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スマートファクトリ―!現場・IoTの流れ、特に通信からみての考察 ーIoTConference2017 レポート⑦

2017年7月7日(金)、大崎ブライトコアホールにて、IoTNEWSが主催する「IoTConference2017 スマートファクトリーの今と未来」が開催された。

レポートの第七弾は、オプテックス株式会社戦略本部開発センター センター長 中村 明彦 氏の講演内容をレポートしていく。

オプテックスは、滋賀県大津市に本社を置くセンサ機器メーカーだ。工場用途では、防犯用のセンサを手掛けていて、東南アジアの工場などでは、高度なセキュリティを保つため、人でなく、機械で行いたいという要求があるということだ。

また、オプテックスグループでは、FA機器を専門に扱っている会社が、2社あり、1つが「オプテックス・エフエー株式会社」で、もう1つが、「シーシーエス株式会社」だという。

オプテックス・エフエー株式会社は、今まではセンサ単体に特化して、センサ自体の性能を上げるような方針で事業を進め来たという。しかし、最近では、「FASTUS」というFAセンサに新しい価値をプラスした新たな製品ブランドを展開し始めた。今後は基本的に自社製品は「FASTUS」ブランドで展開していく構えだ。

また、1989年に世界No.1の産業機器メーカーであるドイツのSICK AG社と合弁会社「ジック・オプテックス」を設立して以来、四半世紀にわたり数々の製品を共同開発してきたという。

また、オプテックス・エフエーは、三菱電機とも協業し、iQSS (iQ Sensor Solution)でセンサの見える化を行ったという。

三菱電機製PLCとのCC-Link通信を実現して、最近ではEthernetにも対応して来ているという。

もう一つのFA企業となるシーシーエス株式会社は、昨年からオプテックスのグループ会社となり、主に製造業向けにLED検査用照明に関する事業を行っているという。

工場で何かを生産する場合、必ず「検査」という工程が含まれる。LED検査用照明とは、検査対象物を照明で照らし、カメラで撮影、画像処理することで、良品かどうかの判断を行うものだという。

ここで、もともとの映像が綺麗にとれないと、その後画像処理を行っても、検査用の画像の精度としては低くなるため、照明を上手く点灯させることで、「検査」という目的に合致した精度の高い画像が取れるための支援をしているというのだ。

最近では、単純にLED検査用照明のレンズ、カメラなどといった部品単体での性能の問題でなく、客先で実際に、どんな製品に、どのように使われるのかがわからないと、上手く照明のチューニングが出来ないことがあると言う。

中村氏は、こうした、全体のシステムを把握した上で、デバイスを作る、「トータルソリューション提案」が非常に重要になってきていると述べた。

IoTで必要なネットワーク変換

コイズミ照明株式会社をはじめとする各社と協力し、EnOcean、BACnet、DILI、Lonworksの技術を使い、オープンで作った分散コントロールネットワークの事例を紹介したが、これはビルメンテナンスの事例で、この例からわかることとしては、「単純にスイッチを押して、照明を光らせるだけでも、マルチベンダーの機器が使われており、あちらこちらでプロトコル変換だらけ」の状態であるということだと述べた。

つまり、単純にモノをインターネットにつなぐといっても、様々な現状あるプロトコルをつないでいかなければならず、用途に応じて成長してきたプロトコルを完全に一つに束ねることが困難で、プロトコルを変換するような仕組みは今後も残るだろうと中村氏はいう。

こいった考え方を推進する中で、最近リリースして話題になった製品として、FTLINKという製品が紹介された。

装置とセンサの間は、各社オリジナルのプロトコルで通信していて、例えば、ハネウェル製のコントロールパネルに、センサをつなげようと思った場合、ハネウェルのプロトコルに合わせた通信方式でないといけない。そこで、こういった複数のプロトコルに対応して作りこんだセンサがアワードを受賞した「FITLINK」なのだだという。

