GAFAと国内で呼ばれている、Google, Apple, Facebook, Amazonだが、これらの企業の他にも、インターネットの波にのって多くの「スタートアップ」と称される企業が、シリコンバレーを中心に登場した。中には、ユニコーンと言われる、10億ドル以上の評価を株式市場で受けるような企業も登場していることは既知のことだろう。
Winner talkes allの理論が働く、インターネットの中での世界では、勝ち組が決まり、思いつくことは大抵やり尽くされ、その流れも一息ついたと思われた頃、「IoT」という言葉が世界的に騒がれるようになり、あたかも、インターネット系スタートアップ・ブームの続きで、IoTスタートアップ・ブームなるものが登場し、市場を席巻するという論調の人が登場した。
「シリコンバレーの事情通」なる人が日本にやってきて、シリコンバレーのスタートアップ流のイノベーションプログラムをやろうと大企業になげかける。
国内でも、「大企業病」を否定してオープンイノベーションの名の下、スタートアップ企業と、国内大手企業とのマッチングを推進する企業が登場し、結局何の成果も出ないまま手数料だけが発生するというお粗末な状況が横行する。
そして、クラウドファンディングという、新しい資金調達手法のようなものが生まれ、何を勘違いしたのか電子工作レベルの知見で製造ができると信じこみ、金型製作にも足りないような資金調達を行なって、結局量産することもできず破綻したり、製品をリリースすることができず、賛同した人を絶望させてきた。
あれから、3年〜5年の年月が経ったが、実際GAFAに続くような企業が登場しただろうか。
プリファードネットワークスのように、トヨタやファナックなど日本の産業を支えている企業と提携し、AIの世界を切り開いている企業も一部だが登場しているという事実はある。
ソラコムのように、IoTに必要な通信制御や付加サービスを定義し、通常通信会社が制御するようなことも、事業会社で制御可能にすることで、IoTに必須となるインターネット通信部分の省力化に貢献している企業もある。
しかし、これらの企業は両者とも、アルゴリズム開発を行う企業だ。プロダクトの製造がメイン事業ではない。
IoT、特にモノ側では、「モノづくり」が伴う。
さまざまなチップメーカーから、趣味のプログラミングレベルでモノをコントロールすることが可能なチップセットが登場しモノづくりの敷居を下げた。巷ではハッカソンイベントが多く開催された。
しかし、所詮は「個人の感覚」レベルで思いつく程度のプロダクト(のお試し版)くらいでは、電子工作を楽しんだり、これ面白いねと応援したくなるようなモノは登場する一方で、産業としてみるとそういったモノがマーケットを取ることは容易ではない。
いわゆる、アイデア商品の域を超えることは難しいのだ。
なにか、平成のホンダ、松下電器、ソニーが誕生するかのような期待感もあったのかもしれないが、誰もが必要とするようなモノがまだ登場していなかった時代とは異なり、製造の環境もマーケットの環境も、それらの企業が立ち上がった頃とはまるで違う。
インターネットは、そういう意味で全く新しいインフラであり、その上には我々にとって必要なものはまだ何もなかったため、そこを早く作り込んだ企業が勝者となっていった。
そんな中、勝者にはなれなかったが、マーケットが広がったことによる恩恵を受けていたインターネット企業は、IoTというキーワードのおかげで次の食いぶちができたと言わんばかりに、こぞって「IoTプラットフォーム」なるものを作ることとなる。しかし、実態はモノが「あれば」、簡単にクラウドに接続できて、可視化に使えます。というモノばかりだった。
当然だが、IoTが「あたりまえ」になるのがこれからなので、何百万個のモノを接続した経験など誰もなく、要件の考慮不足をはじめとして、セキュリティや、パフォーマンス的にも問題があるものも見受けられた。
堅調に効果を出し始めているB2B向けのIoT
IoTの事例というと数年前からコマツのスマートコンストラクションやランドログを例にあげる有識者が多い。
コマツの例がこれほどまでにもてはやされる意味は、建機メーカーであったコマツが、顧客のビジネスプロセス全体の効率化に着目し、自社の業界の常識を超えて、顧客の課題を解決しようとしたことにある。
