近年、製造業では生産年齢人口の減少による人手不足や、熟練技術者・設計者の高齢化が進む中、技術・経験・ノウハウを次世代に伝承するとともにデジタル技術を活用し、これらを見える化することが急務となっている。
従来のタイヤ開発における官能評価では、究極の完成度を求めてテストドライバーの定性的な評価に擬音が使われることがあり、同じ現象でもドライバーによって表現が異なることがあった。また、官能評価の解読には経験・ノウハウが必要で、評価結果から改良案を導くノウハウが熟練設計者に集中していた。
住友ゴム工業株式会社(以下、住友ゴム)と、日本電気株式会社(以下、NEC)は協業で、タイヤ開発における匠(熟練設計者)のノウハウのAI化に成功したと発表した。
具体的には、住友ゴムの熟練設計者とNECのデータサイエンティストが共同で、テストドライバーの定性評価を項目化し、評価を読み解く経験・ノウハウを体系化したAIの学習データへ加工した。さらに、熟練設計者は過去に開発したタイヤの官能評価を項目分けした体系化データを作成し、結果に紐づく改良案も体系化した。
同システムにより、これまではOJTによる属人的な伝承が中心だった匠の思考プロセスを見える化し、経験が浅い設計者への改良案考案過程やノウハウなどの技能伝承も可能にする。
住友ゴムとNECは今後、AIによって答えを出すだけではなく、匠の思考プロセスを見える化することで、若手設計者の理解を深め真の技能伝承を目指すために、グラフAIを活用する計画だ。また住友ゴムは、2023年から開発するモーターサイクル用タイヤで同システムを活用し、その後乗用車用タイヤなど他のカテゴリーにも展開するとともに、材料開発などと連携してタイヤ開発AIプラットフォームを構築していく計画とのことだ。
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