シンプルなとこからスマート化

制御の世界は歴史が長く、様々な通信手段が存在し、それらを全て一掃して新しいものにするのは難しい。そこで、視点を変えたところからスマート化することが必要であると中村氏はいう。

オプテックスでは、FAの部分でなく、情報ネットワークの部分で、今までのセンサ技術と絡めてスマート化することを考えているという。特に「ラインの情報系」、「設備・ファシリティ」面から、あるいは工場にいる人の働き方からアプローチをしているということだ。

次ページは、オプテックスの提供するIoTプラットフォーム、オプテックス・センサ・コネクトやSIGFOXへの対応などを紹介

オプテックス センサ コネクト

オプテックス・センサ・コネクトは、今年の5月に発表された、IoTプラットフォームだ。オプテックス製のセンサデバイスからの情報をクラウドにつなぎ、蓄積するというところまでをやってくれるので、サービス事業者は、クラウド間連携をすることで自社のサービスにオプテックスのセンサーから取得することができるデータを、自由に利用することができるようになるのだ。

これにより、今後オプテックスは、センサーの販売だけでなく、「センサー+通信」「クラウド上のデータベース連携」といったビジネスモデルにも対応していくということだ。

さらに、オプテックスが持っていないセンサが必要であれば、競合他社のセンサも利用可能となる。これまでの競合という概念も捨て、とにかくオープンに取り組み、最終的なゴールを新しい価値としているところが興味深い。

センサー企業は、IoT社会になる中で、価格崩壊が起きるのではないかと戦々恐々としているところがあるが、非常に参考になる取り組みといえる。

SIGFOXへの対応

オプテックス・センサ・コネクトを実現する上で、必要となる通信環境の確保で、SIGFOXとの接続について説明があった。

先日、SORACOMがSIGFOXに対応するという発表があったが、SIGFOXを使って既存のセンサを簡単に繋ぐことができる端末「ドライ・コンタクト・コンバーター」を開発したという。

これまでは、LPWAの通信では、ゲートウェイやデータベースの開発が必要だったが、SIGFOXを使うことで開発が必要なくなり、ドアの開閉状況などの小さなデータしか扱わない場合には、十分使えるのではないか、と述べた。

ドライコンタクトコンバーターは、接点出力センサのIoT化を簡単に実現することができ、省配線可能な電池駆動、屋外使用可能な防水防塵構造となっていて、1日10回の送信で5年間持つという。

従来は、機器の異常があるとパトライトが光るということがあったが、今後はドライコンタクトコンバーターを設置すれば、SIGFOXを経由してスマホなどに情報が届くようになる。

駐車場のクルマの満空情報通知サービス

また、オプテックス・センサ・コネクトの事例として、すでに新宿で稼働しているサービスで、駐車場におけるクルマの満空を検知する事例の紹介があった。

車両検知センサ ViiKは、工場など出入りの多い場所でのクルマの管理や、社員数が多い会社で、駐車場のどこが空いているかわからないというときに使えるという。

働き方改革 -会議室のIoT

さらに、会社の会議室などに使える、EnOceanの技術を使った、電源不要の材質検知センサとスイッチの紹介があった。

人感センサが検知すると、EnOceanでプラットフォームのゲートウェイに接続し、SORACOM のプラットフォームを通じて、WingArc1stのMotionBoard cloudに情報があがるという事例だ。

OPTEXのセンサが受け入れられる理由

もっと安価で似たようなセンサが多くあるのではないか?という疑問に対し、中村氏は、「オプテックスの製品は少々高いが、実はノウハウがたくさんある」と述べ、オプテックスのセンサの特徴として、3つあげた。

1.専業メーカーとして約40年
2.SEC業界・自動ドア業界で培った高信頼性
3.屋外・防水機器開発のノウハウ

最後に、よいセンサとIoTの仕組みが重要である、とし、これからはビジネスパートナーと共創を加速し、ソリューションを提供していくべき、と締めた。

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