日本政府が提唱する「超スマート社会(※1)」の実現策であるSociety 5.0(※2)では、デジタル技術やデータを活用した、新たなユーザーメリットの創出や利便性の向上を目指しており、企業間で情報を連携し、異業種データの相互補完やサービスの連携を行う基盤の整備が求められている。
異業種間の情報共有では、特定の企業が一括して情報を管理するのではなく、参加企業が公平、対等な立場で、情報を分散化して持ち合うことが必要となる。また、厳格な管理を必要とする契約情報を企業間で共有する際には、顧客自ら許諾した企業のみが、個人に紐づくデータにアクセスできるようにする必要がある。
このような中、積水ハウス株式会社、KDDI株式会社および株式会社日立製作所(以下、日立)は、企業が持つ独自情報を安全性の高い環境で共有し、異業種データの掛け合わせによる新サービスの創出を実現する企業間情報連携基盤の実現に向け、協創を開始する。取り組みの第1弾として、不動産賃貸物件の内覧から入居までに生じる入居者の各種手続きを簡略化し、利便性を向上する共同検証を2019年4月から開始する。
これまでに、積水ハウスはブロックチェーン技術を活用した不動産情報管理システムの構築を、KDDIと日立はブロックチェーンと生体ID認証を用いた異業種間アライアンスの実証を行ってきた。ブロックチェーンは、その改ざん耐性や高可用性といった特性から、複数の企業で情報を安全に共有する点で適している。
今回の共同検証では、ブロックチェーン技術であるイーサリアム・ブロックチェーン「Quorum」や日立の「Lumada」を用いて企業間の中立的な情報連携基盤を構築し、積水ハウスとKDDIそれぞれが持つ本人確認情報を、本人の同意のもとセキュアに連携する(※3)。本人確認情報の相互補完により、賃貸物件の内覧申込みの際に、現住所や電話番号の顧客による入力を簡略化することができる。
また、固定通信や電気、ガスといった住宅に関わる複数契約の申込みの一括化や、住所変更など煩雑な各種手続きを簡略化するのみならず、カスタマイズされたサービスをワンストップで提供する一連の流れを検討するなど、ビジネスモデルやサービス性についても検証する。
今後、3社は、企業間情報連携基盤の商用化を目指して協創を進め、金融分野や自治体分野など広く参加企業、団体も募ってコンソーシアムを形成し、顧客および企業の双方に有益なエコシステムの構築を目指す。
企業がそれぞれ保持する独自情報を、顧客の同意のもとで同基盤上に持ち寄り共有することで、データの掛け合わせによる新たなユーザーメリットの創出や、一括契約や手続きが可能な業種の拡大といった利便性の向上に繋げる。また、企業間情報連携基盤では、顧客自身が直接アクセスし、参加企業ごとに開示する内容や範囲を指定する機能を実装し、必要な本人確認を最小限にとどめ、付加価値の高いサービスを提供することが可能な環境を提供するとした。
※1 必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会のさまざまなニーズにきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会。
※2 日本政府が掲げる新たな社会像であり、その実現に向けた取り組みのこと。AIやIoT、ロボットなどの革新的な科学技術を用いて、社会のさまざまなデータを活用することで、経済の発展と社会課題の解決を両立し、人間中心の豊かな社会をめざす。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の新たな社会として位置づけられている。
※3 今回の共同検証で取り扱う本人確認情報は、氏名や電話番号など。実際の顧客の情報ではなく、検証用に用意したもの。
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