル(Custom visuals)」という機能です。

従来のAIが「文章や静止画で回答する」のに対し、この機能はチャット画面内に直接、ユーザーが操作可能なインタラクティブな図解を構築します。

具体的には、以下のような体験を提供します。

この機能により、自然言語の指示だけで専用の分析インターフェースがその場で生成されるという、新しいワークフローの実現を目指します。

検証ステップ1:予算シナリオの並行比較

このステップでは、CMOとCFOが同席する予算編成会議において、マーケティングマネージャーとして両者の主張を立てつつ、それぞれの選択に伴う「リスク」を中立的な立場で見せることを想定して、Claudeがいかに短時間で状況を構造化できるかを検証します。

多くの予算編成会議では、組織図上の役割に起因する避けられない対立が発生します。

例えば、投資を拡大し、市場シェアを最大化させるための「強気な予算案」を求める「成長(売上)を追求する部門」と、 不確実性に備え、キャッシュフローを維持するための「保守的な削減案」を求める「財務(コスト)を管理する部門」といった対立です。

こうした、いわば「アクセルとブレーキ」が同時に踏まれるような状況において、実務担当者に求められるのは、どちらかの主張を肯定することではありません。

それぞれの選択が全体構造にどのような変化をもたらし、どこにリスクを転嫁しているのかを「透明性の高いデータ」として提示することです。

今回の検証では、こうした対立する主張を並列化し、それぞれのリスクをAIに客観的に診断させることで、議論を感情論から戦略論へとシフトさせられるかをテストします。

具体的には、「予算を積み増して広告を打つべきだ」と主張するCMOと、不透明な経済状況を懸念し「まずは30%のコストカット案を出せ」と言うCFOがいると想定して、以下のプロンプトをClaudeに打ちました。

[プロンプト]

私はITサービスのマーケティングマネージャーです。現在、下半期のキャンペーン予算編成会議に臨んでいます。以下の条件をもとに、「標準」「楽観(強気)」「悲観(保守的)」の3つのシナリオを並行比較できるカスタムビジュアルを作成してください。
【基本条件】
総予算:1,000万円 / 内訳:広告費600万円、制作費200万円、ツール・運用費200万円
【各シナリオの定義】
標準:上記の基本条件通り
楽観:予算を20%増額。増加分はすべて広告費に充てる
悲観:予算を30%削減。人件費(運用費)は維持し、広告費と制作費を均等に削る
【実装してほしい機能】
表示切替:金額(円)と構成比(%)をトグルスイッチで瞬時に切り替えられること
リスク診断:各シナリオのグラフをクリックすると、「このプランの最大の懸念点」を1行で表示すること

検証ポイント①:3つのシナリオの自動生成

するとClaudeは、ブラウザ上で動作するインタラクティブなHTMLビジュアルを生成しました。

画面は3列のカードで構成され、左から「標準」「楽観(UPSIDE +20%)」「悲観(DOWNSIDE -30%)」の順に並んでいます。

生成された3つのシナリオ

各カードの上部には色分けされたアクセントライン(標準:青、楽観:緑、悲観:赤)が引かれており、ひと目でシナリオの位置づけが分かるデザインです。

カード内部には、ドーナツチャートと内訳バーが組み合わさっており、3つの費目(広告費・制作費・ツール/運用費)がそれぞれ異なる色で示されています。数値の正確さも確認できました。

悲観シナリオでは「30%削減を広告費と制作費で均等に負担する」という条件を正確に解釈し、それぞれ150万円ずつ削減された数値を自動計算していました。

検証ポイント②:表示の切り替え(金額 ⇄ 構成比)

ビジュアルの上部には「金額(円)/構成比(%)」を切り替えるトグルスイッチが配置されています。これをクリックすると、各カードの内訳バーの数値表示がリアルタイムで切り替わります。

構成比(%)に切り替えた画面

例えば標準シナリオでは、広告費の表示が「600万円」から「60.0%」に即座に変化します。ドーナツチャートのツールチップも連動して切り替わるため、比率で議論したい場面と金額の絶対値で確認したい場面を、ページを切り替えることなく行き来できます。

