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テクノロジーで実現する外食産業の新たな価値創造 ーFOODIT TOKYO 2019レポート

2019年9月25日都内にてFOODIT TOKYO 2019が開催された。このFOODIT TOKYOでは、飲食店におけるテクノロジーの最新動向をシェアし、未来へ向けて議論を行う場として2014年より行われているカンファレンスだ。

今回はFOODIT TOKYO実行委員長 トレタ 代表取締役 中村仁氏による「外食逆襲論 〜トレタの取り組みと飲食店の未来」と題した講演について紹介したい。

歴史から見えてくる新たな外食産業の在り方

まず中村氏は外食産業の歴史について語った。

テクノロジーで実現する外食産業の新たな価値創造 ーFOODIT TOKYO 2019レポート

1970年はPOSが生まれ、外食産業元年と呼ばれた年だ。その後高度経済成長と共に外食産業も急成長し、90年代に成熟する。そこからは下り坂で、バブルの崩壊と共に下がっていく。

初めて右肩上がりではない産業になり、業界のあり方の転換期が2000年に起きる。そして2010年頃から多様化していく。

1970年から現在に至るまでの50年は、外食という商品であり、業態の時代であったという。POSが生まれてデータ化することにより、外食産業が産業化した。商品の売れ行きをデータ化することにより商品をブラッシュアップするということがこの50年で進んだ。

商品で勝負するということは差別化をしていくということであり、差別化が進めば進むほど結果的に多様化していく。ニッチ化していくということがこの50年で起きてきたことだと語る。

問題は1980年代半ばから30年間、POSがもたらした革命に匹敵するITによる革命が全くないことだという。

ここ30年で競争し、多様化することで外食産業は磨かれてきたが、経営の観点から見ると80年代半ばとあまり変わらないことが今も行われている。

業態を売っていくとなると「目新しさ」が価値であり、店舗の賞味期限も短い。消費していくという産業のあり方に危機感を感じている経営者も少なくないという。

そうした状況から2020年には「再構築」が始まると中村氏は語る。

従来までの「商品の時代」から「顧客の時代」へと移行していく。つまり今までは商品が主役だったものが、顧客が中心の時代になっていくのだという。その際「解体」「再構築」を行う必要があり、ここで大きな役割を果たすのがテクノロジーだ。

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業態の開発から顧客体験の開発へ

商品の時代では、業態を開発するということをずっとやってきていた。メニュー、空間、接客などがパッケージになったものが業態である。

ここで顧客を集客しようとすると、常に新しい何かを提案し続けなければならなかった。新しいものを「食べてみたい」「体験してみたい」という顧客が訪れ、消費していく。

店舗と顧客との関係性も同様に消費され、次につながってはいかない。このような新規集客が中心のマーケティングにはグルメサイトとの相性が非常に良かった。

グルメサイトで顧客の知らなかった店舗を知ってもらい、来店してもらうというマーケティングが普及してきた。

それが顧客の時代にはそもそも開発するものは業態ではなくなるという。顧客体験を開発するという考え方で、主役は店舗から顧客へと移る。

メニュー、空間、接客をどうするかという議論はあくまでもお店が主語である。これからは顧客がどういった体験をするのか、店舗は顧客とどのように共感するのかといった目線が必要になってくるのだという。

さらに目の前の顧客や取引のある仕入先との関係性だけを考えるのではなく、社会やコミュニティーに対してどのような貢献をするのかといった、消費する関係性から、永続的な関係性の構築を考えていくことが非常に重要であるとした。

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顧客体験、データ、システムをひとつなぎにしていく

上の図は従来の飲食店での業務オペレーションだ。集客、予約、来店、メニュー出し、注文、食事の提供、会計、集客の分析という流れだ。

これは50年間ほとんど変わっていないのだが、IT化の流れを受け、手作業で行われていた業務それぞれがIT化されるようになった。

しかし問題は、それぞれのオペレーションごとにIT化されてしまい、それぞれのシステムがバラバラに情報を持っている状況になっていることだ。

バラバラになっているものを繋ごうとする流れもあるが、どこにどのように情報を集めて、どのように活用するのかを決め、実装していくということが現状では非常に難しい状態だという。

ここにIT化の行き詰まり感を感じているのだと中村氏は語る。

つまり業務というのは個別最適の中でそれぞれ合理化しているが、店舗としての全体を見たときに今の仕組みを前提にしていては全体最適していくのは難しい。

実際に経営者の声で、「システムが増えすぎてどう使ったらいいのかわからない。」「データをためたのはいいが、どのように活かしたらいいかがわからない。」という声を多く聞くという。

そのため解体し、再構築していく必要があるというのだ。

上の図は、トレタが描く新たな外食産業のアーキテクチャだ。まず中心に顧客体験をおく。そして顧客と店舗がどのような接点があるのか、顧客がどういった体験をするのかを円で表している。

この円の中で顧客は店探しから始まり、予約、来店、メニュー検討、注文、食事、支払い、評価、シェアと、ひとつなぎの体験をしていく。

それが単に右から左に流れて終わりなのではなく、最初に戻るという仕組みづくりが必要なのだという。

もうひとつ重要な視点は、この円を上と下で分け、上がオンラインで下がリアルという分け方で見てみるという点だ。上がインターネットで行われることで、下が実際の店舗で行われることだ。

従来の店舗では、オンラインで行なっていることと、実際の店舗で行なっていることがつながらず、全くの別物になっていた。顧客体験という意味ではちぐはぐなものになっている。

オンラインとオフラインをつなぎながら1つの体験として仕上げていくことが必要であり、ここで初めて現在使われている様々なITサービスがマッピングされていく。

このような円の中で、それぞれの店舗がどういった顧客体験を提供したいのか、そのためにどういったツールをどのように使うのかといったことを整理していく必要があるという。

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