世界の肺がん患者数は年間約248万人で、肺がんの約80~85%は非小細胞肺がん(Non-small cell lung cancer:以下、NSCLC)だ。特に、非小細胞肺がん患者の3人に1人は、ステージIII(局所進行)であり、腫瘍の大半は外科的に切除できない状況だ。
ステージIIIのNSCLCは、局所的にがんがどれほど拡がっているかで3つのサブカテゴリー(III A、III B、III C)に分類され、がんが体の他の部位に広がっている(転移している)ステージIVと違い、ステージIIIの患者の大半には根治を目指した治療が提供される。
近年の放射線治療の高度化や免疫チェックポイント阻害薬の登場による治療法の進展に伴い、切除不能なステージIII NSCLC患者にとって、化学放射線療法の重要性が高まっている。
化学放射線療法は、がんの治療法の一つで、放射線療法と化学療法を同時に組み合わせる治療法だ。肺癌診療ガイドラインにおいて、全身状態が良好な場合の切除不能なステージIII NSCLCの治療法として、根治を目的とした化学放射線療法が推奨されている。
しかし、放射線治療計画の作成は、ステージIII NSCLCの腫瘍の大きさとリンパ節転移の位置のパターンが多岐にわたること、また、放射線の影響による肺臓炎などの有害事象を引き起こさないようにする必要があることから難しく、医療現場の負担となっていた。
そこで富士フイルム株式会社とアストラゼネカ株式会社は、切除不能なステージIII非小細胞肺がん(Non-small cell lung cancer:以下、NSCLC)に対する化学放射線療法の過去症例を検索できる、医療情報システムを共同で開発した。
今回開発されたシステムでは、両社が2021年より共同で開発を進めてきた医療情報システムで、切除不能なステージIII NSCLCに対する化学放射線療法の過去症例の検索に加え、放射線治療計画の表示が可能だ。
アストラゼネカが14の医療機関からNSCLCに対して、化学放射線療法が適用された約1900症例の放射線治療計画の情報を収集し、富士フイルムがその情報のデータベース化および検索機能の開発を行った。
医師がCT画像をシステムに入力し、腫瘍の位置や検索条件を指定すると、データベースから腫瘍の中心の相対位置が近い過去症例を検索し、医師が参照したい症例の放射線治療計画の情報を表示して、医師による放射線治療計画の作成をサポートする。
なお富士フイルムは、同システムの検索機能を、同社が提供する3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT(シナプス ヴィンセント)」の新バージョン「SYNAPSE VINCENT Ver7.0」にオプション機能として搭載した。
そして、富士フイルムのグループ会社である富士フイルムメディカル株式会社を通じて、2024年4月10日より「SYNAPSE VINCENT Ver7.0」の提供を開始するとしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。