フジクラがマルチホップと低消費電力を両立させる無線通信技術を開発
本展示会では、エナジーハーベスティングコンソーシアムに参画する各企業が出展していた。同コンソーシアムは、日本国内の企業の力を結集し、エナジーハーベスティング技術(環境発電技術)を国際的に競争力のあるビジネスとして実現することを目的に設立された団体だ。
その会員企業でもあるフジクラは、エナジーハーベスト(EH)型センサシステムを開発した。このセンサシステムには、大きく二つの技術が含まれる。
一つは、無線通信における電力の自己消費を低減する技術だ。無線通信において、基地局と端末の距離が遠い場合利用できない、あるいは壁が複数あると利用できないなどの問題があることから、それぞれの端末が中継機としての役割も持つマルチホップ機能の開発が期待されている。
しかし、各社マルチホップ技術を開発するなか、中継する場合の常時待ち受けによる消費電力の増大が課題となっていた。今回開発されたフジクラの通信モジュールは独自技術によりその電力消費がきわめて少ないものになっている。
もう一つは、色素増感太陽電池だ。照度の小さい環境でも高い発電効率を実現する。
この二つを組み合わせたIoT向けセンサシステムは、温度、湿度、気圧、照度、人感の5種類のデータを5分間隔で収集できる(標準タイプ)。
そして、電源が一次電池と太陽電池(EH)のハイブリッドになっており、照度400 luxであれば電池の寿命は約7年間(EHと一次電池の両方が動作:ハイブリッド)。
照度600 lux以上であれば完全EH動作が可能だ(一次電池不要)。例として、屋外であれば日陰でも完全EH動作が可能だという。
フジクラは同技術により、「ET/IoT Technology AWARD 2017」IoT部門の優秀賞に選ばれている。
NECのセンサーからクラウド・AIまで幅広く提供するIoTソリューション
NECはIoTをキーワードにしてさまざまな製品・サービスを展示していた。それらのベースとなるのが同社のAI技術群「NEC the WISE」。そして、その中核である顔認証技術「NeoFace」などを用いたさまざまなソリューションを展開していた。
・右のPC画面は、「部品B」を認識したことを表している
今回の展示では、物の種類・個数の物品管理システムも展示していた。たとえば食品工場において、ベルトコンベアから流れてくる製品の個数や状態を識別する作業は、現状では人間の目で行っていることがほとんどである。
従って、このような物体認識のソリューションは現場の効率化や生産ラインの拡張などにつながる。実際に、株式会社北研の馬頭工場ではしいたけの個数を識別する目的でこのシステムを活用し、成果が出ているという。
写真にあるデモは、3種類のミニカーを識別するというもの。それぞれ色も形も違うミニカーだが、機械学習によりどの角度から見ても識別が可能になっている。今後は、たとえば工場で製造されたワークのちょっとした傷なども識別できるようにするなど、活用できる範囲を広げていきたいとのことだ。
なお、このシステムはその識別状況をリアルタイムで見える化・モニタリングできるソフトウェアもパッケージに含まれ、顧客としてはすぐに活用しやすいソリューションになっている。
さらに、「ET/IoT Technology AWARD 2017」ET部門の優秀賞に選ばれたNECの技術。ガス検知をレーザーで行うというものも紹介されていた。
従来、二酸化炭素などのガスは、センサーに搭載された半導体にガスが吸着することで検知するのが一般的だった。しかし、今回の技術を使えば、遠方にある微量のガスでも、レーザー照射範囲にあれば検知することができる。そのため、数十m区間まで監視エリアを広域化することができるのだ。
また、ガス検知の応答速度は半導体タイプよりも速くなり(60秒→1秒)、検出単位はppm~ppbで可能。光ファイバーと接続すれば、検知する場所もさまざまに選ぶことができ、設備本体(写真左)も邪魔にならない別の場所に設置可能だ。
これはレーザーの技術であり、IoTと直接は関係ないかもしれない。しかしセンサー技術の進歩により、可能となるIoTソリューションの幅も広がることが期待される。
実際に、IoTをテーマに掲げるNECとしては、このセンサーを用いて自社のクラウド環境やAI技術と一体化したソリューションも今後展開していくとのことだ。
1チップ化によるIoTソリューションを展開するソシオネクスト
SoCのメーカーであるソシオネクストは、SoC技術をベースにさまざまな製品を展示していた。IoTに関しては、IoT機器の原理試作からコアとなる専用SoCの開発までワンストップで対応してくれるというソリューションが提案されていた。
左:スピーカー(カメラから人物を認識すると、音声を発生する)
右:専用SoCを組み込んだボード
専用SoCの開発の一例として、顔認識のデモキットが展示されていた。顔認識というと本展示会でも多く見かけたが、同社ではチップの開発から対応してくれるため顧客は自社に合った自前のシステムを構築できるというメリットがある。
また、専用SoCの開発により部品削減・小型化が実現できることはさまざまなデバイス、アプリケーションが広がるIoTで差別化を図るのに重要なことだろう。写真にあるのは、衛星写真やテレビ放送、GPSなど顧客のRFシステム向けにカスタマイズされたSoCだが、従来の部品数8個から1個へと削減できたという。
トレンドマイクロのIoT向けセキュリティソリューション
本展示会では、セキュリティも大きなテーマとなっていた。特にIoTのエッジデバイスは仕様やコストの理由からセキュリティを考慮した設計がなされていないケースが多いため、重要となる。
トレンドマイクロは、IoTにおけるセキュリティの重要性と、そのソリューションについてプレゼンを行っていた。同社のブースでは、ルネサスエレクトロニクスの車載コンピュータR-Car向けの事例などさまざまな展示があった。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。