複数のロボットを制御する工場の構築においては、基盤となる産業用イーサネットプロトコルを決定し、そのプロトコルが使用可能なロボットや操作系機器を使用する必要があるため、機器や制御ソフトの選定自由度や拡張性が課題だ。
また、ロボットを操作するための機器は、ロボットごとに用意されているため、工場内に多くの機器を設置する必要があった。
そこで日本電信電話株式会社(以下、NTT)と千歳科学技術大学は、工場内の産業用ロボットを、ネットワーク越しのサーバ上で制御する実証実験を行い、遠隔制御でも滞りなく制御でき、産業用ネットワーク機能の入替ができることを確認した。
従来、ロボットを制御するためのプロトコルドライバと、画像解析などの高度な制御を行う制御機能は、ロボットごとに専用の操作系機器に実装され、ベンダ独自仕様で作られていた。
両者はこれら専用機器に実装されている機能を分類し、ロボットと通信するプロトコルドライバレイヤと、ロボットの動作をコントロールする制御機能レイヤ、上位管理装置との連携を司る管理ドライバレイヤに分離し、それらのソフト化に成功した。
プロトコルドライバは、ロボットが対応しているプロトコルとの互換性が必要だが、プロトコルドライバのソフト化と複数プロトコルの対応によって、ロボットのプロトコルに依存することなく、ロボットを制御できるようになる。
また、制御機能は、ロボットの動作制御だけでなく画像解析による操作の判断の機能を有し、そのソフト化の実現によって動作内容に応じて切替・更新できることが可能になる。
管理ドライバは、他のシステムとの連携制御を可能とするインタフェース機能だ。ネットワーク機器をリモートで制御するプロトコル「OpenFlow」や、Webアーキテクチャのスタイルのひとつである「REST API」対応により、ネットワークとの連携制御やその他の機構との連携制御が可能になる。
提案されたサーバアーキテクチャで産業用ネットワーク機能をソフト化することで、下図に示すような構成で、操作系機能をエッジ拠点に配置する構成が可能になる。
このソフト化技術により、ロボットの機器選定の自由度が高まり、目的とコストに合ったロボットを選定可能になる。
また、ロボット制御のための操作系機能を汎用サーバに実装することで、点在していた操作系専用機器を汎用サーバに集約ができる。
さらに、制御機能の汎用アプリが活用可能になり、動作機構構築のための開発コストの低減が見込まれる。
加えて、これらのソフト化機構を、IOWNサービスで提供されるような光ネットワーク「IOWN APN」を活用することで、ネットワーク越しのエッジ拠点のサーバに実装できるようになる。
また、今回技術確立したロボット操作に必要な操作系機能のソフト化に関し、その有効性を確認するために、ロボットを光回線で接続した汎用サーバで制御し、自動で動作制御させた。
具体的には、工場内で動作することを想定したロボット付近に、カメラとトランプを配置し、エッジ拠点を想定した光回線越しのサーバには、画像解析・動作制御・プロトコルドライバを実装した。
カメラで認識したトランプをサーバで処理して、色に応じて自動振り分けをする実験を行い、滞りなく動作できることを確認した。
さらに、操作系機能の一つであるプロトコルドライバをNTTがソフト実装した産業用イーサネットプロトコル「PROFINET」ドライバから、千歳科学技術大学がソフト実装した産業用イーサネットプロトコル「EtherCAT」ドライバに入れ替えて、異なるドライバでも動作可能であることも確認した。
これにより、工場内に専用機器を設置する必要がなく、クラウド上のサーバリソースを活用することが可能になる。
今回の実証実験で得られた成果から両者は、工場内に専用機器を設置する必要がなく、クラウド上のサーバリソースを活用することができ、また、ロボットの機器選定の自由度が高まり、初期投資を抑えて工場を立ち上げられることが期待されるとしている。
今後は、実際の中小企業の工場システムに導入できるよう、複数台のロボットの同時制御や、実工場でのフィールドトライアルを通じた実用化に向けた機能拡充を図っていく計画だ。
なお、この技術は、2024年5月16日、17日に開催予定の「つくばフォーラム2024」にて展示されるとのことだ。
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