STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、ノートPCやデスクトップPC、モニタ向けに、ToF(Time-of-Flight)測距センサと独自のAIアルゴリズムを組み合わせた「スマート・ヒト検出ソリューション(HPD)」を開発した。
STが提供するToF測距センサ「FlightSense」は、光の飛行時間を利用して高精度な距離計測を可能にするものだ。
今回これに独自のAIアルゴリズムを組み合わせることで、PCがユーザの存在や意図を正確に理解できるようになった。
このAIアルゴリズムは、STが数千に上るデータと何カ月にもわたる改善を通じて開発されており、8×8ピクセルの距離データからノートPCユーザの頭の向きを検知できるようになった。
これは、厳格な品質管理と、Presence AI、HOR(頭の向き)AI、姿勢AI、手による表現を示すAIという4つの専用AIネットワークの設計によるものだ。
これには、ToF測距センサ「VL53L8CP」が、ゾーンあたりの信号ノイズ比(SNR)を最適化するように設計されており、これらのAIアルゴリズムの性能を引き出す役割を担っている。
これにより、ユーザが画面から視線を外すと、AIが頭の向きを検知し、自動的に画面の輝度を下げて電力を最適化することで、バッテリー寿命の延長と1日あたり20%以上の消費電力削減を実現する。
また、ユーザがPCから離れると自動でロックし、戻ると起動する「遠ざかり検知」と「近接検知」機能を搭載。ハンズフリーでの高速Windows Hello認証も可能にし、機密情報保護とシームレスな操作性を両立する。
さらに、背後からのぞき見されていることを検知し、ユーザに警告する「複数人検知」機能で、情報の盗み見を未然に防ぐ。
なお、ToFセンサはカメラのように画像を撮影しないため、ユーザーのプライバシーを完全に保護できる点も特徴だ。
STのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼イメージング・サブグループ・ジェネラル・マネージャーであるAlexandre Balmefrezol氏は、「260機種以上のノートPCに搭載されてきたFlightSense技術が、新たなスマート・ヒト検出ソリューションによって電力効率、セキュリティ、使いやすさの向上に貢献する」と述べている。
また、Yoleグループのイメージング担当プリンシパル・アナリストであるFlorian Domengie博士は、「2023年以降の3Dセンシング技術の普及とToF技術の応用範囲拡大に言及し、2030年にはToFモジュールの売上高が38億ドルに達する見込みであると分析している。特に小型・低コストのマルチゾーンToF測距センサの登場が、ノートPC体験の向上と新たなユースケースの創出を可能にしている」とコメントした。
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