これにより、実際の会議中で「楽観プランで広告費の比率が何%になるか」という問いが出た際にも、トグルを一度押すだけで「66.7%」という数値をその場で示すことができます。

検証ポイント③:プレッシャーポイントの特定(クリックで1行表示)

各シナリオカードをクリックすると、そのプランの「最大の懸念点」を1行のメッセージとして表示する機能です。Claudeはシナリオごとに以下のようなリスク診断を生成しました。

各シナリオの懸念点

この診断はあらかじめ人間がロジックを定義したものではなく、Claudeがシナリオの条件と数値構造を解釈して自動生成したものです。

例えば悲観シナリオの「制作費が75%削減」という計算(200万→50万)は、入力した「均等削減」という条件から導き出されています。

なお、カードをもう一度クリックすると診断が非表示になるため、会議の進行に合わせて「見せる・隠す」をコントロールできます。

このように、1回のプロンプト入力で、3シナリオ比較・トグル切り替え・リスク診断の3機能すべてが動作する状態で出力されました。

検証ステップ2:キャンペーン目標とリソースの逆算(獲得ピラミッド)

ステップ1で予算配分の方向性が定まると、次に議論の焦点は「そのリソースで目標(売上・寄付)を達成できるのか」という実行可能性へと移ります。

ここでは、目標数値を動かすことで現場のリソース負荷がどう変化するかを可視化する「獲得ピラミッド(ファネル)図」の生成を試みます。

検証のシチュエーションとしては、会議の終盤、経営層から「もう一段階上の目標を目指せないか」という打診があったとします。

例えば、「目標3,000万円」を「5,000万円」に引き上げた際、単に数字を増やすだけでなく、それを支える「リード(見込み客)獲得の現場」で何が起きるのかを、その場で関係者全員に理解させる必要があります。

そこで今回は、以下のプロンプトをClaudeに投げました。

次に、このキャンペーンで達成すべき「目標金額」から、必要なリソースを逆算する「獲得ピラミッド(ファネル)図」をカスタムビジュアルで作成してください。
【検証したいメカニズム】
ピラミッドの階層: 上から「大口(目標の50%を占める)」「中口(30%)」「小口(20%)」の3層構造にする。
インタラクティブ操作: 画面上の「目標金額」のスライダー(または入力欄)を動かすと、各層で必要な「獲得件数」と、そのために必要な「リード(見込み客)数」がリアルタイムに再計算されること。
前提条件の反映: リードからの成約率(CVR)を、大口:5%、中口:10%、小口:20%と仮定して計算に組み込んでください。
【狙い】 会議中に「目標をあと1,000万上げろ」と言われた際、この図を操作して「そのためにはリード数がこれだけ不足します」と、即座に根拠を示したい。

検証ポイント①:獲得ピラミッド図の生成

プロンプトを受け取ったClaudeは、画面中央に逆三角形のピラミッド図、左右の両サイドパネルに各層の詳細データを表示しました。

生成された獲得ピラミッド図

ピラミッドは上から「大口」「中口」「小口」の3層構造になっており、各層の横幅がその層の必要リード数に比例する設計になっています。

デフォルトの目標3,000万円では次の計算結果が即座に描画されました。

売上貢献 単価 必要獲得件数 CVR 必要リード数
大口 1,500万円 500万円 3件 5% 60件
中口 900万円 100万円 9件 10% 90件
小口 600万円 20万円 30件 20% 150件
合計 3,000万円 42件 300件

