シンガポールに拠点を置き、アメリカ、イギリス、ロシアなど世界各国に小売業向けのコンピュータービジョンソリューションを展開するTraxが、「Trax Innovation Day World 2019」を都内にて開催した。
今回はその中で開催された「店内のデジタル化とCPGの反応」と題したパネルディスカッションの内容を紹介したい。
中央大学ビジネススクールマーケティング学部長 中村博教授をモデレーターに、Trax マーケット・ストラテジー Shavit Clein氏、コカ・コーラ ジャパンMingkwan Klongnawee氏、コカ・コーラ ヘレニック Aleksandr Makarov氏、P&G IT部門 西村光平氏、ライオン 廣瀬慎仁氏、キリンホールディングス 成瀬一義氏の7名によりディスカッションが行われた。
初めに中村教授より、現在の日本のトレンドについての話があった。
「日本は昔から、世界的に見ても生産性が低いと言われてきているが、1つの要因がIT化の遅れだ。人口減少、生産年齢人口の減少が避けられない中、小売業はますます生産性を上げなくてはならない」と語った。
そうした中ネットの売り上げが増えてきているが、ネット通販の半数は赤字であると、ネット通販の成長率と課題に触れ、既存の小売業態にも影響を与えてきているとし、ネットと実店舗、どちらを重視しているかについて聞いていった。
実店舗とネットの融合
キリンホールディングス成瀬氏は、「実店舗、ネットどちらも重視しているが、ネットが伸びていくのは間違いないので対応していかなければならない。」としたうえで、
「顧客が最終的に購買するのは実店舗が圧倒的に多い。そういった中で、店舗に来てもらうために、または店舗に来てから体感してもらうという部分に、どのようにデジタルを導入していくのか考えなければならない。」と語った。
次にライオン廣瀬氏は、「大量宣伝し、大量に積んで売れる時代は終わった。」とし、「店外からの体験を通じて店内での購買にどうつなげていくか考えなければならない」と話す。
例えばライオンでは、NONIO(ノニオ)という口臭ケアブランドを発売しており、NONIOの購買につなげるため、口臭リスクのチェックとサポートができるWEBコンテンツNONIO MIRRORのサービスを打ち出している。
これはAIを活用し、舌の写真から口臭ケアリスクをチェックするというものだ。口臭チェックをし、購買につなげるという取り組みを小売業とともに行なっているという。
また、今後の展望としては、店頭での「思い出し買い」や「ついで買い」といった一見予測不能な行動もとらえて分析し、店頭にフィードバックしていきたいと語った。
続いてP&G西村氏は、「消費者を中心に考えて戦略を立てている。」と話し、
「消費者がネットを使うときの気持ちと店頭に行くときの気持ちがどのような感情なのか分析し、品揃えやプロモーションに反映させていく」と語った。
そしてコカ・コーラMakarov氏は、ロシアのネット状況について、「eコマースの発展は日本同様中国ほど発展していないが、新たなチャンスはあると思う」と話す。
ロシアでは目で見て確認してから購入したいという購買行動があるが、eコマースの簡便さから、首都であるモスクワを中心にオンライン発注が人気だという。
また、物理的な店舗があり、eコマースのサイトも持っている、という形態も発展してきていると語った。
TraxのClein氏は、シンガポールの情勢について、「ここ数年でネット販売が発達してきている。」と話す。
シンガポールは小国であるため物流の問題が少ないという。そのためアマゾンも参入してきているが、ローカルなRedmartなども全国的に使われていると語った。
次ページは、「複雑化する購買理由データを読み解いていく」
複雑化する購買理由データを読み解いていく
続いて中村教授は、「メーカーの立場でどんなデータを収集していこうと考えているのか。」といったテーマについて聞いていった。
まずキリンホールディングス成瀬氏は、「以前はカテゴリー別で見ていたが、今後は全てのカテゴリーで見ることができ、分析もできるようになってくる」と話す。
「お酒」というカテゴリーで分析するのではなく、顧客の生活様式やライスタイルから分析をし、提案をしていくという。
「現在キリンではクラフトビールを販売しているが、なぜかクラフトビールと一緒にキャンプ用品を買っていたり、新生活用品を買っているというデータが取れ、そこから、クラフトビールはキャンプで飲まれているのではないか、新生活時に飲まれているのではないかという分析ができる」と語った。
コカ・コーラジャパンKlongnawee氏は、「消費者がどういった機会において商品を購入しているのか、インサイトを得ることによってオケージョンに対して適切なコミニュケーションを提供したい。」と話す。
Klongnawee氏はタイに赴任している際、セブンイレブンとビジネスプランを構築したという。
セブンイレブンは消費者がどういったときにどのような意思決定をしているのか、その消費者の年齢といったデータを持っており、それに沿ったプロモーション方法を考えていったのだという。
「取引ということだけでなく、どういったものを飲んでいて、誰と、どのような機会で飲んでいるのかというデータが重要だ。」と語った。
ライオン廣瀬氏は、「通過、立ち止まり、接触ちった顧客自体の購買行動をデータとして捉える。」と話す。
オーラルケアの分野で調査していると、15秒ほど立ち止まっても商品を触らない顧客が多いという。つまり接触を促すことで購買につながるのではないかと考え、そのための売り場づくりやデジタルのアプローチがあるのだという。
今後の展望として、「顧客の感情分析も重要だと考えており、脳波や脳血流のデータから、脳がどういった状態で売り場を意識し購買するのか、といったところまで解き明かしていきたい。」と語った。
TraxのClein氏は、「今後は様々なデータソースを掛け合わせて分析していく。」と話す。
現在Traxの技術を提供しているアメリカとヨーロッパのパートナーのセールスデータやPOSデータ、棚データを組み合わせてケイパビリティをさらに拡大させていきたいという。
そしてそのデータをもとに様々な国で展開していき、店舗で何が起こっているのか完璧に理解していきたいのだという。
POSデータでは何が売れて何が売れなかったのかという事実はわかっても「なぜ」の部分はわからない。
その部分にフォーカスを当てる棚データが有効だと考えているという。
そしてそこにコンシューマーデータを組み合わせ、さらに何が店舗で行われているのか、製品とコンシューマーの間で何が起こっているのか、リアルな領域でもeコマースで起こっているようなことが実現できるのではないかと考えていると語った。

