富士ソフト株式会社と株式会社 安藤・間(以下、安藤ハザマ)は、Microsoftが提供するMixed Reality(複合現実)端末の「HoloLens」を活用した室内環境可視化技術「環境ウォッチ」を2018年に開発している。
環境ウォッチのデモンストレーションの参加者より、室内環境の事前シミュレーション結果を表示する機能に特化していたことから、リアルタイムで室内の環境状況を見える化したいという声が寄せられていた。
このほど両社は、Microsoftが提供するヘッドマウントディスプレイ端末「HoloLens2」を活用した室内環境可視化技術「環境ウォッチver.2」を開発し、安藤ハザマ技術研究所にて運用を開始した。
同技術では、環境ウォッチで備えた事前実施したシミュレーション結果の表示機能に加え、センサ類で計測した室内環境の変化を、クラウド連携により2分間隔でモデルに反映させながら実空間に表示することができる。クラウドに蓄積したデータを利用し、時間を遡って室内環境を確認することも可能だ。
また、専用のWebアプリを使用することで、複数の現場の室内環境データ(3Dコンテンツ(※1))をPC上で簡単に管理できる。3Dコンテンツの位置合わせにはQRコードを使用する。複数箇所に設置することで、端末を利用中に生じる、実空間とコンテンツの位置ズレを常に修正することができる。
(天井設置の(空気)温度センサのデータを計測用サーバで収集し、そのサーバからクラウドを介して環境ウォッチver.2に転送することで、実空間でのリアルタイム表示を実現。上図は空調の効果で室内温度が変化した様子)
なお、2022年2月に安藤ハザマ技術研究所にて同技術を適用し、運用を開始している。所内に設置しているZEB実証エリア(※2)にて温度センサデータと連携した室内温度分布のリアルタイム表示機能を適用するとともに、事前の3Dシミュレーション結果や設計BIM(※3)データを複数切り替えてAR表示する機能を適用している。
両社は今後、竣工検査時の空調設備の確認と室内温度計測支援や、建物引き渡し時の利用者とのコミュニケーションツールとして、設計業務や施工現場へ積極的に展開を図る予定だ。また、現在は温度や湿度などスカラー量のドット表示のみの対応だが、今後は風向風速などのベクトル量やサーモグラフィのような面データ表示への対応に取り組むとしている。加えて、汚染物質の拡散度合や空間の快適性の可視化など、適用先拡大に向けて開発を進めていく。
※1 3Dコンテンツ:同技術によりAR表示する、温度・湿度センサデータや事前シミュレーション結果の3Dモデルを総称してこのように呼称している。
※2 ZEB実証エリア:ZEB(Net Zero Energy Building)に関する要素技術について、省エネルギー性や快適性を実証することを目的として、安藤ハザマ技術研究所内整備されたエリア。
※3 BIM(Building Information Modeling):コンピュータ上に再現した3次元の建物モデルにコスト、材料などの情報を付加したもの。
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