小口は1件あたりの単価が低くCVRも20%どまりのため、150件という最大のリード数が必要になります。

この構造がピラミッドの形状にそのまま反映されており、「小口の裾野が圧倒的に広い」という現場の感覚を視覚的に確認できた点が印象的でした。

各層のサイドパネルには「リード→CVR→成約件数→売上」というファネルフローも表示されており、どの段階でどれだけロスが発生しているかも一目で把握できます。

検証ポイント②:スライダーによるリアルタイム再計算

画面上部のスライダーを操作すると、ピラミッドの形状と全数値がリアルタイムで変化します。

目標を3,000万円から5,000万円に引き上げると、合計必要リード数は300件から500件へと跳ね上がります。

この変化はピラミッドの裾野が広がるアニメーションで視覚的にも確認でき、「目標を上げた際の現場負荷」を数字と形状の両方で同時に伝えることができます。

目標を3,000万円から5,000万円に引き上げた際の画面

また、画面下部には「前提条件(編集可能)」として、各層の平均単価を入力フィールドで変更できる機能も備わっています。

例えば、大口の平均単価を500万円から300万円に引き下げると、同じ売上目標を達成するために必要な大口の獲得件数が5件に増え、リード数も100件に増加します。

大口の平均単価を500万円から300万円に引き下げると、同じ売上目標を達成するために必要な大口の獲得件数が5件に増え、リード数も100件に増加している。

これにより、単価交渉や商品ラインナップ変更が現場工数に与えるインパクトを、その場でシミュレーションできます。

追加検証①:「+1,000万でシミュ」ボタン

もしも、会議中に「目標をあと1,000万上げろ」という要求が出た場合に、即答するための機能として「+1,000万でシミュ」ボタンも検証しました。

目標3,000万円の状態でこのボタンを押すと、各層のカードに赤字のデルタ値が出現します。

「+1,000万でシミュ」ボタンを押した際の画面。大口:「+1,000万時:さらに +20 リード必要」 中口:「+1,000万時:さらに +30 リード必要」 小口:「+1,000万時:さらに +50 リード必要」 ピラミッド下部に総計:「+1,000万円追加すると、必要リード数はさらに+100件増加します(300件 → 400件)」

これにより、現在の目標値は変えずに、「もし1,000万増えたら」という差分だけを赤字のデルタとして各カードに重ねて表示することができ、元の数値と追加後の数値を比較することができます。

追加検証②:リスク分散プランへの切り替え(CFOシナリオ)

次に、会議の途中で「CFOから大口依存のリスクを指摘された」という追加シナリオを設定し、新たなプロンプトをClaudeに送りました。

プロンプトは、「大口50%/中口30%/小口20%という構成を、大口20%/中口50%/小口30%のリスク分散プランに切り替えるボタンを追加し、必要リード数の変化を比較できるようにしてほしい」というものです。

Claudeはこのプロンプトをもとに既存のビジュアルを拡張し、「リスク分散プランへ」ボタンを追加しました。ボタンを押すと画面全体が切り替わり、以下の比較パネルがリアルタイムで表示されます。

集中プラン(リード数) 分散プラン(リード数) 差分
大口 60件 40件 ▼ −20件
中口 90件 150件 ▲ +60件
小口 150件 225件 ▲ +75件
合計 300件 415件 ▲ +115件(+38%)

リスク分散プランの画面

この結果が示す重要な示唆は、「リスク分散は大口への依存を下げる一方で、現場のリード獲得総コストを約4割増大させる」という点です。

大口は1件で大きな売上を生むぶん、必要なリード数が少なくて済みます。中口・小口は1件あたりの単価が低いため、同じ売上を達成するために多くのリードが必要になります。

CFOへの応答として「大口依存リスクは下げられますが、現場の獲得工数が38%増大します。追加リソースの手当てはいかがでしょうか」という議論を、このビジュアルを操作しながらデータで進めることが可能となります。

まとめ

このように、ステップ1の予算シナリオ比較と組み合わせることで、「どのシナリオの予算で」「どの獲得構成で」「目標をいくらに設定すれば現場が回るか」という3軸の議論を、同一セッション内で完結させることができました。

今回の検証により、Excelで別ファイルを切り替えながら行う作業が、チャット上での連続したプロンプト入力と、インタラクティブな操作で代替できることを確認することができました。

モバイルバージョンを終了