工場の能力増強を行う一つの解
ではこれをどう改善していくのかという一つの解として、「ロボット型デジタルジョブショップ」という方法があげられます。「ジョブショップ」とは、設備を機能別にまとめ、異なる製造工程を持つ製品が、同じ設備を共有して製造する生産方式です。
「ロボット型デジタルジョブショップ」であれば、段取り替えにも非常に強くなります。仮にどこかが止まったとしても、例えば2ステーションずつ作っておけば、半分の生産量になったとしても、完全に止まることはありません。作っていく中でボトルネック工程が分かれば、そこから増強していくことができます。
そうすれば、全体の生産量をフレキシブルに向上することができます。しかし、同じものを大量につくるのであれば、「一貫ラインの方が流れるのではないか」という疑問が当然出てきます。
しかし、実際にシミュレーションしてみると、単一の商品を流した時でも能力が一貫ラインに負けることはなく、当然ながらライン自体はフレキシブルになるというケースも多くあります。
そして、このフレキシブルラインの強みは、少量多品種の製品製造にも強いというところです。
例えばBMW傘下のロールスロイスは、100人のクルマのオーナーがいた場合、100台全部について内装からカスタマイズします。100台作り分けるために、現場の変更が加わり、それがスピードアップされていきます。一貫ラインではこの変更が非常に難しくなります。
これの例でわかることは、「作りわけができる工場の方が良い」ということです。
一方で、量産モデルである、BMWの2シリーズを生産する際は、一貫ラインでつくられた量産工場の方が、設備投資も安くつき生産能力としても有利かもしれません。
つまり、良い工場というのは、常にマーケットとセットで評価していかなければなりません。
決して一貫ラインが悪いと言っているわけではなく、色んな機能のものを作り分けようとすると、作り分けできる工場の方が良く、昔のように1つのモノを何百、何千作ればいいのであれば、一貫ラインの方が良い、ということです。
実際、段取り替えなどはなく、同じものをたくさん作る、半導体ラインの自動化というのは、10年20年前からそれほど変わっていません。そもそもロボットは少量多品種をプログラムによって切り替えて作り分けられる、というメリットがありますので、フレキシブルな製造が本質的であると考えています。
こういったことが、言葉や図面で理解を得られることはほとんどないので、本質的なことを提案できる会社というのはなかなかありませんでした。そこで、私どもはこれができるということが売りとなります。
小泉: フレキシブルな製造現場のアドバンテージは理解ができました。しかし、こういった工場ラインの設計は誰でもできるものなのでしょうか。
次ページは、「フレキシブルな製造ラインは誰でも作るれるのか」
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。