ドイツベルリンで開催されているIFA2018。なかなか進まないスマートホームの分野だが、今回は、「家電製品におけるイノベーションは起きるのか?」というテーマをもって展示を取材した。
よく、国際展示会というと、ラスベガスで毎年1月に開催されるCESを思い浮かべる人も多いと思うが、CESのようなお祭り感があるというより、IFAは落ち着いた商談会の様相を呈している。
つまり、派手なものが展示されているというより、まさにこれから売ろうとしているものの展示が多いのだ。
音声応答エンジンとAIの活用
Amazon AlexaやGoogle Assistantに振り回されていた感のあった昨年のIFA。
流石に2年連続alexa, google assistantと言っているのはほとんどなく、「無理に使いどころを探すような」ことは多くの企業においてなくなってきていると言える。
AIに関しても、何がAIなのかわからないが、適当にAIと名付けられているプロダクトは、ほとんど姿を消したといえる。
家ナカ家電における、テクノロジーの活用の今
例えば、家電の主役というと長らくテレビであった。スマートフォンの登場以来、その地位が怪しくなっているといわれているが、実は日本以外の先進国では大型テレビを中心にセールスが伸びている。
グローバルではネットワーク化も進んでいて、いわゆるインターネットテレビも登場して久しい。
昨年は、リモコンや音声応答スピーカーを使った音声ありきの操作を売りにする展示が多かったテレビだったが、今年は、有機EL(OLED)テレビが主戦場となっていた。
ただ、単純に有機ELといっても、技術的には以前から登場しているものなので、「QLED(量子ドットという技術を使ったLED)」といったり「ULED(ウルトラカラー画質のLED)」と言ったりして差別化に苦心しているようであった。
こういった性能の向上をうたうのは、展示会では当たり前のことだが、ほかの流れとしては多くのメーカーでNetflix対応、Amazon Prime Video対応・・・と、様々な配信サービスへの対応をうたったものが多かった。
つまり、結局のところテレビは「どんなコンテツを見るのか」が重要なのであって、性能がよいことだけを追いかけても消費者はついてこないことがわかる。
スピーカーやヘッドセットについても、無意味な音声応答対応はなくなり、Spotify対応などインターネットサービスとの連携を前提としたデバイスが登場し出している。
そんな中、ソニーは、動画制作時点でNetflixと手を組み映像制作をしているという展示を行っていた。つまり、いわゆるネット配信では、モニター性能の向上に対して適切な映像を流すことができないことから、制作段階から関わろうという試みなのだ。
テレビ以外の、この流れについては、フィリップスの展示が顕著だ。
フィリップスの展示エリアの垂れ幕は、すべて「xxx better」なのだ。(xxxには、アイロンやめざめなどが入る)
テクノロジーの恩恵は、人がもともとやりたいこととしてこれまでも生まれ、発展してきた、これまでもあるテーマ(xxxの部分)を「ベターにする」ということなのだ。
シーメンスのIHレンジでは、最近流行りの鍋をいろんなところに置けるというタイプのものをさらに超えて、レンジのどこにおいてもセンサーが反応し、その場所を温めるという製品を展示していた。
鍋のサイズが家庭によってまちまちなことを考えると、これはとても便利だといえる。
他の企業も、場所を選ばずおけるという製品を出していたが、「どこでもよい」というわけではなかった。
Bekoでは、レンジフードがレンジの温度を感知して、温度調節を行うという展示を行っていた。
他にも、冷蔵庫の中で肉や魚、生鮮野菜のセンシング、温度管理を行い、なるべく長持ちするように自動管理するものや、洗濯機で洗濯が終わったらそれをスマートフォンに通知するものなど、非常に実用的なアイデアがテクノロジーによって実現されているものが増えていた。
イノベーティブな家電は登場しないのか
では、今後イノベーティブな家電は出てこないのだろうか。
別の記事で解説するが、AIやロボティクスの技術を部分的に取り入れた製品は、これまでできなかったことを可能にするだろう。
今回スタートアップが展示をするエリアである、IFA NEXTのエリアではそういったものも見かけた。
今後、我々の生活を支える様々な道具が、ヒューマンセントリックに考えられたテクノロジー利用によって、快適な生活を実現してくれるとともに、全く新しい考え方のプロダクトが登場してくる。
IFA2018レポート
第一回:家電のイノベーションは起きるか
第二回:見えないところで起きている、家電の「Co-innovation」
第三回:ロボティクスとAIを活用したプロダクト
第四回:踊り場にきた、ウエアラブル関連プロダクト
第五回:IFA NEXTでみたスタートアップ製品
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。