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我国製造業の現状と課題ーConnected Industriesの推進に向けて ーIoTConference2017 基調講演 レポート①

2017年7月7日(金)、大崎ブライトコアホールにて、IoTNEWS主催「IoTConference2017 スマートファクトリーの今と未来」を開催した。

2017年のIoTConferenceでは、スマートファクトリーをメインテーマとして、午前中はマーケット全体の動きがどのようになっているか今後の製造業はどうあるべきかといったどちらかというと概念論に近い内容を、また、午後は現在どのようなスマートファクトリーソリューションが導入されており、どのような課題やその解決策があるのか、といった具体的なことに関して論じられた。

本記事では、IoTConference2017基調講演 経済産業省 製造産業局 産業機械課 長谷川 洋 氏による「我が国製造業の現状と課題 ~Connected Industriesの推進に向けて~」のレポートを行う。

IoTConference2017 経済産業省 長谷川洋氏
経済産業省 製造産業局 産業機械課 長谷川 洋 氏

製造業における今年のキーワード

モノ売りから顧客の困りごとを解決する流れが出てきている。そんな中、経済産業省としては、2015年にはロボット革命イニシアティブ(RRI)、インダストリアルバリューチェーンイニシアティブ(IVI)、IoT推進ラボ、などの取り組みを進めてきた。

長谷川氏は、製造業においては、「標準化」というテーマについて、下記の4つが今年のキーワードになると述べた。

  • 人材
  • データ
  • アジア
  • 規制制度改革

規格の標準化やセキュリティに関しては日本国内でも検討が進んでいるが、一方で人材をどのように確保するのか、データをどのように収集し活用するのかというところが課題になってきているという。

「実証から普及へ」というテーマに関して、民間の先進的事例なども多く出てきている。今後も事例を推進する政策を行っていきたい。また、ユーザー側の最終製品に近い自動車・航空機・建機・農機などのIoT化にも注目していると述べた。

「欧米からアジアへ」というテーマに関して、実際に製造をするのはアジアであり、そこに注目すべきとの見解を述べた。

最後に、「サプライヤーからユーザの巻き込みへ」というテーマについて、ITベンダーやサプライヤーの動きが進んでいることにも触れた。

CeBIT2017に見る、安倍首相の本気

CeBIT2017のウェルカムナイトで安倍首相がスピーチをしたのは記憶に新しい。長谷川氏によると、日本の首相が業種(製造業)に限ったスピーチを海外で行うことは珍しいのだという。

その場で安倍首相は、これからの製造業はかわり、機械と機械や機械と人などつながりを大事にしていくことになる。AIが人の仕事を奪うという不安があるといわれるが、日本は少子高齢化が進む中、人口が減ってもイノベーションができるということを述べている点について紹介をした。

日本が目指すべき勝ち方

IoTConference2017_METI_ITOT

 

図は過去に利用したものであるため割り引いてみる必要があると前置きをした上で、長谷川氏はソフトウェア領域は米国、製造現場などのハードウェア領域はドイツが強いという状況の中で、日本はソフトウェア領域、ハードウェア領域、その2つの領域の真ん中にあるソリューション領域、この3つの領域のどこで勝っていくかを考えることが必要であると述べた。

ドイツのシーメンスや米国のクラウド企業などをみていると、ネットからリアルへ、リアルからネットへという動きが盛んであるコトがわかる。生産の領域だけに閉じることなく、バリューチェーン全体をデジタル化していくという動きに対応していくことが重要だと述べた。

そのために、国としては「Connected Industries」という方針を発表しているというのだ。
 

Connected Industries

経済産業省のホームページによると、“Connected Industries”は、様々なつながりにより新たな付加価値が創出される産業社会のことだ。

デジタル化が進展する中、我が国の強みである高い「技術力」や高度な「現場力」を活かした、ソリューション志向の新たな産業社会の構築を目指し、現場を熟知する知見に裏付けられた臨機応変な課題解決力、継続的なカイゼ ン活動などが活かせる、人間本位の産業社会を創り上げることが目的となる。

具体的には、

  • 人と機械、システムが対立するコトなく協調する
  • 地域や世界の協力と協働を通して課題を解決する
  • デジタル技術の進展に即した人材教育

という3つが柱なのだとされている。

IOTC_smile

 

実態をみていくと、日本では生産部門の改善活動などによってある程度の効率化が進んでいるものの、設計やアフターサービス、ブランディングなどと比べると付加価値のボリュームが生産では小さくなる傾向にある。図の右側の欧米のように生産・製造を疎かにすることなく、付加価値レベルが高い領域のIoT化も進めていくべきだと述べた。

IoTConference2017_METI_data

 

また、2015年から2016年にかけてデータを収集する企業は増えたが、実際にデータを利用ができている企業の割合は減ってきている。データの活用ができるIT人材がいないといった場合はやり方が2つ考えられ、「自社内でデータを活用できる人材を育成する。」もしくは、「他社と協力をしてデータの利活用を行う」といった方法が考えられるという。

スマート工場の事例も多くでてきていて、sitateruという、洋服のためのモノづくり版シェアリングエコノミーの登場や、駿河精機の短納期製造や人工知能の活用の例など多くの事例が出てきていることを紹介した。

国際協力関係の推移

IoTConference2017_METI_relation

国際関係において、「デジタル保護主義」というのがあるが、これは国のレベルでやるべきで、国によって制度が異なることから被る不利益もあると述べた。また、グローバルレベルでのサプライチェーンの動きが激しくなってきていることを前提にも考える必要があるのだ。

そういった中、グローバルな視野で状況を見ると、まず、ドイツは多くの国と2国間連携を進めている。また、アジアでいうと中国・タイ・インドなどに欧米企業が入ってきている。ドイツが世界の製造業を牽引している感があるが、日本企業もデジタル化を進めていく中で、アジア圏に参入してくる欧米企業と肩を並べていくための戦略を考える必要があるのだと述べた。

ドイツとの連携領域

ドイツはシステム的アプローチ、日本は技術力・現場力を強みとしており、それぞれの強みがあるため標準化・セキュリティ・規制改革、中小企業、研究開発といったところを中心として協力できるところは協力していけば良いのではないかと述べた。

基盤を整えて、競争するのはその先でよいと。例えば、サイバーセキュリティの対策のための勉強などは一緒にやる意義がわかりやすい。

IoTConference2017 経済産業省 長谷川洋氏

こういった、両者でできるところをどんどん探していき、民間レベルでの協力とその支援を国でやっていきたいとの考えを述べた。

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