TOPPANデジタルとNICT、自治体向けBPO事業で量子暗号と秘密分散システムの有用性を確認

TOPPANデジタル株式会社と国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、TOPPANデジタルの事業所内に量子鍵配送(QKD※)装置を設置し、住民情報(氏名・住所等)を想定した高秘匿情報の送受信・保管に関する実証を行い、量子暗号と秘密分散システムの有用性を確認した。

※QKDは、光子を使って暗号鍵を送受信者間で共有する技術だ。送信者が光子を変調(情報を付加)して伝送し、受信者は届いた光子一個一個の状態を検出する。そして、「鍵蒸留」と呼ばれる情報処理により、盗聴の可能性のあるビットを排除して、絶対安全な暗号鍵(暗号化のための乱数列)を送受信者間で共有する。変調を施された光子レベルの信号は、測定操作をすると必ずその痕跡が残る(ハイゼンベルクの不確定性原理)ため、この原理を利用して盗聴を見破る。

今回実施された実証実験は、2023年11月から2024年3月にかけて、自治体向けビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業の一部として「給付金申請の受付業務」を想定して行われたものだ。

目的は、NICTが提供する量子暗号通信ネットワークテストベッドの利用と、量子暗号通信技術や秘密分散技術を使ったデータ送受信やバックアップ保管の有用性を確認することだ。

実証内容は、QKD装置を介して両者の拠点を接続した量子暗号ネットワークテストベッドを、自治体向けBPO事業の「給付金申請の受付業務」の作業環境と想定し、模擬的に当該業務で発生するデータフローを実行することで、テストベッドの有用性を検証した。

具体的には、QKD装置を設置したTOPPANデジタル事業所内に「自治体」「BPO事務局」「コールセンター」とみなす作業環境を設置することで、NICT本部を経由した量子暗号通信技術によるデータ送受信や、秘密分散技術によるデータ保管を実際の業務へ適用した際の有効性や効率性、実用性や信用性などを含む満足性の観点から、利用時の品質をISO/IEC25010の品質モデルを参照して評価・検証を実施した。

実証実験の概要図

その結果、自治体向けBPO事業における量子暗号通信や、秘密分散システムの有用性が「効率性」「実用性」「満足性」の観点から確認された。これにより、個人情報を扱う業務において求められるセキュリティを保ったまま、将来に渡る安全性も確保可能なデータ流通や保管、利活用環境を構築することができる。

また、テストベッドの利用拡大に向けて、機能的および非機能的観点からの課題を抽出することもできたのだという。

TOPPANデジタルとNICTは、得られた知見を基にテストベッドの改良と利用拡大、高秘匿情報を扱うユースケースの適用実証を目指すとしている。

また、このテストベッドには量子インスパイアードコンピュータと呼ばれる、組み合わせ最適化問題を解くことに特化した計算エンジンも組み込まれており、物流や製造分野のDXサービスにも活用が期待されている。

さらに、TOPPANグループの自治体向けBPO事業へ適用していくことで、量子時代の安全なデータ送受信や保管を可能とする計画だ

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