近年、公衆衛生獣医師と畜検査員の確保は自治体にとって課題となっているが、その育成環境は整っていない状況である。具体的には、検査員育成に必要となる食肉衛生検査所での学生向けの実習は、入場が畜場条例で規制され、また衛生保持や管理面からその機会が制限されている。
ここ数年はCOVID-19の影響により、部外者の入場は禁止となりさらに制限が厳しくなっている。また、食肉衛生検査所には危険な場所もあることから実習生の立ち位置が十分に確保できず、結果的に短時間での実習となり、見学のみで終わってしまうケースもある。
NECソリューションイノベータ株式会社と学校法人酪農学園 酪農学園大学は、獣医学系大学における学生の食肉衛生検査トレーニング向けに、VRを活用した実習用教材を共同で研究開発した。同教材は、4月から酪農学園大学 獣医学群獣医学類の授業で利用を開始する。 そしてNECソリューションイノベータでは、同教材を「NEC 食肉衛生検査実習VR」として、4月より提供を開始する。
NEC 食肉衛生検査実習VRは、3次元のCGによって食肉衛生検査所を再現し、バーチャル空間で食肉衛生検査を体験・実習できるVRコンテンツである。食肉衛生検査所の検査室、検査に必要な機材、検査対象の臓器などをリアルに再現している。これにより、実際の施設の中で検査しているような没入感を体験でき、質の高い学習環境の実現を支援する。
また「解体後検査」のうち、牛の内臓検査、枝肉検査から実習する検査を選択し、VR内の指示に従って操作するだけで検査方法を学習できる。これにより、各検査におけるそれぞれの臓器の検査ポイントや検査方法、また必要に応じて切開方法に関する学習を支援する。
さらに、一部廃棄や全部廃棄となる疾病の特徴について、事例(2次元の画像)を併用して学習することも可能だ。 テストモードとして、各臓器の2次元の画像を確認し、疾病または病変の判定とその対応についてテスト形式で学習することもできる。多くの事例がランダムに出題されるため、学習効果がより高まるという。
NECソリューションイノベータは、NEC 食肉衛生検査実習VRの販売目標として、今後2年間で全国の約3割の獣医学系大学への導入を目指すとしている。
なお、販売価格は学生1名あたりの年間ライセンスが15,000円で、ハードウェア費用(Oculus Quest2)は別途必要となる。
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