CES(Consumer Electronics Show)は今回で50周年を迎える。バブル崩壊やリーマンショックなど数々の困難を乗り越えてに偉業だ。最近はIoTブームでかつての”家電ショー”とは様相が異なり、2011年以降は毎年のように来場者数、出展者数を伸ばしている。中でも自動車メーカーの参加が急増し、今年は日本のビッグ3も展示するに至った。しかし、大きなウェーブはIoTだけではない。数多くのベンチャー企業の参加も最近のCESの成長を支えている。ベンチャー企業は以前から参加していたが、ここ数年はベンチャー企業だけでカンファレンス会場を埋め尽くすくらいの勢いだ。
今回は、ベンチャー企業を支援するためのコンテストの決勝が2日目のMedia Dayに行われたので、決勝に勝ち残ったベンチャー企業について紹介する。
コンテスト名は”Show Stoppers Launchit”。決勝は、Eureka Parkというベンチャー企業が集まる会場に出展する600社以上のベンチャー企業からShowStoppersとCTA(Consumer Techonolgy Association)が12社を選出して行われた。フランス政府の支援で、Eureka Parkには6割近くがフランス系ベンチャー企業なので、必然と決勝に残ったベンチャー企業もフランス系が多い。
Akoustic Arts社
Akoustic Arts社は、従業員6人のベンチャー企業で、指向性の高いスピーカーを開発している。指向性が高いため、スピーカーが向いている人にしか音が聞こえない。だから、大音量で音楽を聴いていても周りの人には聞こえない。会場のデモでは説明者が「音が聞こえたら手をあげてね」と言った後にスピーカーを動かしたのだが、本当にスピーカーが自分の方を向いている時しか音が聞こえなかった。ビジネスモデルは2つ。一つはショッピングモール、ホテル、美術館などのB2Bのダイレクト販売、もう一つはオーディオメーカーなどへのOEM。現在約3億円の資金調達の機会を探している。
Cosmo Connected社
Cosmo Connected社はどんなヘルメットにも着脱可能なブレーキランプを開発している。ライダーがブレーキをかけたことを検知してブレーキランプを点灯させる仕組みになっている。万が一事故が起こった場合は、専用のSmartphoneアプリがエマージェンシーコールをしてくれる。一回の充電で8時間利用できる。バイク用のヘルメット以外にも自転車やスキーなど危険度の高いアクティビティ向けのヘルメットへの応用も検討しているそうだ。価格は$99で2017年5月の発売を目指している。
FoldiMate社
「結婚は無駄な時間を作る」と始まったFoldimate社のプレゼンテーション。よくよく聞くと、結婚すると洗濯物が増えて洗濯物をたたむ時間がバカにならないということだった。そこでFoldiMate社が開発したのは、自動で洗濯物をたたんでくれる機械。「たたんでくれる仲間」という社名も気が利いている。まだプロトタイプしかできていないが、2017年4月にPre-Orderを開始し、2018年には発送を開始したいと言っていた。日本メーカーにも同じようなコンセプトの製品があり昨年はCESにも出展していたが、そちらは2017年3月の発売を予定しているようだ。
Good Parents社
Good Parents社は、子供向けにFitbitのようなウェアラブルデバイスのKiddoを開発している。Kiddoは心拍数、体温、動きをモニターすることができる。他のデバイスが、位置情報や動作をモニターし子供の安全を確認することを意識して物作りをしているのに対し、Good Parents社は子供の健康状態を確認することを意識して物作りをしているそうだ。
HoloLamp社
HoloLamp社は3Dホログラムを写すコンパクトなプロジェクターを開発している。目標はStarwarsの映画の中でR2D2がレイヤ姫を写したり、チューバッカが楽しんでいるチェスの実現。現在、Crowd Fundingでキャンペーン中だ。
In&Motion社
In&Motion社は、オートバイのライダーが装着するベスト型のプロテクターを開発している。充電のために着脱ができるセンサーで衝撃を検知し、それをトリガーにエアーバックのようにプロテクターが膨らみ、ドライバーを転倒の衝撃から守る。MotoGP(ロードレース世界選手権)のライダーが実際に装着してレースに出場している。他にもスキーの競技者、乗馬競技者が着用できるベスト型のプロテクターも開発している。オートバイ用のプロテクターの価格は€800。これで事故から身を守れるのであれば安い買い物ではないだろうか。
Kino-mo社
Kino-mo社は3D広告を表示できる製品を開発している。Kino-mo社は昨年もEureka Parkに出展していて話題となっていた。細長い液晶パネルのような棒を4本組み合わせたプロペラのようなものを回転させると3Dのコンテンツが表示される。値段はコンテンツの大きさに合わせて$700から$3,000。3Dコンテンツのマーケットプレイスも提供している。
Nonda社
Nonda社は、すべての自動車をConnected CarにするデバイスのZUSを開発している。ZUSは駐車した場所、自動車のバッテリーの状態を専用のSmartphoneアプリで教えてくれる。ZUSは2つのUSBポートを備えていて、Smartphoneを充電することもできる。価格は$29.00。
Parihug社
Parihug社は遠く離れた人でも実施にハグをしているような感じを与えてくれるぬいぐるみを開発している。片方の人がぬいぐるみを抱くともう一方のぬいぐるみが振動するといった具合だ。Parihug社も昨年のEureka Parkに出展していた。
Revinax社
Revinax社は、外科医のトレーニングのためのVRコンテンツ開発と専用カメラの開発を行っている。事前に手術のトレーニングを行っていると手術の効率が格段と上がるそうだ。VRコンテンツを開発するためには実際の手術の様子をビデオ撮影する必要があるのだが、既存のカメラでは狭い空間での撮影が難しいため、専用のカメラも開発した。またRevinax社は、Baxter社、Boston Scientific社、Coloplast社、Stryker社と連携してVRビデオを用いた手術ガイドを作成している。
TwinswHeel社
TwinswHeel社は、荷物を配送するための二輪ロボットを開発している。40kg程度の荷物であれば10km先まで配送することができる。メインターゲットは配送手段を持たないe-Commerce。荷物の盗難防止用のカメラも装備されている。
Wezr社
Wezr社は、ピンポイントで気象予測ができるモバイル型の気象センサーを開発している。センサーで収集したデータをもとに専用のSmartphoneアプリで気象予測を確認することができる。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
NTT Communications シニアマネージャー・ビジネスディベロップメント
大手通信会社でBox社などのシリコンバレーのベンチャー企業との協業を推進する傍ら、シリコンバレーなどの北米の尖ったサービス、製品を日本に紹介している。