食品ロスは、年間523万トン発生しており、そのうち半数以上の279万トンは企業などが排出する事業系の食品ロスである。これらの食品ロス発生の主な要因の一つとして、サプライチェーンの最下流である最終顧客と直接接点を持つ小売業者において、正確な需要予測が出来ていないことが挙げられている。
また、流通データを製造・卸・小売にわたるサプライチェーン全体で共有していないことも、事業系の食品ロスが発生している大きな要因の一つだ。製造業者は、卸売業者を経由して小売業者に納品された製品の在庫状況や次回の受注計画を知らされていないため、過剰生産を行い、過剰在庫を引き起こすことが多い。
こうした中、今村商事株式会社、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)、株式会社スーパー細川、株式会社九州シジシー、旭食品株式会社、九一庵食品協業組合、フジミツ株式会社の7社は、需要予測の結果を食品流通上の製造・卸・小売間で連携することで、食品ロス対策やサプライチェーンの効率化、売り上げ向上への効果を検証する実証実験を行うことを発表した。
なお、この実証実験は、経済産業省委託事業「令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業に採択されたもので、2024年1月22日から2024年2月23日まで、大分県・福岡県内で実施する予定だ。
実証実験では、顧客情報を含むID-POSデータを用いた需要予測を行うことによって、小売業・卸売業の発注精度がどの程度向上するのかを検証する。さらに、需要予測データを製造業と連携させることで、過剰生産を抑止するための生産計画の可能性についても検証する。
具体的には、小売業者であるスーパー細川のポイントカードからID-POSデータを取得し、卸売業者である九州シジシーおよび旭食品に共有する。
次に、卸売業者は共有されたID-POSデータを基に需要予測を行い、その後、卸売業者から製造業者である九一庵およびフジミツ、そしてスーパー細川へ需要予測データの共有を行う。スーパー細川では、受け取った需要予測データを基に発注量を決定し、卸売業者・製造業者に共有する。
最終顧客の本来の需要を高い精度で予測し、その結果を製造・卸・小売間でデータ連携を行うことで、サプライチェーンの上流からも早期に見えるようにする仕組みの構築を目指す。対象商品は、賞味期限が短く、食品ロスの発生が生じやすいとされている和日配(豆腐・練り物など)だ。
また、製造業者での納品リードタイムを緩和することで、見込みではなく実際の発注量に近しい量の生産を行うことによる、過剰生産の削減についての検証も行う。
現在の商慣習では、適正な発注量を把握することが難しい納品日の前日にも発注を受けており、精度の低い見込み生産の温床となっている。そこで実証実験では、対象製品の一部について、需要予測に基づいた発注量を、納品日の2日前に製造業者に共有する。
なお、実証実験では、実際の発注データの連携を行うが、それによる生産量の変更は行わず、机上データで可能性を検証する。
7社は実証実験の成果について、後日発表予定だとしている。
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