平均寿命の伸びにともない、高齢者の運動器(骨など、体を支え動かす組織や器官)の健康と、治療改善による生活の質の向上への意識が高まっている。日本で骨粗しょう症の通院者数は230万人以上となっており、歩行など運動器の改善を目的にした人工関節置換術を受ける患者は60~80歳代で増加し、年間17万例以上の手術が行われている。
株式会社島津製作所は、X線TVシステム「SONIALVISION G4」のオプションとして、深層学習を応用したAI技術を用いて診療放射線技師の技量をノウハウや技量に頼らず撮影ボタンひとつで最適な画像を提供する新ソフトウェア「T-smart PRO」を全世界向けに、「SmartBMD AI Assist」を国内向けに販売を開始した。
T-smart PROは、推奨の再構成パラメータを自動で設定するトモシンセシス(※)アプリケーションである。人工関節や、骨を固定するワイヤなど金属物を用いた治療後には、詳細に患部を観察できるX線断層画像への要望があるが。同ソフトウェアは、収集したデータから推奨のパラメータを自動設定し、トモシンセシスの画像再構成を行うことができる。
同システムによるトモシンセシスは、低被ばくで金属アーチファクト(金属物の影響による画像の乱れ)を低減するパラメータを自動で設定するため金属の抽出精度が向上したことから、金属アーチファクトを最小限に抑えた再構成画像を簡単に取得することができる。さらに、立位での撮影が可能であり、日常の荷重状態で断層画像が得られることから、患部の観察に非常に有用性が高いと評価を受けているという。
また、手動設定の場合、関心領域が再構成画像から外れる可能性があるが、同システムでは被写体の高さや体厚を推定し、断層再構成の範囲を自動設定できるので、被検者に無理のない姿勢でトモシンセシス検査を受診することができる。
骨密度の測定には、X線画像上で骨領域を抽出して区分けする作業(セグメンテーション)が必要となる。セグメンテーションには一定の経験と作業時間を要するが、同ソフトウェアでは、測定に用いる腰椎のX線画像に対し、深層学習を応用したAI技術で迅速にセグメンテーションを実施できるという。手間をかけずに常に安定した画像で測定できるため、作業者毎の手動調整のばらつきを軽減することができ、医療現場の作業効率も向上する。
新しい2つのソフトウェアによって、手間をかけずに最適な画像が得られることで、検査に要する時間や医療従事者の負担を軽減し、多忙な医療現場での作業効率および装置稼働率の向上を支援する。
なお、ソフトウェアの価格はそれぞれ200万円(税別)となっている。
※ トモシンセシス:Tomography(断層撮影)とSynthesis(合成)から作られた医療用語で、連続した複数枚のX線撮影画像から断層画像を作り出す技術。
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