NTT・NTTドコモ・NEC、双方向無線通信装置を用いて80GHz帯で毎秒140ギガビット伝送に成功

日本電信電話株式会社(以下、NTT)、株式会社NTTドコモ、日本電気株式会社(以下、NEC)は、軌道角運動量(以下、OAM)モード多重伝送技術を用いた高速なデータ送信を行う実証実験の成果を発表した。

OAMは、電波の性質の一つで、送信された電波が進行方向に対して螺旋(らせん)状に進むように設計されており、この特性を利用して、複数の異なるデータを同時に送ることができるものだ。(トップ画参照)

また、受信側では、受信した信号の位相を逆回転させることで、異なるデータを干渉なく受け取ることができる。

この技術のメリットは、限られた周波数帯でも大容量のデータ伝送が可能になる点だ。

すでに、71GHzから86GHzのミリ波帯(以下、E帯)を使用し、OAM技術を活用することで、40メートルの距離で毎秒14.7ギガビットのデータをリアルタイムで送信する実験の成果が学術論文で発表されている。

しかし、6Gやそれ以降の無線システムに向けては、リアルタイム伝送の更なる大容量化が求められることが想定されている。

そこで今回3社は、71GHzから86GHzのミリ波帯において、OAMモード多重伝送技術を用いて、上り・下りの双方向でのリアルタイム無線伝送の実証実験を実施した。その結果、100GHz未満の周波数で毎秒140ギガビットの伝送容量に成功したのだという。

具体的には、NECが従来のデジタル信号処理回路を拡張し、変調速度を約2.6倍の300 Mbaudに向上させた。これにより、E帯で双方向通信が可能となり、最大で毎秒70ギガビットのリアルタイム伝送が可能なOAMモード多重伝送装置を開発した。

そしてドコモがOAMモード多重伝送の利用シーン拡張を検討し、OAMモード反転受信技術を活用することで、壁などによる反射を介して伝送する、反射シナリオなどで実証実験を実施した。

NTTは、伝送帯域を2倍とするための回線設計と、伝送距離の長距離化と反射シナリオに対応するOMAモード制御技術を考案した。

各社の役割分担

その後、「22.5m距離における双方向伝送」「45m距離における双方向伝送」「反射板を介した22.5m距離における双方向伝送」といった3つのシナリオで実証実験を実施し、それぞれ、毎秒139.2ギガビット、毎秒104.0ギガビット、毎秒139.2ギガビットの伝送容量を達成した。

左:伝送実験構成図と伝送シナリオ 右:伝送実験の様子(22.5m距離における双方向伝送)

実験では、上り周波数で74.875GHzと75.375GHz、下り周波数で84.875GHzと85.375GHzの4つの周波数を使用し、それぞれ500MHzの帯域幅で無線伝送を行った。

その結果、100GHz未満の周波数帯かつ、22.5メートルの距離で毎秒139.2ギガビットの双方向リアルタイム無線伝送に成功した。

さらに、長距離運用時の伝送容量改善のため、送信電力、利用OAMモード、変調方式などの伝送パラメータを自動で制御するOAMモード制御技術を開発し、設計距離の2倍である45mの距離においても、毎秒104.0ギガビットのリアルタイム無線伝送に成功した。

また、モード反転受信技術を活用し、伝送OAMモードの反転を行うことで、壁反射による信号の影響を受けながらも、22.5メートルの距離で、毎秒139.2ギガビットの伝送が可能であることを実証した。

従来OAMモード多重伝送は、送受信機が直接見通し内で軸合わせをした場合に主に利用されていたが、より柔軟な通信インフラを構築するため、壁反射を利用した見通し外通信の技術を実証した形だ。

実環境でのリアルタイム無線伝送技術(100 GHz未満)に対する成果の位置づけと、OAMモード多重伝送装置

これらの技術を活用することで、柔軟なバックホールの構築、イベント時の移動基地局との無線接続への適用、災害時の臨時回線などへの利用が期待されている。

また、6Gやそれ以降の無線システムにおける、XRや高精細映像伝送、コネクティッドカーや遠隔医療などの将来の多様なサービスを支える大容量の無線バックホールとして貢献することが期待されている。

無線バックホール及びフロントホールへの適用例

今後は、ミリ波以上の周波数帯における無線伝送の大容量化、長距離化の検討を進めるとしている。

なお、今回の成果は、2025年3月24日から開催される国際会議「WCNC(Wireless Communications and Networking Conference)」にて発表を予定しているとのことだ。  

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