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雨水などを遠隔監視する下水道管理ソリューション ―下水道展2019横浜レポート

雨水などを遠隔監視する下水道管理ソリューション ―下水道展'19横浜レポート

2019年8月6日~9日、横浜にて「下水道展‘19横浜」が開催され、下水道処理に関する最新技術や機器の展示、講演などが行われた。その中には水位の遠隔監視など、IoTを活用した下水道管理ソリューションも盛んに展示されていた。

クボタのマンホールポンプAIサポートシステム

クボタは2003年に通信端末装置によるマンホールポンプのクラウド監視サービスを開始している。そのクボタが現在提供しているのが、水環境プラント・機器の遠隔監視・診断・制御を行うサービス「KSIS(KUBOTA Smart Infrastructure System)」だ。

これはポンプ、バルブ、脱水機、撹拌機といった水道の維持管理に必要な機器の状態をセンシングし、通信端末装置「MU-1000」などを通してクラウドに上げられたデータをパソコンやスマートフォン、タブレット端末で確認できるというものだ。

電流、振動などを検知してグラフデータとして蓄積、予知保全に利用する

水質・電流・振動などのデータは単に計測値を取得するだけではなく、トレンドグラフ化されて蓄積されるため、長いスパンでの予知保全にも利用できる。

ブースではマンホールポンプのクラウド監視サービスに追加された、AIによる異常検知機能のデモンストレーションも展示されていた。

運転電流を測定し、AIが解析したマンホールポンプの異常をモニターでチェック

これはポンプの運転電流や水位をAIに学習させ、異状運転が生じた場合の電量を検知するとメールが配信されるというしくみ。人が1か所ずつ入念に確認しなければ気づかないような運転変化も自動検知できるようになるという。

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日之出水道機器のマンホールアンテナ

下水道展ではマンホールによるセンシングの展示も多く見かけた。トップ画像は日之出水道機器のマンホールアンテナだ。

これは実際、横浜駅周辺のマンホール4か所に設置されているもので、リアルタイムな水位データを確認し、管路内の推移情報を把握しつつ、蓄積したデータは雨水の挙動解析に利用されているそうだ。

横浜市がこのマンホールアンテナを導入した背景には、2015年の「水位周知下水道」制度の創設があるという。この制度は内水による相当な損害が生ずる恐れがある下水道について、特に災害の発生を警戒すべき「内水氾濫危険水位」を定め、その水位に達した場合に地方自治体は危険情報を周知させる必要がある、というものだ。

横浜市は「浸水被害対策区域」に指定されており、危険水位を把握する取り組みとしてマンホールアンテナを利用しているという。

東芝インフラシステムズの上下水道統合プラットフォーム「TOSWACS」

東芝インフラシステムズのブースでは上下水道統合プラットフォーム「TOSWACS」についての説明があった。これは水道プラントの運用コストを抑制し、少人数での維持管理、自動化を目的として同社が取り組んでいるものだ。

雨水処理を例にしたプラットフォーム「TOSWACS」の構図

仕組みとしては気象レーダー、地上雨量計、管渠(水路)内計などのデータをクラウドソリューションである「TOSWACS-Cloud」に取り込み、水位、流入量、浸水エリアなどをAI解析などによって予測し、監視制御システムである「TOSWACS-V」によってクラウドでの予測をもとに施設内ポンプの起動・停止水位を自動的に制御する、という流れになっている。

特徴は異常監視の段階で、例えば風量と弁開度といった、2つの異なる統計データの相関から監視を行い、異状判定を行っていることだという。これによって管理限界内にある軽微な段階でも異常兆候を検知することができるとのこと。

2つのデータの相関を使った異常検知の例

「TOSWACS」について、今後はさらなる広域化を見据えて複数のプラントを連携させた自動化も検討していくという。

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