富士通は、国際船級協会である一般財団法人日本海事協会の船舶ビッグデータプラットフォームを構築し、2016年4月より稼働を開始した。
今回、同社は、運航中の船舶から得られるエンジンなどの機器の稼働データや気象情報をビッグデータとして収集・蓄積し、船舶運航や造船などに関わる海事事業者が航海中の船舶データを必要な時に抽出することが可能なプラットフォームを日本海事協会様と構築した。
これにより、たとえば、運航オペレーターはエンジンの稼働データを活用することによる故障予測や、航海データと気象データを活用することによる省エネ運航の実現が可能になる。
船舶ビッグデータプラットフォームは、海事業界初の共通プラットフォームとして、日本海事協会様の子会社として2015年12月に設立された株式会社シップデータセンターのデータセンターのサービスとして運用される。
背景
海上ブロードバンド通信の発達により、運行情報や船舶搭載機器に設置されたセンサーからの情報の収集・モニタリングが可能となり、データを活用した省エネ運航や機器の故障診断などの新たな取り組みが注目されている。しかし、これらの仕組みを個別に構築した場合、データ運用の取り決めや強固なセキュリティ対策など、コストや手間が負担となり、一部の船舶や海事事業者の実用に限られていた。
今回、シップデータセンターが運用を開始したシップデータセンターは、海事業界に広くデータ活用を促す共通プラットフォームとして、収集したデータを提供する、業界初の取り組みとなる。
シップデータセンターのシステム概要
1.データ分析・活用の仕組みを短期間で構築可能
シップデータセンターでは、個船より送信されるVDR(注1)などの航海系情報、機関エンジンや各種船舶搭載機器の運転・計器情報(マシナリーデータ)に加え、全球の気象情報を収集・蓄積する。海事事業者は、従来、船舶のデータを活用するには、個々に必要なデータを収集し統一データとして結合する必要があったが、今回、シップデータセンターにて各種データを一括収集し、各事業者に特化したデータフォーマットを生成してWeb APIで提供するため、利用者は一から仕組みを準備することなくすぐにビッグデータ活用を行うことができる。また、様々な形式で収集される各種データは、CSV、JSONなど利用者が使いやすい形式に変換したうえで、データ提供を行う。
2.業界共通プラットフォームとして安全に利用できるセキュリティを装備
船舶データは、インターネットを経由し収集・蓄積・配信されるため、シップデータセンターは、データのウイルスチェックやユーザー認証などのセキュリティ機能を備えることで対策を行っている。
今後、同社は、AI によるデータ解析技術の活用など、シップデータセンターの機能拡充を継続して実施していく。また、現在、船舶データの扱いについて新規国際標準化に向けて提案されている規格(注2)へもいち早く対応していくという。
【関連リンク】
・富士通
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