株式会社トライアルカンパニー(以下、トライアル)、サントリー酒類株式会社、日本ハム株式会社、株式会社日本アクセス、株式会社ムロオ、 フクシマガリレイ株式会社は2020年2月25日、トライアルリテールAIプラットフォームプロジェクト「REAIL(リアイル)」戦略発表会を行った。
発表会ではトライアル(株式会社Retail AI)が各社と合同でリテールAIを活用したプラットフォームを作成するプロジェクトの方針やビジョン、関東におけるトライアルのAI技術旗檻店となるトライアル長沼店(千葉。2020年4月24日リニューアルオープン予定)で導入されるソリューションが紹介された。
長沼店で導入予定のレジカート
タッチパネルには顧客のこれまでの買い物傾向から判断された最適なクーポンや割引情報が表示される。
また、レジカートには重量センサーが搭載されており、カート内にバーコードを読み取っていない商品が入れられた場合に画面にアナウンスが表示される。
以前までのモデルでは、カートに入れる前にバーコードを読み取るのを忘れてしまうという声が多く上がっていたため、このような機能を追加したという。
フクシマガリレイの棚の充足状況を把握するAIカメラ
フクシマガリレイが提供するAIカメラ付き商品棚では、商品の充足率を測定している。サンプル映像では2分間隔で商品の増減グラフが更新されていた。
このカメラでは電子棚札についているコードを読み取ることで商品を把握している。そのため、商品入れ替えが行われても棚札から商品を自動で識別することが可能となっている。
また、このような位置からのカメラでの商品数把握は、カメラで撮影できる範囲に限られるため、棚の奥まで商品があるもの、隠れてしまう部分までの商品数を把握するということは難しいが、手前の商品がなくなっているかどうかを検知するには適している。
棚前行動分析からビール販売シェアアップへ繋げたサントリー
同プロジェクトに参画しているサントリーでは、トライアルと共同で取り組んでいるリテールAI施策が、トライアルにおける同社ビール販売シェア向上につながったという。
施策では、サントリーの酒類売り場へ設置したカメラで顧客ごとの売り場へ来てから商品を手に取って売り場から離れるまでの時間計測、手に取った商品数や動線を測定することで顧客行動を可視化・分析を行った。
カメラで測定を行うことのメリットは、その顧客の棚前行動を始めから終わりまで見ることが出来るという点にある。
動画データは顧客は商品棚のどの部分を見ているのか、顔の向きや手の動きから比べられている商品や手に取って戻している商品などを識別し、実際に購入に至るまでを一連の動作として計測することで、棚割りやPOP、パッケージが最適かどうかを分析することに活用出来る。
リテールAIを新商品の開発検証、需要予測で活用する日本ハムと日本アクセス
同社ではここ10年で新たなヒット商品が生まれていない・売れ筋商品に変化がないことが課題となっていた。
縮小していく見込みのマーケットで消費者のニーズを捉えた商品開発、売り場構築をしていく必要があると判断した同社は、トライアルとの協業でカメラを設置した売り場での顧客行動分析(どの商品と一緒に購入しているか、どの商品と迷っていたか、など)から、新商品が顧客のニーズに合っているかを検証していく。また同社では、需要予測をメーカーから流通まで共有することでチャンスロスの低減に取り組んでいるという。
チャンスロスとは、棚に商品が並んでいなかったこと等から売上につながるはずだった機会を逃してしまうことを指す。食品メーカーでは、流通側の発注に100%応えるためには食品ロス(廃棄)を出してしまうという課題があった。
そこでトライアルとの取り組みでは、一部店舗での実験としてAIを活用した2週間前の需要予測で製造を行い、さらに前日に在庫状況などを踏まえた直前予測で発注数を決め店舗に商品を送るという手法を取ることで、需要に合わせた製造計画を行うことを可能としたという。
また、低温商品(チルドやフローズン商品)を扱う伊藤忠グループの食品卸である、日本アクセスでも廃棄ロスとチャンスロスの分析を行っている。
日本アクセスが廃棄ロスとチャンスロスの関係を分析したところ、流通の発注担当が廃棄を減らそうとするあまり欠品が発生していることがわかったという。
そこで同社はAIカメラによる欠品状態の把握を行うことでどのくらいのチャンスロスが起きているのかを定量化し、人流データから通過人数辺りの購入数予測を立てることでチャンスロス改善へ取り組んでいくのだ。
同戦略発表会に参列している企業を見ると、食品・飲料メーカー、卸、流通、ショーケースメーカーと、商品の製造から販売までのサプライチェーンに属する様々なレイヤーの企業が揃っている。
戦略発表会の中で何度も出てきたのは、「連携」や「データ共有」という言葉だ。
販売している現場でデータを取り、分析し、需要予測を立て製造を行う。出荷する量の予測が立てば流通で必要となるトラックの台数や人員等の割り当ての予測がより正確になり、物流の全体最適化につながる。
株式会社Retail AI 代表取締役社長 永田洋幸 氏は「本プロジェクトは実証実験を目的とするものではなく、実際のオペレーションを変え、数値実績を出すものだ。流通業の変化というのは、小売り、メーカーだけの部分最適化では効果を発揮しない。全体最適が可能となるプラットフォームとして業界全体で変化する行動が必要であると考えている。」と述べた。
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