前回、「スマートシティ(Smart City) とは」という概論について書いた。
今回は続きの第2弾となり、スマートシティの海外事例を見ていく。
スマートアメリカ
“Whitehousetour cropped“. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons.
アメリカではホワイトハウス直下で、スマートアメリカ チャレンジ(SmartAmerica Challenge)というIoT政策に取り組み、主に、スマートホーム、環境、輸送、緊急サービス、ヘルスケア、セキュリティ、省エネ、製造業を対象領域としている。
そのパイロットプロジェクトとして、カルフォルニア州サンノゼとintelが共同で、センサーを活用し水質を始め騒音、大気の品質などを解析する取組みを実施した。
またハワイでは、日本のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が協力し、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入を進めている。さらに、先日Googleがスマートシティへ向け新会社を設立したため、今後さらに米国でのスマートシティへの取り組みが活発化していくだろう。
・SmartAmerica Challenge
・Intel Newsroom
・国立研究開発法人NEDOが展開する世界のスマートシティ
欧州のスマートシティ
“Europe with flags” by Joebloggsy (talk) – Own work (Original text: I created this work entirely by myself.). Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
2009 年の「第三次EU電力自由化指令」で、2020 年までに全需要家の少なくても80%に対してスマートメーターを導入するよう規定されている。
イタリアとスウェーデンではすでにほぼ全戸の導入が完了し、イギリス、スペイン、フランスは今後本格導入が見込まれる。
個別に見ていくとイギリス ロンドンでは、2025年までに90年比でCO2を60%削減するという高い目標を掲げ、風力発電、分散型発電、EV&ヒートポンプ、スマートメーター、ディマンド・サイド・マネージメント(電力供給に合わせて需要を調整すること)の 5 点に焦点を絞って実験を行い、将来のスマートな電力網のため、国家で取り組んでいる。
デンマークでは国を挙げて自転車利用を促進し、首都のコペンハーゲン市は、米国のビジネス誌「Fast Company」による欧州スマートシティランキングにおいて第1位となっている。
スペイン、デンマークでは風力発電が盛んであり、発電量の変化が激しいため、余剰電力の利用や電力システムの負荷を抑えるためにEVを活用する動きが目立つ。
各国でのプロジェクトももちろんだが、EU全体で取り組んでいるところが注目だ。
・経済産業省 スマートメーター制度検討会(PDF)
・Fast Company The 10 Smartest Cities In Europe
・JETRO
Smart Nation シンガポール
“Merlion statue, Merlion Park, Singapore – 20110723” by ペウゲオト. – Own work.. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
東京23区とほぼ同じ面積で、世界で三番目に人口密度の高いシンガポールは、SmartNation(スマート国家) Singaporeという取り組みをはじめている。
シンガポールは今後も人口は増えると予想され、さらに2030年には65歳以上の高齢者の数が今より3倍になるという高齢化社会の課題に直面している。さらに消費電力は2050年までに30%増加する見込みだ。
情報通信開発庁(IDA)は2014年に、世界初の「スマート国家」の実現に向け、各種センサーを全土に据え付け、得た情報を各省庁が共有し、速やかに国民のニーズに対応する体制を整える、と発表した。計画名はスマート・ネーション・プラットフォーム(SNP)で、センサー1,000個(監視カメラを含む)を人の往来の多い場所に設置し、街灯、人通り、交通監視カメラ、気象・環境といったデータを集約し、それに基づいてより便利で安全な公共サービス実現を目指すプロジェクトである。
さらに、患者にセンサを取り付けインターネットを通じて行う遠隔医療(スマートヘルス)の試験を開始している。高齢化はシンガポールに限定された問題ではなく、WHOによると2025年までに地球上で8億人が65歳になると予想されている。
・SmartNation Singapore
・IDA Smart Nation Vision
IT先進国 エストニア
“Tln1” by khora – Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
フィンランドの下、ロシアの最西端部に位置するエストニアは九州ほどの面積しかなく、人口は沖縄県とほぼ同じ130万人という小国だ。
あまり日本人には馴染みのないエストニアという国は、スカイプ発祥の地であり、IT先進国として知られる。ここではすでに電子投票が実現されており、ICチップ搭載のIDカードが15以上の国民全員へ配布され、小学生の時からプログラミングを習うことができる。さらに世界ではじめて、国内に住まなくても全ての電子サービスにアクセスできるようになる「イー・レジデンシー(電子居住)」ができるということでも話題になった。
さらに、エストニアのスマートシティの実現に向け、三菱商事が電気自動車導入や充電器の設置をサポートした。
すでに様々なモノがインターネットで管理されているエストニアは、スマートシティならぬ「スマートカントリー」への実現が一番早いのではないだろうか。
今回アメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、エストニアの事例を紹介したが、もちろんこれ以外にも多くの国が、国を挙げてスマートシティ、スマートカントリーへの取り組みをはじめている。
その取り組みは、実証段階のものが多いが、成功すればパッケージ化してさらに広げていくという官民の協力体制で進められている事業も多く、各国各社がしのぎを削っている。
次回は国内事例を取り上げる。
【関連リンク】
・スマートシティ(Smart City) とは
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