先日、東洋ビジネスエンジニアリング主催で「短期、低コスト、簡単に実現する製造業のためのIoT」というテーマを実現するための勘所や、実例、製品紹介がなされた。
登壇した三者は以下の通りだ。
- 「日本と海外でスタート!IoT事例紹介。〜効果を出すIoTの勘所〜 株式会社 ReM 代表取締役 安東恭二氏
- 製造現場のIoTデータ収集ソリューション 株式会社シムトップス ConMas i-Reporter営業チーム 営業統括責任者 鯰江 大作氏
- 明日から始める”製造現場向け簡単IoT” 東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 マーケティング企画本部 本部長 入交俊行氏
「日本と海外でスタート!IoT事例紹介。〜効果を出すIoTの勘所〜 株式会社 ReM 代表取締役 安東恭二氏
安東氏は、冒頭「IoTとはモノとそのデータの相互接続で、継続的に分析データをユーザに提供できることだ」と述べた。
現状、展示会で見るサービスは、クラウドやインターネットの話が中心だ。一方、製造業では設備からどういうデータを取るか、またそのデータをどのように分析活用するかという視点がないという。
今のIoTは、図において縦のソリューションが多い。そこで、業務領域からIT領域までを横串で管理するようなソリューションを提供し、フィードバックし課題を解決して改善していくことが重要だと述べた。それには、現場の実データをどのように取るかが重要だと述べた。
一方で、センサーをつけるといっても、いくつくらいつけて、コストはどれくらいかかるのか、何のためにやるのか、が明確でないプロジェクトが多いという。
生産への影響や効果はどうやるのか、設備投資や償却をどう考えるか、という点が考慮されていない、つまり、目的を明確にすることが重要だと述べた。
国内での事例紹介
アルミニウムやマグネシウムを高圧鋳造し、主にトラックや乗用車部品を製造してる旭テック株式会社 横地事業所(現旭テックアルミニウム株式会社)という企業が紹介された。これまでは経験や勘が重視されていた。そこで、IoTをつかって、設備の稼働率改善、金型故障率の低減、検査強化をターゲットとしたということだ。
◆STEP1. 工場のすべての設備点検をiPadアプリに入力することとした
工場の設備点検において、点検項目を○×でみず、数値で取れるだけ取っていった。
グラフにおいて、青いグラフが実施率で、3ヶ月でiPadを使ったことのない方にも業務が定着し、それとともに、稼働不良状況が改善され、設備異常率は1/4という結果になった。
◆STEP2. i-Reporterをつかって、金型整備を行った
これまでは金型ごとに、チェックシートを作っていた。金型は400種類以上あり、それぞれに対して手書きでレポートしていた。
それをiPadをつかって写真を撮り、そこに書き込むということをやることで、検査票のデータを一本化し、写真を活用することで情報も伝わりやすくなったというのだ。
これまでこの生産現場では、ピンを金型に刺す時にピンが折れることが多く、「ピンが折れる」と生産がかなりの時間止まってしまうというのだ。
そこで、ピンが折れる傾向をデータ収集し分析すると、機械の場所によって折れやすい部位があるということがわかったということだ。
iReporterのデータをすべてSalesforceに登録し可視化、影響度の高い部品を事前に交換することで、機械の停止時間を低減していったというのだ。
その結果、前期に28件あった停止が7件に減少した。また、停止時間も1800分から748分に減少したということだ。
「人は継続的にデータはとれない。しかも、継続的に行うには多大なコストが発生する。そこで、センサーを使って24時間データを取りつづけることで、改善が飛躍するのだ」と述べた。
ATA Casting Technology Co.,Ltd.のケース
バンコク近郊にあるACT本社工場では車のエンジンの部品をつくっていたが、生産のキャパシティが溢れてきたため、新たな工場を立ち上げることになった。
その際、日本人1名が、タイ人主体の工場運営をすることとなったのだが、その結果納期の問題が発生したというのだ。
そこで、その問題点についてディスカッションしたところ、「現場がサボってる」「管理能力の問題」「生産計画が正しいかどうかが不明」・・・など事実がわからず想像ですべて議論することになってしまったのだという。
そこで、問題点を図のように「機械稼働率」「生産計画」「素材待ち」「異常停止」の4項目にまとめ事実を検討することになったのだという。
情報を取得する上で、PLC導入を考えたが高価で、導入の手間も大きい、そもそも設置のためにラインの停止ができないという現状があった。また、PLCの情報を活用するにはソフトの開発も必要になる可能性があった。
そこで、B-ENGのSignal Chainを活用することとなったのだという。
その結果、24時間機械の稼働状況が把握できるようになり、視覚的な分析が可能となったのだ。さらに、遠隔地からでもリアルタイムに状況を把握することができるようになり、要因の特定ができるようになった。
そして、分析の結果、当初予想された原因ではなく、工場での「素材待ちの待ち時間」の問題が大きく、実際は本工場からの素材の供給が遅かったという結論になったということだ。
ここで、Signal Chain導入には、意思決定に4日、設備に4日、データ収集に5日、改善点把握に2日、合計15営業日で要因分析することができたというのだ。
設置施工が簡単で、すぐにわかる、PLCに比べて安上がりなので、PDCAを高速回転が実現されたということだ。
実際に導入を担当した、ASAHI TEC ALUMINUM IT Dept .Manager 釼持佑典氏によると、「IT部門と、工場のITというところでは差があった。そもそも、IoT導入に関する理解をどう得るかについて困難だった。」と述べた。
また、「加工機3台に対してデータを取得して様子を見ようということになった。3台で20万バーツ以下で導入ができたというのだ。このコストなら工場長の決済権限で可能な金額だったのだ」という。
今後の利活用や展開としては、現場に大きなモニタをおいてリアルタイムに観ていく、日報をまとめて送っているところを自動化していく、工場をマネージメントしていくツールとして顧客へも説明していきたいと考えていると述べた。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。