IoTによって、これまで分断されていた業務プロセス間を繋げて評価することができるようになったので、ビジネスプロセス全体を横串にした効率化を可能としたのだ。
もちろんこれ以外にも多くの企業がこれまでやってこなかったクラウド接続にトライしている。
工場間やビル間など、距離的に離れたファシリティを共通基盤で管理するようなものや、物流網におけるトラックや営業車の位置情報や利用状況を可視化して、効率化を図る取り組みなど、様々な取り組みが行われ、主に生産性改善という文脈で効果を創出している。
こういった、B2Bの取り組みに関しては、取り組みが進んできているといえるだろう。
では、コンシューマIoTやスマートプロダクトに関してはどうだろう。
Amazon Echoですらマーケットを取れていない現状
冒頭述べた通りの状況で、数百万台出荷したと言われているAmazon Echoですら、先日IoTNEWS生活環境創造室で行った調査によると、マーケットが取れている状態とは言えない。
鳴り物入りで登場した、多くの米国スタートアップも、前述したとおり、クラウドファンディングで資金調達だけして焦げ付いたものや、多くの投資を集めたにも関わらず事業停止に追い込まれたモノなど、枚挙に遑(いとま)がない。
インターネット空間内の世界とは違い、現実世界では、クルマや家、家電など、長い年月をかけて人にとって必要なモノが登場して、利用されている。
そこにインターネットを掛け算したからといって、簡単にはマーケットは反応しない。
一方で、2005年に創業したDJIのような中国企業は、ドローン業界としては後発にも関わらず、マーケットシェアは世界一になっている。無人で自動飛行するモノがまだそれほど一般的ではなかったから、ドローンの登場から10年も経たずに市場を席巻する企業が登場したのだ。
しかし、ドローンといえども、ドローンメーカーだけが存在すれば良いということではない。街の上空を飛ぶには様々なルールの整備が必要で、技術的にも対応すべき課題が多い。
今後、ドローンにカメラ以外の何を搭載するのかということに注目が集まる一方で、ドローンが飛ぶ社会を前提とした周辺産業も盛り上がりを見せる可能性がある。これまでできなかったことをデジタルの力で実現することができれば、カテゴリーキラーとなるモノが登場する可能性もあることを示している。
世界で1,000万台の発売をマークしている、ウェアラブルウォッチに関していうと、Fitbitのようにヘルスケア分野が得意なモノや、Apple Watchのようにスマートフォンを切り出した機能が便利とされるモノなど、その役割を徐々に明確にしながら利用者数を伸ばしている。
我々の生活には、スマートウォッチに期待されるような、「時間をみる」「友達とのコミュニケーション」といったこと以外にも、「寝る」「食べる」「歯磨きをする」「お風呂に入る」「洗濯をする」・・・など、様々な行動があるわけだが、それぞれの行動における、課題や改善点が潜んでいる。
家電メーカー、消費財メーカー、食品メーカー、飲料メーカー、化粧品メーカー、住宅メーカーなどの普段から生活者の行動を観察している、消費者向け企業がこれまでの研究や学術的成果とデジタルの力を掛け合わせることで、思いつきを超えた、新しいカテゴリーキラーとなる商品を生み出す可能性があるのだ。
実際、2018年1年を通して、大手化粧品メーカーや消費財メーカー、AVメーカーなど、いくつかの企業ではそういった、これまでの強みを活かすイノベーションに向けた取り組みも始まっている。
スタートアップがダメだということではない。ドイツの電動カーメーカーである、e.GOは、スタートアップでわずか3年で市販車を生み出している。
しかし、e.GOも産学官連携施設で、多くの大企業や有識者の支援を受けてクルマの製造を行なっている。ガレージでスタートするインターネット系スタートアップとは違い、IoTプロダクトを作りたいスタートアップは、蓄積された知見や製造ノウハウなどを持つ企業との密な連携が現実的だと言える。
いずれにせよ、多くの失敗を踏み台にして、2019年以降、生活者の観察とデジタルの掛け合わせによって、生活に取り込みたくなるモノが次々登場するのが楽しみだ。

