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grafit, POCKETALK, JapanTaxiのプロダクト開発 ーif-up2019レポート4

ソラコムが行なった、プロダクトマネージャー、プロダクト企画者、技術責任者やエンジニアのためのカンファレンス、if-up2019。第四弾は、ハードウエアプロダクトを作るにいたったきっかけや、始め方、進め方、チームやパートナーの作り方、苦労と楽しさについてのレポートだ。

登壇者は、ペダル走行、電動走行、ハイブリッド走行と3種類の走行ができる新しい電動バイク「GFR-01」を開発したGlafitの鳴海氏、世界74言語に対応した翻訳機「POCKETALK」を開発したソースネクストの川竹氏、タクシーの車載向け広告サイネージタブレットを開発するJapanTaxiの岩田氏だ。モデレーターはソラコムの今井氏が務めた。

登壇者

クラウドファンディングで集めた資金を元に開発をすすめるglafitの電動バイク

if-up2019
glafit 株式会社 代表取締役 CEO 鳴海 禎造 氏

glafitの鳴海氏は、もともと自動車のパーツを製造、販売する会社を起業していた。様々なニーズにフィットした製品を作る中、自分でもクルマを作りたいと思うようになったのだと言う。

パーツを作る過程で、日本の工場を探し歩いた鳴海氏だが、中国に進出する企業が多かった当時、鳴海氏も中国に単身乗り込み日本語の話せる中国人学生とともに工場を渡り歩く、そして交渉していったと言うのだ。

最近のものづくりにおいては、3Dスキャナや3Dプリンタが欠かせないと言う。
中国で金型を作る一方で、国内では3Dプリンタを活用して製品開発を進めているということだ。

中国で製造する理由を問われると、「日本の製造業は空洞化しているものが多く、すべての部品が調達できない、例えば、インホイールモーターと呼ばれるモーターは国内で生産していない」と述べた。

開発中にユーザの要望をどの程度取り入れることができるかと言う質問に対しては、「構造に影響を及ぼすようなことは対応が難しい、カラーリングなど対応できる余地もある」とした。

現在、クラウドファンディングで集めた資金を元に開発を実施、3000人いるユーザに対してグループインタビューを開始し、既存ユーザ、興味のあるユーザから、現在進めているYAMAHA発動機との共同開発につなげる活動をしているということだ。

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顧客の要望をこなすために、メーカーになる決心をしたソースネクスト

ソースネクスト株式会社 技術戦略室 執行役員 川竹 一 氏

テレビのCMでもおなじみのポケトーク。初代のポケトークは1週間で売り切れたのだという。

初代はOEMを活用して製造していたソースネクストだが、「困っている」点について、何千というリクエストがあり、それを解決するのにメーカーになるしかなかったのだと振り返る。

ソフトウエア開発を20年近くやった経験から、ポケートークを作るには、「中身はスマホの機能を削ったもの、ハードウエアをきちんと作れるパートナーがいれば、自分たちはソフトウエアを作れば良い」という考えに至ったのだという。

初代の予約を捌き切らないころから、二代目をリリースしたわけだが、「いいものできたらすぐ提供すべき」「初代のものは買取サービスを作り、交換していった」ということだ。

開発にあたっては、クラウドシステムがある前提で、どういうハードウエアデバイスが必要か、と考えるのだ。ポケットから出して、シャイな日本人が使えるものでないといけない、と考えを進めた。

そして、ハードウエア作りのプロジェクトプランニングを行うわけだが、まずは落書きをしながら形状を決め、作るもののイメージを固めていく。ソフトエウア部分は、並行してエンジンを作り始め、小さいスマートフォンに作ったソフトウエアを実装していった。ソフトウエアを開発する間に金型を作ったりしていたのだという。

ソフトウエアをスマートフォンで実装している様子

ポケトークは、深センの工場を使って生産しているのだが、その理由を「SoCなどがたくさんあって、エコシステムがあるので、早くプロトタイプできる」と川竹氏はいう。

また、プロダクトリリース後は、アップデート計画を2Wに一回くらい修正やアップデートをかける計画を立てているという。これもソフトウエア開発のアプローチだ。

実際にポケトークを市場にだしてみて、「ハードウエアになると使う人が圧倒的に多くなるという気づきがある」「コンシューマー中心にやっていたが、法人ニーズや海外ニーズもあるので、その対応にも挑戦している」と述べた。

オリンピックで日本に来る外国人も多いわけだが、ここで多くの人が使っている状態を目指したいと述べた。

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必要性からスタート、ハードウエアならではのトラブルを乗り越えたJapanTaxi

JapanTaxi株式会社/株式会社IRIS 取締役CTO 岩田 和宏 氏

JapanTaxiの岩田氏は、5年くらい前、タクシー業界ではドライブレコーダーをつけなければならなかった時期に、市販品は高価だったので、コストを抑えたものを作ろうとなったと経緯を振り返る。

0号機では、ドライブレコーダーなのに録画できていないといったトラブルが起きたのだという。(その後、不良品については、1号機と交換した)

これは、SDカードの相性など、ハード的な問題もあったが、問題のある0号機はすでに納品してしまっていたので、1号機までのリードタイムは最短で作る必要があったし、失敗したらハードウエアから撤退することになりかねなかったという。

しかし、車メーカーでの品質へのこだわりがある人材が入社してくれたことで、飛躍的に品質が向上したのだと振り返る。

JapanTaxiも生産は、深セン(JENESIS)だ。JapanTaxiの場合、デバイスはタクシー会社が管理していることもあり、ソフトウエアのアップデートは、起動時に行なえば良いと言うメリットがあったのだという。

プロダクトリリース後の開発に関して、基本はアジャイル開発だという。

最近は電子決済が多いので、そういったビジネス要件によってアップデートしてる。QR決済については問題ないが、非接触デバイスのようなものについてはハード的回収が必要な場合もある。

こういった対応への問題点は、世の中の動きが早くなってきていることだと述べた。

タクシーならではのできることを探して実装していっている

最後に、ハードを扱うのは大変なことだが、リアルなものを作っているというやりがいをメンバーが感じるようになったのだという。

実際、こんなこともつくっちゃうの?というものも作って、「ソフトエウアメーカーとは違った世界がみれるという意味でも、次のことに挑戦をしていきたい」と述べた。

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if-up2019を通して

モノを作ると一言で言っても、きっかけも、目的も、資金も、メンバー、様々だ。

今回のイベントにおいて、プロダクトを企画開発する企業が多く登壇したわけだが、「製造業」という側面で見た時、手放しに面白いとは言えない。

というのも、日本に優れた生産技術があると言っても、深センにはあらゆる用途の多くの部品メーカー、ソフトウエアメーカーがいて、そこでエコシステムを形成しているため、ある程度のことであればすべてその近辺で製造ができてしまうというところが、既存の日本の製造メーカーにとっては脅威といえるのではないだろうか。

単体のセンサーや部品の精度が高く、指名買いで発注が来る状況を誇る企業も多いが、エコシステムとしてまとまった製造が実現されていないと、全く新しいものづくりをする今回紹介されたような企業からすると、使いづらい存在とみられる可能性すらある。

株式会社ソラコム ソリューションアーキテクト 今井 雄太 氏(モデレータ)

今回ソラコムが実施してくれたif-upを通して、モノづくりがいかに大変か、そして面白いか、どういう工夫があるのか、などといった今後のものづくりのヒントとなればと思う一方で、部品メーカーや組み立てメーカーはより一層の危機感を持つべきではないかと感じた。

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