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ダッソー、街のデジタルツインで、未来の都市づくり ー住宅・ビル・施設Week IoTNEWSセミナーレポート1

先日行われた、住宅・ビル・施設Weekにおける、IoTNEWSセミナーで、ダッソー・システムズ株式会社のジャパンマーケティング シニア・ディレクター 伊藤 宏隆 氏による公演が行われた。

ダッソーといえば、もともと飛行機を設計する企業で、3Dのソフトを作っていたがそれを外販する企業だった。現在も、飛行機、自動車、大型機械などはダッソーのソフトで設計、シミュレーションをした上で製造をしている。

現在、3D-CADでのモデリング技術を活用して、街のデジタルツインを作り出し、様々な環境変数を投入することで、街をシミュレーションするという取り組みを進めているという。

今回のセミナーでは、バーチャル・シンガポール・プロジェクトと呼ばれる、シンガポールにおける、街のデジタルツインでの取り組みが紹介された。

バーチャル・シンガポール・プロジェクト

ダッソー、街のデジタルツインで、未来の都市づくり ー住宅・ビル・施設Week IoTNEWSセミナーレポート1

シンガポールにおける、バーチャル・シンガポールプロジェクトは、デジタルツインを都市のレベルで実現するものだ。2014年から始まっていて、2018年度いっぱいで完成、サービス提供開始するのだという。

実際に、様々なIoTデータを取りこんでいて、都市レベルのデジタルツインを構成し、実際の環境で何が起こっているかをバーチャル上でわかるようにしているということだ。

デジタル空間の中で、災害やエネルギー、交通などの問題をシミュレーションすることで都市の魅力を高めるための基盤として利用されている。

現在では、様々なものの設計データはコンピュータの中にあるといえる。つまり、街の要素もすべてコンピュータのデータとして格納されているといっても過言ではないのだ。

例えば、道路の路面が濡れていたら、上を走るクルマはどういう挙動をするか、といったこともシミュレーション可能なのだ。

そして、シミュレーションの結果を製品に落とし込んで開発することで、これは製品の魅力を高めることが実現可能となる。

例えば、今や、都市はさまざまなシステムの集合体となっている一方で、人口の都市への集中により、都市は問題の宝庫となってきているのだという。

それに対してどう取り組んでいけばよいか、どうすれば魅力的な街になるか、そういった取り組みが必要となってきているのだと伊藤氏は言う。

こういった、様々な街を取り巻く要素をデジタル上にマッピングしていくことのできるプラットフォームが、「3DEXPERIENCity®」なのだ。

このプラットフォームに諸データを投入すれば、どの時間帯に、どこのビルが混んでいて、どこのビルが空いているか、といったこともわかるだろう。

街を管理する政府は、たいていの場合縦割りの組織だが、その様々な部署が持っているデータをこのプラとフォームに投入することで、横串にみることができることもメリットなのだという。

そして、仮想空間上のバーチャルな都市を構成することができるので、何度でも条件を変えたシミュレーションを行うことができるのだ。

さらに、ビジュアライズも行うことで、物の流れなどを可視化したりすることで、単なる公共政策をやるだけでなく、新しいビジネスが生まれ、さらに魅力的になるということまでがスコープとなっているのだという。

つまり、市民に対してサービスを提供するだけでなく、政策決定のための利用(大気汚染、災害対策、感染症の拡大、ヒートアイランド対策、交通渋滞などのシミュレーションが行われている)も行われているので、企業にとってみれば、ビジネスにおけるビルの立地計画や資源管理・運用、ビジネス分析として利用することができるのだ。

3DEXPERIENCity®は、都市の情報を詳細に登録・シミュレーションができる

実際にはどういうことができるのだろう。この3DEXPERIENCity®は、3次元モデリングができ、かつオブジェクト指向なので、「フロア」や「部屋」といったオブジェクトに情報を持たせることができる。

また、フィールドの情報とも連携できるので、外部の「地図データ」や「建築データ」「気象」「人口」「産業」「交通」「環境」といったデータとも掛け合わせて、シミューレションすることもできるのだ。

