IDC Japan株式会社は、国内エンタープライズインフラにおけるシステムタイプ別市場規模とベンダーシェアを発表した。エンタープライズインフラ市場とは、サーバー、エンタープライズストレージシステム(ExternalおよびStorage Expansionのみ)を合算した市場のことだ。
2018年の国内エンタープライズインフラ市場は、前年比6.7%増の6,785億円であった(トップ画像参照)。富士通が前年比0.1%増でシェア21.7%を獲得して1位となり、次いでNEC、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)、デル、日立製作所、IBMの順だった。
上位ベンダー6社のうち、前年比プラス成長を達成したのは、富士通、HPE、デルの3社だ。特にデルは前年比45.5%増と高成長を達成し、前年の7位から4位に躍進した。同社の高成長は、デルとEMCの統合による顧客カバレッジ/製品カバレッジの拡大によるものだ。
また、国内エンタープライズインフラ市場の売上額構成比をシステムタイプ別に見ると、SoR(※1)が全体の41.0%、SoE(※2)/SoI(※3)が12.3%、Otherが46.7%を占めた。前年比成長率は、SoRが4.7%増、SoE/SoIが11.9%増、Otherが7.2%増であった。SoE/SoIが二桁成長したのは、DX関連の新規需要が厚みを増してきたことが背景にある。特にAIやML(Machine Learning)/DL(Deep Learning)関連での需要が寄与したとIDCではみている。
システムタイプ別に国内エンタープライズインフラ市場を見ると、成長余力があるのはSoE/SoI向けエンタープライズインフラ市場だ。また、配備モデル別に同市場を見ると、システムタイプに関わらず、トラディショナル(非クラウド)からクラウドへのシフトが進行している。
これらの状況を踏まえると、ハードウェアからミドルウェア、アプリケーション、さらにはクラウドサービスなどを総合的に提供することが訴求ポイントとなる顧客層と、エコシステムを通してサーバーやストレージといったエンタープライズインフラを提供する方が適している顧客層とに分かれる。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャのグループマネージャーである福冨 里志氏は、「総合ITベンダーを標榜してきたベンダーが、成熟した国内市場で両方の顧客層をターゲットとする場合、自社の提供する製品/サービスとエコシステムの他の参加者が提供するソリューションが競合するといった、相容れない部分がある。この点に対して従来よりも踏み込んだ戦略と実効性のある戦略遂行上の仕組み作りが求められる」と述べた。
※1 SoR(Systems of Record):法人や個人事業主の事業活動(商取引)や公的機関における公的サービス提供活動の記録や処理を行うシステムである。
※2 SoE(Systems of Engagement):エンゲージメントには外部エンゲージメントと内部エンゲージメントがある。外部エンゲージメントは主に顧客および取引先との関係性である。内部エンゲージメントは社員や従業員との関係性である。ここでは顧客エンゲージメントに関わるシステムのみをSoEとして扱う。
※3 SoI(Systems of Insight):収集したさまざまなデータの分析を通して、洞察(インサイト)を得るためのシステムである。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。