IoTをゼロベースで考えるの第十六回はロボットについてだ。
ロボットの周辺がアツイ。最近、ロボットに興味を持つ人が増えてきたと感じる。
単純にSF的なものをイメージして、ワクワクするものがでてきているからだろうか?工場で使われる産業用のロボットは随分前から存在していた。
見た目に可愛らしく、ペットのようなロボットも多く登場しているが、ロボットが話題となってきた背景は、その実現性はもちろんだが、大きな社会問題を解決する可能性がみえてきたからだ。今回は、その背景を見ていく。
ロボットの定義
2005年に経済産業省のロボット政策研究会が発表したロボットの定義は、
・センサー+知能・制御+駆動系
この3つの条件が揃っていることで、ロボットとは「知能化した機械システム」という表現が適切と発表している。
2015年現在では、センサー、クラウド、AIなどが複合されたIoTの世界が進化し、従来ロボットと定義されていた枠ではおさまらなくなると予想されているがまだはっきりと結論づけることができないため、ここでは上記の3つが揃っているものをロボットとする。
「ロボット」と一言で言っても人によって様々なイメージがあるだろう。昔から親しみのある機動戦士ガンダムや攻殻機動隊、エヴァンゲリオンなどヒューマノイド型のものが一般的だと思うが、センサー+知能・制御+駆動系が備わっていれば、自動車(コネクテッドカー)、家電(スマート家電)、携帯電話(スマートフォン)、住居(スマートハウス)などヒトの生活に入り込んでいるモノもロボットと言える。
そして、センサー+知能・制御+駆動系が揃っているロボットは、大きく産業ロボットとサービスロボットに分かれ、産業用ロボットの出荷額、稼働台数において世界第一位の地位を維持している。(※1)
※1・・・ロボット新戦略 参照
なぜ今ロボットなのか
人と社会インフラの高齢化がロボットの力を必要としている
総務省によると、今年日本における65歳以上は3,384万人、総人口に占める割合は26.7%と共に過去最高を記録し、80歳以上の人口が初めて1,000万人を超えた。そして、生産活動の中心となる15歳以上65歳未満の生産人口は、7,682万人と年々減っている。
高齢者が増え生産人口が少なくなると、様々な問題が起こる。働く人(税金をおさめて、社会保障を支える人)、介護をする人が圧倒的に足りないという点は容易に想像できるだろう。そこで、介護ロボットの活用や、これまで以上に生産性を高め効率的に働かざるを得ないため、知能化された機械システムが必要になってくる。
また、人だけでなく、インフラも高齢化を迎えている。1964年の東京オリンピック時に作られた首都高速1号線や、高度成長期以降に整備された橋や道路などのインフラの老朽化にも直面している。2012年に発生した中央自動車道 笹子トンネル天井板落下事故がきっかけで、2013年はメンテナンス元年とし国も本格的に動き出した。
これまで修繕入札については「修繕工事は新設工事と比べて手間がかかり、人件費や機材のコストも割高になる」、「修繕工事は発注ロットが小さいため、利益が出にくい」という課題があった。さらに、明確なメンテナンスルールもなく、メンテナンスサイクルを回す予算も技術も人もない、望遠目視などでは質に課題があるという状態であった。
その課題をふまえたうえで、メンテナンスサイクルを確定し、メンテナンスサイクルを回すための仕組みを構築する予算の確保、メンテナンス分野の人材育成などへの技術支援を推進していくことを検討し、2015年度予算では、インフラ老朽化対策、防災対策等に充てられる「防災・安全交付金」に前年度当初予算比 1.0%増となる1兆947億円が計上された。
インフラは国民の生命に関わる問題のため、おろそかにするわけにはいかないが、現在国の借金は約1,057兆円。すでに生産人口が減っており、国の財政も苦しくなっているため、今後は低予算で効率的に管理、補修できることが重要になってくる。
そこで、ロボットの登場というわけだ。
技術の進歩による、かしこいモノへの期待
スマートフォンが世界中に広がったことによる、センサーの小型化、低価格化、ビッグデータ解析やディープラーニングも可能になる情報処理能力の向上、そして人工知能技術(画像・音声認識、機械学習など)の飛躍的な発展に伴い、ロボット自身も高度な処理が可能となった。
