10月23日から開催された第46回東京モーターショー2019の開催レポート第三弾となる。
今回のモーターショーは、OPEN FUTUREのテーマのもと、近未来を感じることのできる展示エリアとして「FUTURE EXPO」も同時開催されている。そんな今回は、自動車設計を行うにあたって、デジタルツインを活用したシート設計を行う日本発条株式会社のバーチャル開発についてとりあげたい。
日本発条株式会社は、ばねやサスペンションなどの加工技術をもとに、自動車、情報通信、産業・生活分野といったシーンにおいて、使われている製品を支える部品メーカーだ。これらの技術は、自動車シートにも活用されている。
通常、シートをひとつ作るための工程は設計、試作と評価を何度も繰り返した後、ようやく生産開始となる。そのなかで、特に試作と評価の工程は時間もかかれば、試作のための費用もかなりかかっていたという。
しかし、今回バーチャル開発では、デジタルで設計しながらシートに伝わる振動を解析、計算、シミュレーションを繰り返すことが可能なため、試作と評価における工程を大幅短縮できたという。
日本発条株式会社では、シートに伝わる振動は人体にどのように振動が伝わるかという人体モデルと、シートそのもののモデルをかけあわせることで、人間が自動車シートに座ったとき、どのような振動がどのようにシートから人へ伝わるか、それはどれほどの強さかなどを高精度に予測することが可能となった。本来、シートに座ったときの心地よさ、快適さ(シートに座ったときの、柔らかさや包み込まれるような沈み込み感など)は一般的な3DCAD等でシミュレーションすることは難しい。
また、シートにおける、パーツごとの振動についても分析可能となり、実際に試作品を作りその後に同様の振動を与え検証すると、予測値とほぼ同じ数値で振動が伝わっていることを実証できたという。
加えて、日本発条株式会社ではシートと人体モデルの開発経験から、着座状態での振動低減、軽量化を実現するシートフレーム構造を探索する手法を確立させたという。これによって、設計パラメータを設定することで「安全」「軽量」「快適な」シート開発の期間を短縮化することに成功した。
さらに、今後への取り組みとしてシート構造最適化結果を機械学習を用いて分析をおこなっている。それによって、シートにおけるパーツ部品仕様を変更すると、座り心地はどのように変化するかという知見を活用し、より良いシートを提供できる仕組みを検討しているという。
今まで長年勤務しているベテラン社員が、それまでの経験と感覚で調整していた試作の工程も、デジタル上での設計・シミュレーションによって開発におけるコストを大幅に削減することが可能になった。
TOKYO MOTOR SHOWは、2019年10月24日(木)から11月4日(月・祝)までの12日間(一般公開は10月25日(金)から)開催されている。今回取り上げたデジタルツイン活用の取り組みも展示されているので、ぜひ「部品・機械器具/モビリティ関連サービス」エリア(国際展示場西3~4展示場)にも足を運んでみてほしい。
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