1月27日、総務省が「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」についての第三次中間答申を発表した。
2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2016」の中でロボットやAI、IoTなどの第四次産業革命による30兆円の付加価値創出を目指すことが書かれており、本答申ではそのために行うべき施策や規制緩和のロードマップなどについて述べられている。本記事ではその中でも第1部のIoT総合戦略について取り上げる。
背景
本答申によると1990年代からの第三次産業革命と言われるICT(情報通信技術)革命の際に下記3つの要因で日本は波に乗り遅れたと述べられている。
・ICTがコスト削減の手段としか考えられておらず、新たなサービスやビジネスモデル変革の手段として活用されなかった
・ユーザ企業におけるICT投資が加速せず、人材の育成も進まなかった
・ルールから逸れたものを許容しない「ポジティブリスト」を中心とする大陸法に近い制度環境の下で、「グレーゾーン」の新サービスを避ける傾向が強かった
第4次産業革命では同じ轍を踏まぬように過去の経験も踏まえつつ、データ主導社会の実現に向け、可能なあらゆる政策手段を講じていく、という考えの下、本答申が作成されている。
データ主導社会を実現する政策手段を考えるために、端末・ネットワーク・プラットフォーム・サービス(データ流通)の4つの階層に分けてロードマップや課題がまとめられている。
端末層
端末層についての施策では、端末間の相互接続性を確保するための標準化の推進、端末のセキュリティ対策などを行うことに加えて、AIの活用などによる端末制御の高度化を進めることを目的としている。そのために以下のようなロードマップが示されている。
ロードマップ
2017年夏「次世代AI社会実装戦略」取りまとめ
2018年度「自律型モビリティシステム」、「IoT端末管理のための共通基盤技術」開発
2019年度 自然言語処理などの次世代AI技術の開発、活用モデルの策定
ネットワーク層
ネットワーク層の施策ではIoTの普及により増えることが予想されるデータ流通量の増加に耐えられるSDN(Software-Defined Networking)とNFV(Network Function Virtualization)を利用したネットワークの構築とクラウドサービスによるデータ処理を基本としつつ、エッジコンピューティングを含む柔軟なデータ処理方法の開発を目的としている。
ロードマップ
2017年夏 SDN・NFV実装と運用に必要なスキルと認定制度の策定
「5G用周波数確保に向けた基本戦略」取りまとめ
ユーザ企業の人材に必要なスキルの策定
2017年度 SDN/NFV開発の実習訓練を開始
文科省、総務省、経産省が連携して設立する「官民コンソーシアム」による指導者育成・教材開発の推進
プラットフォーム層
プラットフォーム層の施策ではIoTシステムが普及し、データ連携のためのプラットフォーム層が重要な役割を果たすため、プラットフォームの強化は国際競争力に直結する重要な政策課題と考えられている。
ロードマップ
2017年4月「スマートハウスのセキュリティリスク」取りまとめ
2017年夏 マイナンバーの活用方法に一定の結論
パーソナルデータの活用と個人情報保護両立のためのルールの取りまとめ
セキュアゲートウェイを使用したセキュリティ対策の実証実験開始
サービス(データ流通)層
サービス層の施策ではIoTの活用で収集されたデータを実世界のサービスに活かすために、ルールや制度面の課題を明らかにし、これらの課題を積極的に解決していく必要がある。
ロードマップ
2017年夏 様々な団体や企業が保有しているデータを健全に取引できる「データ取引市場」とデータ取引のガイドラインの策定に一定の目途
2020年 医療、農業、教育、スマートシティなど生活に身近な分野における実証プロジェクトを行い、必要なルールを明確化
レイヤー縦断型施策
リアル空間とサイバー空間の相互通行が進む中、リアル空間におけるルールのサイバー空間への適用可能性や新たなルールの策定と垂直型施策の検討の必要がある。
ロードマップ
2016年度 CT/IoTの活用に関する実証等の成果を他の地域へ横展開する方法や推進体制について一定の目途
2017年3月 データ活用型スマートシティの在り方、先行的取組の進め方について具体化
2017年夏 「AI開発原則」を具体化した「AI開発ガイドライン」(仮称)の策定に向けた検討及び社会・経済の各分野にもたらす影響に関する分析の取りまとめ
出典:「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」(平成27年諮問第23号)に関する情報通信審議会からの第三次中間答申を加工して作成
【関連リンク】
・総務省
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コンサルタント兼IoT/AIライター 人工知能エンジン事業の業務支援に従事するかたわら
一見わかりにくいAIの仕組みをわかりやすく説明するため研究中