IoTの新規事業は各社で立ち上がっているが、通常業務と兼務でリソースがない場合や、社内では相談できる相手がおらず途方に暮れている事業担当者も多い。
そこで、GMOクラウドは、企業のIoTビジネス化の実現をサポートする「IoTの窓口」を2017年5月にスタートし、悩めるIoT事業担当者のサポート役を担っている。「IoTの窓口」では、IoTのプロが親身にコンサルティングしてくれるだけでなく、企画や技術支援から製品化・サービス化まで、ひとつの窓口で対応できるメリットがある。中でも特徴的なのは、強固なセキュリティの実装が可能なことだという。
今回は前編と後編に分け、前編では「IoTの窓口」での取り組みや事例、後編ではIoTのセキュリティ対策について、GMOクラウド株式会社 代表取締役社長 青山満氏 に話を伺った。(聞き手:株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二)
ー「IoTの窓口」をはじめたきっかけについて教えてください。
青山: 私どもの会社は、クラウド・ホスティング事業業、セキュリティ事業、ソリューション事業の3つの事業があります。クラウド・ホスティング事業は20年前から行っていて、セキュリティ事業は15年前から、ソリューション事業は9年前から行っています。
この3つの事業を合わせて何か力を発揮できないかと思っていたころに、IoTという言葉が出始めました。IoTの要素を見ていくと、クラウド、セキュリティなどがあり、それぞれシナジーがあることから、当社の事業をさらに拡大できると考え、IoTの事業に入っていくことにしました。
実際は、すでにそれぞれの事業がIoTへの取り組みをはじめていたので、その関係者を集めてGMOクラウドグループとしてR&D部門をひとつにまとめ、IoTに関する中長期の戦略チームを作りました。
そこから半年ほどIoTやセキュリティ、ブロックチェーン、AIの研究開発を進めていました。そして、去年の2月くらいに「今みんなで話している内容を何らかの形にして、クラウドの展示会であるクラウド コンピューティング EXPO に出展しよう」と決めたのです。
ーなるほど、具体的にこういうことがやりたいというイメージはあったのでしょうか。
青山: そもそもわれわれがホスティングサービスをはじめたきっかけもそうなのですが、社会の不便なところを改善したり、新しい価値を提供したりすることで、世の中を変えていきたいという思いがあります。
「IoTの窓口」をスタートする3年前ほど前から、ハードとインターネットを組み合わせて何ができるかという研究をしていました。
私自身以前、航空機の自動操縦装置をつくっていた経験があるのですが、いずれ航空機など様々なの機械がインターネットにつながっていくのだろうと想像していました。まさにターミネーターの世界ですよね。
-具体的な御社の取り組みについて教えてもらえますか?
青山: 世の中には「IoTで解決したい課題はあるけれど、どうすれば実現できるか分からない」という企業がたくさんあります。そういう企業とわれわれが、一緒に何ができるかを考え、形を作っていくという取り組みをしております。プロジェクトに対しては、「コストが下がるのか」、「売上があがるのか」、など、効果に関して様々な期待があります。しかし、形にしてみないとわからないことばかりなので実際にやってみるということを重視しています。
「IoTの窓口」を作る以前のプロジェクトで、最初にやってみたのが、「ビルのスマート検針サービスの実現」です。これまで人が電気・ガス・水道などの検針を行っていましたが、自動検針にすることで検針員の人件費を削減することに成功しました。さらにマンションやテナントでは、家賃と一緒に光熱費の請求書を発行することができます。
最近のプロジェクトではハウステンボスと一緒にやらせていただいた、IoT対応のゴミ箱があります。
GMOクラウド株式会社 ハウステンボス株式会社 株式会社hapi-robo st
このスマートゴミ箱は、GMOクラウドの「IoTの窓口」と、ハウステンボス株式会社、その子会社のロボット会社ハピロボの3社共同プロジェクトで開発しました。ゴミの量を検知するセンサーをゴミ箱に搭載することで、インターネットを通じて遠方からゴミの溜まり具合を把握することができます。実証実験の結果、ハウステンボス内で働くスタッフのゴミ収集業務を大幅に効率化することができました。
商品管理の省力化やマーケティング活動に使えるデータを取得できる「スマート電子タグ」も開発しました。東京駅前の八重洲ブックセンター本店で実施した実証実験では、「スマートタグ(次世代型電子POP)」を使用した販促POPを置いた書籍の売り上げが導入前の20倍に増加しました。
また、搭載されたセンサーを通じて、お客さまが売場で本を手にとる行動や棚に戻す回数、滞在時間など、POSでは取得できない情報もデータとして収集することができます。これにより、時間帯によって「どの売場に人が多いか」「どの商品が手に取られているか」といった観点でデータを分析し、マーケティングに活用することが可能です。カメラでは性別や年代も認識しました。
ーさまざまな分野でのプロジェクトを実施されていますが、相談したい企業は「IoTの窓口」にどんな相談をしてもいいのでしょうか?
青山: はい、今の段階ではあまり絞らずにお話をいただくようにしています。われわれとしても、まだどんな効果があるかわからないこともありますので、まずはご相談いただきたいです。ただ、なんでもかんでもできるわけではないので、話をさせていただいている中から、IoT化によって改善できそうなところを一緒に見つけたいと思っています。
「IoTの窓口」は国内だけですが、海外でもセキュリティを中心にIoT事業を広げています。GMOクラウドの連結子会社で、電子認証サービスを展開するGMOグローバルサインとArmが行った「Mbed™️ IoT Device Platformパートナー」契約の締結など、スケールの大きな取り組みも実施しています。
Mbed IoT Device Platformパートナー:GMOグローバルサインとArmが締結した、IoTデバイスに搭載するチップレベルでのセキュリティを電子証明書の技術を使って確保するパートナーシップ
▼GMO Cloud & Mbed | An Arm Mbed Case Study
https://youtu.be/kE1CmCAfhrU
ー窓口にいろんな質問がきて困ってしまった、ということはありませんか?
青山: もちろん何でも無料でできるというわけではなく、必要に応じた投資も発生しますが、いかに費用対効果を出すかも一緒に考えていきます。何を解決したいか、どんな課題があるか、そういったことが明確であると話に入っていきやすいです。
ーどんな対応でもできるとなると、御社側で様々な分野で経験を積まれた人材を集めなければ対応できないと思いますが、どうされているのでしょうか。
青山: 製造業で経験が長いメンバーもいますが、問い合わせいただく方の業種が幅広いので、すべてわれわれだけでは解決できると考えてはいません。タッグを組んでいるパートナー企業と連携しながら、それぞれの得意分野を活かして、一緒にモノゴトを解決していきます。今は、そういう時代だと思います。
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