詳細度レベルは、5段階となっていて、必要に応じてデータを使い分けることができるのだという。

シンガポールでは以前からBIM(ビル情報管理システム)のデータ公開が義務付けられているため、そのデータやGIS, 3Dデータなどをインプットとし、さらに、統計データや社会インフラシステム、IoTで取得するデータを掛け合わせることで、今まで見えなかった事実を見つけることができるというのだ。

バーチャルシンガポールの活用例

バーチャルシンガポールは、3次元モデルをつかって、ソーラーパネルをどこに、どう設置するかという検討に利用しているのだという。

建物の状態、どういう人が住んでいるか、何人住んでいるか、などのデータがマッピングされている。その結果、その中で、電力利用のシミューレションをかけることができるのだ。

ほかにも、歩道橋と公園のリノベーションの事例が紹介された。

車椅子で建物から、公園にいくための経路を検討したものなのだが、現在の歩道橋がバリアフリーではないので、車椅子対応した歩道橋をかけてみると、道はどうなるかがシミュレーションできるのだ。

バーチャル空間上で、工事をすると、公園の出口をふさいでしまうことがシミュレーション上わかるのだが、これまでは、実際に現場にいってみてはじめてそれが発覚する場合が多かった。

しかし、シミューレションを都市管理の管轄部門横断的にやることで、歩道橋からすぐに公園に入る設計を行うことができるのだ。

こういった、利用シーンは様々な分野で実現されている。

交通

有機的に交通を連携することで、信号の制御や、自動運転のシミュレーションなどでも活用することができる。

実際に自動運転の会社(AKKA Technology)などと提携した取り組みでは、どこから配車されて、使われていないときはどこに駐車するなど、他の交通網との連携も視野に入っているのだという。

フランス、レンヌ市の都市計画でも、自動運転車両が導入された時のシミュレーションが行われており、仮想空間内でサービスを提供した際に、どういったときに不便を感じるかなども、事前にシミュレーションすることができているということだ。

防災

今年は日本でも様々な防災に関する課題が顕在化したが、雨量や水位、振動などのデータと、地形データに基づいて、防災のハザードマップを3Dでシミュレーションすることで、住みやすい安全な街が実現できるという。

都市のデジタルツインができていれば、ガス漏れがおきたときに、ガスがどのように広がるのかというシミュレーションを見て、対策を立てることができる。これは、実際のガス爆発が起きた際、実際の街に住んでいる人の人数などから、どういった対応が必要かについても検討が可能となる。

また、事故が起きたときに、人が慌てて移動することになるが、その場合、どこの道がボトルネックになるか、という対策の検討も可能になる。

人に優しい街の実現

IoTを使って、バリアフリー化、最適化、する動きがある。街の構造や道路事情がシミュレーションできる前提で、子供にセンサを持たせて、子供達の動きを取得する。そうすると、その結果から、スクールバスの路線図を作ったり、データからマッピング、シミュレーションをするといったアイデアも浮かぶというのだ。

持続可能な社会の現実

大気汚染や騒音、水質などのセンサーデータを集約、どこにビル風がふくか、日照状態がどうなるか、といったシミュレーションを実現することができる。

実際、ビルを一つ立てるだけで、風の影響が変わってくるものだが、専門家しかイメージができなかったことを、簡単にイメージすることができるようになる。

バーチャルコンストラクション

ビルレベルでも、3Dモデルと実際の建物のデジタルツインによって、ビルの建設状態や、工程の管理なども細かく実現することができる。

バーチャルジャパン構想実現に向けて

バーチャル・シティが構成できれば、街の管轄部門にかかわらず、横ぐしで街の管理を行ったり、対応をとったりすることができるのは前述したとおりだ。

この技術に、VRなどを組み合わせると、バーチャル市長室ができ、実際に街に入り込んでみてどういう動きになるかということを体感することも可能になる。

実際、ダッソーは、京都府と協定を結び、観光客が溢れている京都で、街をどうするかについて考えているのだという。

街が工業化によって大きく発展し、複雑になってきた今だからこそ、バーチャル空間上のデジタルツインを活用して、様々な要素を考慮しつつ、街の動きをシミュレーションする。

こういった取り組みが今後のスマートシティの分野ではなくてはならないものとなりそうだ。

関連リンク:
ダッソー・システムズ株式会社

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