もちろん、日本国内に限った話ではなく、世界中でロボットは注目されている。アメリカでは、人工知能(AI)分野や認識(音声、画像等)分野を中心としたロボットの基礎研究に対して毎年数千万ドル規模の支援を実施している。GoogleやAppleなどのIT企業が自動運転カ-のテスト走行実施は、大きく話題になっている。
中国では人件費の高騰などが理由で、産業用ロボットが急速に普及している。中国政府は「智能製造装置産業発展計画(2012 年)」において、産業用ロボットの国内売上を 2020 年までに 10 倍(3兆元)にするとの目標を掲げている。
※2・・・老朽化対策の本格実施について
様々な技術の向上により、モノがロボット化していくことが現実となってきており、いわゆるヒューマノイド型のロボットも多く登場している。
サービスロボットへの期待
産業用ロボットでは世界一のロボット大国日本だが、今後は人の生活に入り込んだ誰でも使えるサービスロボットや、働く現場で活用できるロボットがさらに求められることが予想される。
サービスロボットは、大きく、「生活分野」、「介護福祉分野」、「医療分野」で活躍する。有名なロボットだとソフトバンクのPepper、セールスオンデマンドのロボット掃除機ルンバなどがあるのはご存じだろう。
ここ数年で話題になった、最低限知っておくとよい、いくつか事例を紹介する。
コミュニケーションロボット BOCCO
コミュニケーションロボットは、生活の中で人との対話を重視し、ロボットを通して生活が豊かになると考えられている。多くのスタートアッップ企業がこの分野に取り組んでいる。
インターネット経由でスマートフォンと音声メッセージをやりとりできるほか、家庭内のセンサーの情報をスマートフォンに通知することが可能な、家族とつなぐコミュニケーションロボット。
【関連リンク】IoTはカッコよさより、温かさ -ユカイ工学 青木CEO インタビュー
宇宙飛行士ロボット KIROBO
電通、東京大学、ロボガレージ、TOYOTAが共同で開発した宇宙用ロボットKIROBOと、地上用ロボットMIRATA。ともに音声認識、自然言語処理、コミュニケーション動作などができる。2013年、KIROBOは宇宙飛行士ロボットとして国際宇宙ステーションに到着し会話実験などを終えて、2015年地球帰還した。
【関連リンク】KIBO ROBOT PROJECT
介護福祉ロボット ロボットスーツHAL(ハル)
身体機能を改善・補助・拡張することができる、サイボーグ型ロボット。身体にHALを装着することで、「人」「機械」「情報」を融合させ、身体の不自由な方をアシストしたり、いつもより大きなチカラを出したり、さらに、脳・神経系への運動学習を促すシステムだ。HAL医療用下肢タイプ、厚生労働省より医療機器として製造販売承認を取得し話題になった。
【関連リンク】CYBERDYNE ロボットスーツHAL(ハル)
介護福祉ロボット 眠りSCAN(スキャン)
身体に何も装着することなくマットレスの下に敷くだけで精度の高い睡眠状態の評価ができる。眠りSCANは、適切な睡眠が得られているかどうかを確認するために、睡眠を妨げることなく睡眠・覚醒リズムを把握することができるため、特別養護老人ホームなどで使用されている。
【関連リンク】眠りSCAN(スキャン)
医療ロボット 手術支援ロボット「ダヴィンチ」
患者に触れず、医師が患部の立体画像を見ながら遠隔操作でアームを動かす、ハイテク技術を駆使した画期的な手術法。すでに世界での臨床実験は年間約28万例。医療ロボットといったら現在はダヴィンチが圧倒的に知名度が高い。
【関連リンク】ダヴィンチ
すでにみたことがあるロボットもあったのではないだろうか?IoT社会では、時代背景も受けて多くのモノがロボット化していく。サービスロボットの例を見ていく中で、SFでいうところのロボットらしい実体をともなわないロボットも存在することがわかったのではないか。
政府は世界に向けてロボットショーケース化した日本を発信する場として2020年にロボットオリンピック(仮称)を開催する。2016年までに具体的な開催形式・競技種目を決定するとともに、2018年にプレ大会を開催し、本大会に着実に繋げていくという。
現在、東京国際フォーラムでは国際ロボット展が開催されているが、最新のロボット事情については今後レポートする。
【関連リンク】
・NEDO、災害対応ヒューマノイドロボットに注目集まる 2015国際ロボット展
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